ANOTHER STORY OF THE GATCHAMAN バナー

IN PLEASURE

by 鷲尾さゆり

IN PLEASURE


      I'm a wizard , I can do anything

<1>
 その若い男がブラックリストの最初のページに、モンタージュ 付きで曝け出されていたのを、俺ははっきりと記憶していた  と、言ってもその写真では猛禽類の嘴を模したスモークブルー のバイザーの付いた白いヘルメットを被っていたから、こうして 素顔を見たのは、そして素顔を見てなお生存しているのは、もし かしたら自分が最初なのかも知れない。これはまたとないチャン スであり、そして同時に最大の危機である。首尾良く彼を騙し通 し、命を取るか、若しくはその予想外に若く、幼ささえ残す素顔 を本部にもたらす事が出来れば、間違いなく俺は上層部の一員と なれるだろう。だが、そうでなかった場合には...それは即ち 俺の死を意味する。
 
 「痛むかい?」
 何喰わぬ口調で俺はそいつにそう訊ねた。
 「いや、大した事はないよ。」
 そう言って、ソーダキャンディーのような瞳がすこし笑った。  
 突然に起こった大爆発の中、一般人の身なりのままだった俺を 助けようとして奴はまるで稲妻のように白い翼を閃かせて現れ、 そして俺の生命を救って自ら傷ついた。何がどうなっているのか は分からないが、虹色の光が彼を包むように円く輝き、耳慣れな い高い音が聞こえたと思ったら、俺を爆風から守った白い鳥はひ とりの若い男に変わってしまったのだ。赤いTシャツの水色の袖 口からすんなりと伸びた腕には、一見、腕時計みたいなスティー ルブルーのブレスレットが見える。それが白い影達ー我々を追い 回し、ことごとく作戦の邪魔をする科学忍者隊だーの証しである 事は知らされていたので、それで俺はやはりと再認識したのだ。 飛び起きてどうにかすべきなのか?と、俺は逡巡した。無防備に 転がっている男のチョコレート色の長い髪が微かに揺れている。 今なら簡単にその生命を奪う事ができるだろう。しかし、俺は動 かなかった。 
 「うっ...」
 と、小さく呻いてそいつが起き上がったのを、俺はうっすらと 開けた目蓋の陰から見ていた。ほんの数秒、奴は何が起こったの か理解出来ない様子で俯いていたが、ハッとしたように顔を上げ ると恐ろしい目で俺を睨んだ。そいつの目はまるで晴れた夏の空 のような色で、いまだ周囲を満たしている無彩色の爆発の粉塵の 中にあって、異様な光をたたえ、美しくさえあった。 (殺される。)
 と、俺は瞬時にして奴の力量を悟った。ぎらりと無機的な冷た い光を放ち、それでいていやに熱感を帯びたその瞳は、だが急速 に和んだ。そして奴はどこかを傷めたのか片頬を歪めて立ち上が ると、俺の身体を軽く揺すった。
 「おい、大丈夫か?」
 そうだ、俺はまだ奴らの敵とは認識されてはいないのだった。 このまま騙し通せれば殺される事はないだろう。
 「ああ、ああ、大丈夫だ。一体、何が起こったんだ?」
 と、俺はそこで初めて気がついたふりをして、身体を起こす。 ホッとしたように、空色の大きな目が微笑んだ。改めて見れば、 そいつは意外なほど若く、まだ子供だと言ってもいいような面差 しをしている。円やかな頬と長い睫毛が可愛らしい。
「良かった。怪我はないか?」  「ああ、何でもない。君が助けてくれたのかい?」
 そう訊ねると、奴の表情が硬くなった。
 「俺を見たのか?」
 低く囁くその声にはゾッとした。...やばい!
 「見たって、爆発をかい?ありゃ一体どうしたって言うんだ? だが、誰かが突き飛ばしてくれたお陰で助かった。あれは君 じゃないのか?君が助けてくれたんだろう?」
