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JUST HIS LUCK!

by さゆり。

 もう深夜といっていい時間だった。ミーティングはとっくに終わっていたし、南部か
らは帰宅許可が出ていた。他のメンバー同様、引き上げようとしたジョーは健に呼
び止められた。あれから何時間経ったのだろうか? 
「いい加減にしろよ、健!今さら何だって言うんだ?」
ジョーは怒鳴った。分析、検討、反省、そのどれもが性に合わない。作戦は実行す
ればいい。そして成功すればいいのだ。成功に対して何を考えろというのか?
「駄目だ。よく考えてみるんだ、ジョー。何故、超バードミサイルを2発撃つ必要が
あったんだ?そんな命令は出ていなかったんだぞ。何故だ?」
健はしつこかった。一歩も譲ろうとしない。いや、それは今に始まった事ではない。
リーダーの責任か?だがそれを追求するのは結局、おまえ自身じゃないか?
「命中して、それで片がついた。それでいいじゃねえか?作戦は成功だったん
だ。」
「違う。俺が訊いているのは結果ではない!しかも帰還しろと言う命令も無視した
んだぞ、ジョー。」
何時間繰り返そうと無駄だ。ジョーには答える気がないし、一方、健はそんな
ジョーを解放しようとしない。いつになったらここから出られるのか?いや、取り立
てて帰らなければならない予定がある訳ではなかった。だが状況が気に食わな
い。束縛はジョーが最も嫌うものだった。
「納得のいく答えを出すまでは絶対に帰さないからな。」
ジョーの苛立ちを無視するように健がそう言った。冷たくて、いやに落ち着いたそ
の声と取り澄ました表情がジョーの怒りに火を点けた。
「帰さないだと?ふざけるな!俺は帰るぜ。」
ジョーはそれまで掛けていたハイバックチェアを、わざとゆっくり半回転させて立ち
上がった。南部の椅子だ。そしてその椅子の前にある大型のデスクの端に腰掛け
ていた健は、その途端、
「駄目だ、ジョー!座ってろっ!」
と、ジョーの肩を突き飛ばそうとした。しかし、ジョーは逆に健の手首を掴んで思い
切り引いた。ふいを突かれた健は、デスクから引き降ろされ、ジョーの胸に激突し
てしまった。すかさず開いている手で健の肩を鷲掴みにすると、ジョーはぐるっとそ
の身体を回し、ハイバックチェアに押し込んだ。
「気が済むまでおまえが座ってりゃいいだろ?」
と、にやりと笑いかけたジョーの太腿に激痛が走った。デッド・レッグと呼ばれる痛
点に健の膝蹴りが入ったからだ。反射的にジョーはバックハンドで、強か健の顔を
殴っていた。長い髪が振り切ったジョーの手を追うようにザッと揺れ、その陰で健
がうっと呻いた。素手で人を殴るのは久しぶりだった。手の甲に感じる痛みが
ジョーをハッとさせた。
「おい、大丈夫か?健ー」
と、声をかけたジョーを健は睨みつけた。右手で殴られた口元を押さえていたが、
その青い瞳はまったく怯んではいない。むしろ挑発するような目だった。
「この野郎っ!」
ジョーは相手の挑発を看過出来る性格ではないし、怒りは怒りを誘発する。立ち上
がろうとする健の両手首を掴むと、無理矢理そのまま押さえ込み、素早く両膝の間
に脚を差し入れた。
「放せっ!」
「ふん。放して欲しけりゃ、放して下さいって言うんだな、健。おまえの命令にはい
い加減うんざりするぜ。」
両手首の関節を一定の方向に捻らているため、健は容易に動くことが出来ない。
もう蹴ることも出来ない体勢だが、ジョーを見上げてはいても、その瞳は傲然とし
た色を浮かべたままだ。生意気な、と、その目にジョーの怒りはさらに掻き立てら
れた。
「健、おまえは確かにリーダーだ。だがなー」
そう言って、ジョーは手首をきつく抑えたまま、首を曲げて健の首筋を噛んだ。唇
の下で、そこがいつもと同じにぎゅっと硬くなるのがおかしかった。首筋に触れら
れることを健は極端に嫌う。しつこくすると決まって「くすぐったい!」と怒り出す。何
度、ベッドを共にしてもそれは変わらなかった。
「だがな、任務の時以外は俺に命令するな!」
低い声できっぱりとそう言うと、再び大嫌いだという首筋に唇を当てた。
「よせっ!」
身を捩って健が怒鳴った。ジョーは構わずに首の後ろへとキスを続け、舌を這わせ
る。と、緊張していた健の身体が短く、だが激しく震えた。チョコレート色の長い髪
に顔を埋めて、執拗にキスを繰り返すと、力を込めて抵抗していた健の身体が、突
然柔らかくなった。
「命令するな、と言ったはずだぜ、健。」
ジョーの言葉に、喘ぐように口で息をしていた健が、再び睨んだ。
「殴れよ!殴ればいいだろ?なんだって、こんなー」
だが語尾が吐息の中に消える。
「こんな?なんでこんな事をするのか、って言うのか?」
ジョーは手首を放すと、左手で健の顎を乱暴に掴んだ。殴ったところが赤くなって
いる。そこが痛むのか、健は眉をしかめて振り払おうとしたが、ジョーの手はがっち
りと顎を掴んで放さない。ブルーグレイの目でじっとその顔を見つめたまま、ふっく
らとした唇に唇を重ねて行った。だが、健はぎゅっと唇を閉じてジョーのキスを拒ん
