道標

by 廖化




「行くぞ!」
 科学忍者隊は地上での全ての未練を振り切って、ギャラクター本部に突入した。が、一直線に地下の本部内への階段を走り降りて行く彼らの足を 激しい揺れが止めた。突き上げるような、壁に手をつかないと立っていられないほどの衝撃だった。
「今までになく大きいよ。」
「健、急がんと。」
 現在、地球上では各地で大地震や火山の噴火が発生し、多大な被害が出ていた。これらは地球内部のマントルの動きが人為的に速められた結果である、と南部は推察した。更にこの現象が進行すれば、地球はブラックホール化し消滅への道をたどるだろう、そしてそこに至るまでの時間は決して長くない、と。 おそらくギャラクターが、自らの存在も賭けるほどの覚悟を持っての作戦を仕掛けてきているのだ。早急に彼らの作戦基地を特定し、作戦を阻止しなければならない。しかし基地地点の割り出しが出来ないまま、時間だけが確実に過ぎて行く。無力感と絶望感が忍者隊と南部に重くのしかかる。この閉塞的な状況を破ったのは、健のブレスレットに飛び込んできた短いモールス信号だった。
『ワレ ギャラクターホンブ ハッケン ス』
 この情報を 出奔し行方不明になっている仲間からと信じた忍者隊は(後に他の特殊情報部員からであった、と知るのだが)、電波の発信地点であるクロスカラコルムに飛んだ。
(今、ISOにギャラクターからの最後通告が届いた。ギャラクターへの降伏がBH作戦停止の条件だ、と。期限はアメリス時間の明日の正午、あと一日もない。)
 ゴッドフェニックス内スクリーン上の南部の乱れた前髪が、ここ何日かの彼の疲労と心痛を物語っていた。
(一刻も早くBH作戦を止め、地球を、人類を救って欲しい。頼むぞ、科学忍者隊の諸君。)
 クロスカラコルムに到着してからも本部の入り口を見つけるまでにかなりの時間を消費していた。 間に合うのか? いや、間に合わせなくてはならない。忍者隊の足が速まる。しかし、階段を降りきった彼らの前に四方へと伸びる通路が立ちはだかった。
「一体、どっちへ行けばいいんだよぉ。」
 甚平が左右を見ながら心細げにつぶやいた。
 時間が差し迫っている今、回り道をしている余裕はない。どのルートが目的地、作戦が行われている場所への最短距離なのかを、瞬時に判断しなくてはならない。 と、足元に目を落としていた健が厳しかった口元を更に引き結び、翼を翻すと右側の通路へと走り出した。すぐにその後ろを竜、ジュン、甚平が続く。今は健の選択を信じ、硬い背中を追うしかない。本部に配置されていた隊員達もほとんどが地上に出たのだろう、施設内に人気はない。時折、物陰から銃を向ける隊員もいたが、健が走りながら無言でブーメランを投げ、倒していった。忍者隊の足音だけが基地内に響く。本部内の構造は複雑で何度も分岐点に行き当たったが、先頭を走る健は戸惑うことなくルートを選び奥へと進んでいった。やがて、健の後ろを走る三人にも道が見えてきた。廊下にこすり付けたような赤黒い染みが残っている。これは地上に残してきた彼らの仲間が弱りきった体を奮い立たせ、本部への入り口を知らせるべく地上へ這い出してきた跡だ。進入を果たした時点で痕跡を認めた健は、この跡を目印に仲間が捕らえられていた場所、すなわち敵の心臓部へと切り込んできたのだ。
 果たして血痕がはっきりと見て取れるようになった頃、耳慣れた声が聞こえてきた。奴のいる場所こそが、作戦の中枢部だ。

 走り込んだのは広い空間だった。その中央に紫をまとった相手はいた。

 「ガッチャマン、とうとうここまで来たか!」

 そう、やってきた。任務途中で斃れた漢(おとこ)達に導かれて。

 科学忍者隊は地球消滅の危機を回避し、ギャラクターとの戦いに終止符を打つべく、敵の首領と対峙した。


   終



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