 大きな瞳が探るようにじっと凝視している。俺は粉塵のせいだ と言わんばかりに目を擦って、誤魔化し続けた。じぃっと俺を見 つめたまま、
 「ああ、そうだよ。あんたの姿が見えたもんで、ね。俺が突き 飛ばしたんだ。だが、あんた、ここで何をしてたんだ?」
 と、まだ幾分低い声が探るように訊ねる。俺はあるテロ・グル ープからこの組織に引き抜かれたのさ。もう一年ほど前に、ね。 だが、そんな事をおまえなんかに喋れるものか...。
 「君こそ、どうしてこんな所にいる?」
 そう切り返すと、根が正直なのか若いからか、奴は瞬くと口籠 った。研ぎ澄まされたナイフのような鋭さは恐らく厳しい訓練で 身に付けたものだろう。だが、こいつの実体はまだガキだ。  「俺はある人からここを紹介されてね。うまい儲け口だって聞 いて、今日来たばかりなんだが...」
 と、咄嗟に思いついて言ったでまかせに引っ掛かって、
 「ああ、そう。俺も、だよ。あんたと同じだ。」
 はにかむようにそう相槌を打ちやがった。嘘の下手なガキめ、 と俺は内心、にやりとした。だが油断は禁物だ。こいつは例える なら専門に訓練されたジャーマン・シェパードだ。どこかの家の 庭で子供らとボールを追って遊ぶなんて普通の犬の幸せは一つも 知らず、下されたコマンド通りにただ敵の喉笛を喰い千切るよう 子犬の時から訓練されてきた生え抜きの軍用犬だ。
 「そうか。それじゃお互いに到着早々、とんでもない目に遭っ ちまったって訳だな。」  「ああ...。」
 そいつは頷いて、それからツッとその端正な顔をしかめた。
 「どうした?...怪我をしてるのか?」
 爆風とそれに飛ばされた瓦礫から俺を守った時には、奴の身体 にはまだ白い大きな翼があったが、壁にいやというほど叩き付け られたはずだ。たぶん、かなりな怪我を負っているだろう... いや、叩き付けられた時には、特徴的なヘルメットもあったか? あれらはプロテクターとして、どれくらいの効果を持つものか?
 「見せてみろよ、君は俺の命の恩人だからな。」
 心配を装って、俺はその肩に手を伸ばした。訓練された軍用シ ェパードは案の定、ついっと身を引いた。しかし、俺はそれには 気づかぬふりをして構わずに更に一歩踏み出すと、気負わずに奴 に触れた。馬鹿な犬は噛みつくだろう。だが、賢い犬は常に相手 の動向を読むものだし、自信があるから無闇に噛んで来たりはし ないものだ。こいつは優秀なシェパードだ。警戒は決して怠らず 、だが唸る事さえしやしない。
 「ああ、ここを打ったのか?どれ、ちょっと見せて...」
 1と言う番号にどんな意味があるのかは知らないが、赤と水色 のそのTシャツを捲り上げて背中を見ると、右半分が縦に長く皮 下出血していた。しかし、思っていたほどの怪我ではない。俺は 内心、舌打ちしながらも、
 「ああ、こりゃひどい、そこの壁に叩き付けられたんだな。」
 と、大袈裟に言い、掌でゆっくりとそこを擦ってやった。Tシ ャツを着ていた時には細っこく見えた奴の身体は、確かに痩せて はいたが弾力に富んだ、それでいて鋼のような筋肉に覆われてい た。それはボクサーや格闘家のようでもあり、体操選手やダンサ ーのようでもある無駄の無い、一種独特の美しい筋肉だった。右 の背筋を撫で下ろすように大きなストロークで、ゆっくりと優し く擦ってやる。掌の温もりと、ゆっくりとした動きに緊張がほぐ れたのだろう。わずかに傾けた肩が溜め息をつくように大きくひ とつ、上下した。
 「痛むかい?」
 何喰わぬ口調で俺はそいつにそう訊ねた。
 「いや、大した事はないよ。」
 そう言って、ソーダキャンディーのような瞳がすこし笑った。
He's on a black list .......... 

<2>

 こいつは危険な、我々のお尋ね者だ。だが、上手くしたら或い は俺の切り札になるかも知れない。最強のカード、無敵のエース 。こいつを手にすれば、紫で着飾った山猫や冷酷な金髪のミスト レスとでも対等になれるかも知れない。野望が頭をもたげるのを 感じて俺は殊更、優しく、慎重になった。  
 「で、坊やはこれからどうする?」  「坊やって呼ぶなよ。おっさんこそどうするんだい?」
 ふん、やはりガキだな、と俺はカチンと来た様子の奴を見なが ら微笑んだ。おっさんの方が賢いって、いや狡いって事を思い知 らせてやるぜ。
 「だってまだ坊やってトシだろうが?幾つになる?」  「トシなんか関係ないだろ?それにおっさんから見れば、誰で も坊やじゃないか。」  「おい、おっさんて呼ぶなよ!まったく近ごろのガキは礼儀っ てものを知らないんだからな。」  「ほら、その台詞がおっさんだって言うんだよ!」
 距離を少しずつ詰めて行く俺の真意には気づかないようで、軽 口を叩きながら人懐っこい笑顔を見せる。形のよい、ふくよかな 口唇をちょっと皮肉な形に引くのは癖なのだろうか?やっぱり君 もアメリスから来たのかい?坊や...え?あ、ああ、ユートラ ンドからだよ。おっさんは?...と、その口唇が少しずつ知り たい事を喋る。さあ、こいつはどうかな?
 「もうやめようぜ!おっさんは気分が悪い。俺はジョージって んだ、ジョージって呼んでくれよ。で、坊やはなんて名だい ?」  「へえ...」
 それも癖なのか、二、三度瞬くと、飴玉みたいな目でじっと人 の目をまっすぐに見つめる。反応したな、と俺は名乗ったそのジ ョージという名前の効果にいささか満足して、促すように奴を見 つめ返した。こいつの名前は誰も知らない。白い影として我々の 前に忽然と現れる時、こいつはまったく違う名前でしか呼ばれな い。なぜなら奴が名乗るのは常に奴自身の名ではないからだ。そ れでも幾つかの予測は立てられていた。別の名を名乗り、白い翼 を持っている時のこいつは殆ど無敵と言っても過言ではなく、紫 の山猫にとって唯一の恐怖の対象らしい。だから躍起になって" 彼 " の本当の名前とか本当の姿とかを追求しようってのは、言 ってみれば逆説的な正攻法だった。" 彼" が皮肉な形ではなく、 自然に微笑んだ風に口唇をちょっと引いて、言った。
 「俺は健って言うんだ。そう呼んでくれよ、ジョージ。」  「ケン、健だな?よし、健、それでこれからどうする?」
 何気なく最前の話題に関心を引き戻す。よし、たぶんこれが奴 の本当の名前だろう。ケニー、ケン、ケネス、ケント...予測 に上がっていた名前とも合致する。生き残りどもの耳ってのは、 案外と役に立つもんだな、と俺はちょっと感心したが、生と死の 狭間で聞いた音はけっこう記憶に残るものなのだろうか?
 「ここは単なる中継基地だろう?本部の奴らは予定通り、俺達 を迎えに来るのかな?」
 そう、その通りだ。間抜けな組織の連絡は筒抜けって訳か?だ が、迎えはもう来たんだよ、健。ちょいと事情があって予定より も早かったんだがね。
 「健、迎えが来たら、やっぱり行くかい?」  「ああ、行くさ。俺、もう元のところには帰れないんだ。」
 そうか!こいつが単身で乗り込んで来たのはそういう事だった のか...。常にチームで行動するという訳ではないらしいが、 あのゴッドフェニックスとか言う重戦闘機がどこかにいるはずだ 。さっきの爆発はあいつがミサイルをブチ込んだんじゃなかった のか?  
 「レーダーに反応っ!・・・うわぁ、ゴッドフェニックスだ! 科学忍者隊だーっ!」
 突然、喚き散らしたレーダー要員の悲鳴に近い声がまだ耳には っきりと残っている。恐らく、補充要員ーつまりこれに俺も奴も なりすましている訳だがーを乗せて来たジェットヘリを追けて来 たか、そのジェットヘリに発信機が付けられていたのか、だ。誰 も彼もが我れ先に逃げようとするなんざ、まったく碌でも無い組 織らしいざまだが、俺もそんな事を批難出来る立場ではない。と にかく逃げなくては、とここまで来て、あの爆発にあったという 訳だ。  
 「ジョージは行かないのか?さっきのでビビっちまった?まあ もうトシだもんな、無理しない方がいいかも知れないぜ。」  「可愛い顔をして口の悪いガキだな、まったく。帰れなくなっ たって、何かとんでもない事でもしでかしたのか?お袋さん を泣かすなんてひでえ奴だな、健。」  「泣いてくれるお袋なんかいないよ。」
 フンッと鼻で笑って言い放ったが、一瞬だけ真顔になった。そ うか、そういう訳か。ISOだか国連だかどこかの軍部だか知ら ないが、酷いことをするもんだ。大方、父親も・・・。
 「そうか、健にはお袋さんがいないのか?で、親父さんは?」  「親父なんざ俺が四つの時に何処かへ行っちまったよ。」
 強がって吐き捨てるように言ったその言葉の裏に、一体何があ ったのだろうか?...可哀想な健!ま、両親が健在ならこんな 年齢のガキに危ない真似をさせるって法は無いからな。これもお まえの運命と思って諦めてるのか?それとも叩き込まれた幾つか の二文字がおまえを支配してるのか?世界の正義と平和、それか ら犠牲・・・これは専らおまえの、だが。
 「なあ、ジョージ、あんたはその年齢でぺいぺいのプライベー トって訳じゃないんだろ?何かのスペシャリストなのかい?」
 しかし、そんな事には関心が無いのか、敢えて無視したのか、 健は話題を転じると、また何かを読み取ろうとするような目でじ っと俺を見つめた。ウィークポイントもあるが、やっぱりこいつ は優秀なシェパードだ。そして本当に訓練され続けたシェパード は、リーシュを握る者が下したコマンド通りに何の疑問も抱かず に相手の喉笛を食い千切る。例えそのボディがついさっきまで自 分のリーシュを握っていたハンドラ−だとしても。昨日まで寝食 を共にしたバディだとしても、だ。むろん、噛みつかれるのは怖 い。それに何と言っても、こいつは危険な我々のお尋ね者だ。だ が、上手くしたら或いは俺の切り札になるかも知れない。最強の カード、無敵のエース。こいつを手にする事が出来れば、紫で着 飾った山猫や、冷酷な金髪のミストレスとでも対等になれるかも 知れない。野望が頭をもたげるのを感じて俺は殊更、優しく慎重 になった。なにしろこいつは・・・。
In Pleasure ...........
<3>

 一度知ったら、忘れられないこいつのミステリー。焦りやヒス テリーは禁物だ。俺はゆっくりと笑った。
 「ああ、俺はこう見えても誘拐のプロだぜ。」  「誘拐って?」
 世間ってものを知らないのか、健は訝し気に訊ね返した。
 「子供をさらって、身代金を要求すんのかい?人の善さそうな 顔をして、ひでえ奴だな、あんた。」  「いや、俺の場合、ガキは対象外だな。一番、多いのは大企業 とか組織とか、政府の重要人物、またはその家族がターゲット だが、ガキはさらわない主義だ。割に合わんからな。」  「親は子供の為になら一番、身代金を出しそうなもんだけど、 どうして割に合わないんだ?」
 「金にはなるが、ガキは可愛いからな。心が痛くなる。」
 くすん、と鼻を鳴らして健はそっぽを向いた。痛いのはおまえ の心だろう?と、俺は内心ほくそ笑んで更に追い打ちをかける。
 「親ってのは子供の為になら命だって投げ出すもんだぜ。俺に もガキが居るからな、親の気持ちってのはよく分かるんだ。」  「あんたにも子供が居るのか?ならば帰れよ!親父がこんな組   織に入って、子供が喜ぶとでも思ってるのか?」
ムキになりやがったな...いいぞ。
 「いや、もう居ない。だから、いいんだよ。」  「・・・居ないって?」
真ん丸なソーダキャンディーが可愛いぜ、健。
 「死んじまったんだよ。科学忍者隊を誘き寄せる為に特殊ナパ   ーム弾で焼き払われた地下都市があったろう?たまたまあそ   こに行ってたのさ、ワイフの従兄弟がいたんでね。」  「何だって?!」
 おいおい、そんなに驚いたら自分は科学忍者隊です、って言っ てるようなもんだぜ。ま、まだまだ純真なガキなんだから無理も ないか?坊や、正義の、平和のと言ったってその陰には常に関係 のない死が、幾多の涙があるんだぜ。
 「おい、健がショックを受ける事はないだろう?顔が真っ青だ。      どうした?やっぱり背中の傷が痛むのか?」
 いや、と俯いて頭を振ると、チョコレート色の長い髪がサラサ ラと音を立てて揺れた。
 「ちょっと、健・・・傷を見せてごらん。」
 肘を掴んで強引に振り返らせると、それでも健はキッと眉を上 げて俺を睨んだ。口唇を噛んで必死に堪えているのだろうが、涙 に濡れた大きな瞳は動揺する心を隠せはしない。どうしたんだ? と囁くように優しく言いながら、俺は反対の手を伸ばしてそっと 乱れた髪を撫でた。そして、言う。もっと追い詰める為に。
 「柔らかいな、健の髪は。まるで死んじまったボーイの頭を撫   でてるみたいだ。」
健の身体がぴくりと硬くなるのが分かった。
 「ボーイは良い子だったんだ。賢くて、素直で、病気ひとつし   ない元気な子だったんだけど・・・死んじまった。熱かった   かなぁ?なあ、健、ボーイはきっと苦しんだよな?」
 ソーダキャンディーを今度はこっちがじぃっと覗き込むように して、俺は呪文を唱え続ける。負けるもんか、とばかりに睨み返 していた視線を耐え切れずに逸らした瞬間、俺は掴んだ健の肘を 引き、思わず姿勢を崩した右の背中に思い切り膝蹴りを食らわし た。ぐっと言う苦しそうな呻き声を上げ、それでも奴は倒れる事 もなく、肘が捻れるのも構わず俺に向き直った。さすがにタフな 奴だ、と驚いたがもう後には引けない。俺が素早く鳩尾に拳を叩 き込むと、それでようやく健はがくりと膝をついた。  
 「俺はこう見えても誘拐のプロだって言ったろう?」
 言いながら、もう動けまいと踞った健の赤いTシャツに手を掛 けると、信じられない事に腕を伸ばして俺の足を払おうとしやが った。辛うじてそれを交わすと同時に、皮下出血している辺りを また蹴りつけると、健の口元が苦しそうに歪み、さすがに息が詰 まったのか声も出せない様子だった。
 「おとなしくしろ、さもないと肋を蹴り折るぞっ!」
 そう脅しつけたからか、かなりのダメージだったのか、今度は 動かなかった。くったりとした両腕を引無理矢理背中に回すと、 傷が痛んだのか、うわ、と小さな悲鳴を上げた。額に垂れたチョ コレート色の長い髪の間からぼんやりとした空色の瞳が、いつも ポケットに入れているブービートラップ用のピアノ線を持つ俺の 指を見ている。
 「引っ張れば、首のループがそれだけ絞まっちゃうから気をつ   けてくれよ。牛でも逃げられないんでカウ・ヒッチって言う   んだから、無駄な抵抗は止した方がいい。」
 言いながら、俺は健の両手首を縛り上げた。ピアノ線は細いが こいつで後ろ手に拘束する方法は確実だし、普通の人間ならまず 自分で外す事は出来ない。だが、こいつは何と言っても特別性の 軍用犬だ。念には念を入れた方がいい。俺はまだたっぷりと長い ピアノ線の残りを二重にして奴の首に一回、くるりと回してから 件のカウ・ヒッチという方法で留めた。
 「こういった物を肌身離さず持っていると、何かと便利だぜ、   健。いや...科学忍者隊G1号、ガッチャマン、と呼んだ   方がいいのかな?」
 
  .......... To be continued .
 


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