だし、目を逸らそうともしなかった。
「いつでも俺がおまえの言いなりになると思うなよ。」
ジョーが顎を掴んだまま、親指にぐっと力を入れると、顎の関節が動いた。「うっ」
と、思わず健が声を上げた。わずかに開いたその口にジョーの舌が強引に侵入す
る。頭はヘッドレストに押し付けられて逃げ場がない。息が出来ないほどのディー
プキスを交わしたのは初めてかも知れない。いつも健は「そういうキスは嫌いだ」と
交わしてしまう。
「くっ...」と、健は喉の奥で抗議するように呻くと、自由になった両手でジョーを押
し退けようとする。だが、ジョーは止めようとしなかった。鉄の香と海水に似た血の
味がした。野生を呼び覚ます味だった。殴った時に口の中を切ったのだろう。弄っ
て、探し当てたその傷を舌で強く押すと、健の生え際のきれいな眉が苦痛にぐっと
寄った。だが、健の舌はジョーのそれを押し出そうとするだけで、一向に応えようと
しない。いや、こいつの事だ。顎から手を離すと、舌に噛み付くかも知れない。
いいさ、勝手に嫌がっていろ!と、ジョーは笑った。右手でベルトのバックルと釦を
外し、赤いTシャツをジーンズから引き出すと、素早く胸へと手を差し入れた。滑ら
かな、しかしよく発達した胸の筋肉の下に、健の心臓があった。息苦しいからか、
興奮しているからか、鼓動が早い。掌を早いリズムで上下する胸から、男にしては
やや細い腰へ、そして脇腹へとなぞるように滑らせる。健の喉がこくっと小さく鳴
り、肩を掴んでいた指に力が入った。背中が背もたれから浮き上がり、眉根はます
ます寄せられ、そしてジョーを睨んでいた瞳は長い睫毛の陰に隠れた。
「健...」
唇と顎を解放すると、寄せられた眉頭にキスしてジョーが訊ねた。
「なんでそんなに辛そうな顔をする?おまえは女を抱く時にもこんな顔をするの
か?」
「うるさい...」
健は掠れた声でそう答えた。
「もっといい顔が出来ないのか、おまえはー」
ジョーの長くてしなやかな指がTシャツの中で肋に沿って動き、胸を愛撫する。徐
々に立ち上がった小さな突起を巧みに指先が捕らえると、閉じたままの睫毛が微
かに震え、健の両腕はゆっくりとジョーの背中に廻された。形の良い顎が上を向く
につれ、チョコレート色の髪が赤い肩を滑って行く。
「よせ、いい加減にしないとー」
まだ強がりを言う気か?と、ジョーはくすりと笑った。
「イキそうか?」
そう言うや否や、左手を腰に回すと、右手でTシャツを乱暴に引き上げ、立ち上
がった胸のそれに唇を当てた。ジョーの舌がゆっくりと動くと、引き締まった腹筋が
さらに硬くなり、健は短く叫んだ。
「いい声だな、健。」
その言葉に健は悔しそうな表情を浮かべた。だが、本気で止めたいならもっと抵
抗するはずだ。女じゃあるまいし、こいつを押さえ込む事なぞ出来やしない。女じゃ
あるまいし?そうだ。ジョーは未だに自分がこうしたいと欲する事が信じられなかっ
た。健以外の男と、など到底考えられない。では、健は?こいつは俺以外の男とも
こうする事があるのだろうか?ーそれを知りたいのか、知りたく無いのか?考える
と無闇に腹が立つ。揶揄われているだけか、と疑うほど、健が分からない。こうし
て腕の中にいるのに。これはジョークだ。SEXのバリエーションがひとつ増えただけ
で、恋愛をしている訳ではない。分かっていても腹が立つ。だから今度だけは絶
対におまえの思う通りにはさせないぞ、とジョーは腰に回した腕に力を込めた。
「苦しいぞ、この椅子じゃ...よせよ、よせったら!」
「今さらよせってのは、なしにしようぜ...」
ジョーは右腕を健の片膝にくぐらせ、左腕で背中を抱いてそのままデスクの端に座
らせると、ゆっくりと天板の上に押し倒す。
「さあ、これでいいだろ?ちょっとばかり固いベッドだがな。」
「馬鹿な真似は、やめ...」
唇をキスで塞ぐ。今度は優しく舌先に触れると、健がそれに応えた。滑らかで柔ら
かい唇と舌が、踊るようにジョーと絡み合う。ジョーは健のキスが好きだった。いつ
だったか、「おまえはキスが上手いな。」と言ってみた。健は「みんなそう言うぜ。」
と笑った。「みんなって誰だよ?」つい余計な事を訊いてしまった。「さあな?」と、
恍ける横顔を見、誰だか分からぬが少なくともこの唇に触れた事のある者、全員
に激しい妬心を覚え、それに驚いた事がある。恋愛をしている訳でもないのに?
「健、おまえは、俺のせいだ、って言った事があったな?」
「ああ、おまえのせいだぞ、ジョー。おまえのせいだ。」
乾いた声で健がそう繰り返す。その唇にキスし、ジッパーを引き下げると、そっと手

の中に健自身を包んだ。吐息が熱く乱れる。ゆっくりと愛撫するジョーが指に少し
力を込め、徐々にストロークを速めると、健は片腕をジョーの首に回して喘ぎなが
ら、もう片方の手でジーンズの前を開いて、すっかり窮屈になっていたジョーを解
放した。ひんやりとした健の指が熱く張りつめたそれに触れ、弄ると、堪らずに
ジョーが呻いた。ジョーの右手の動きがさらに速くなる。と、健の顎が仰け反り、長
い髪が揺れた。その耳の中へ、
「健...」
と囁くと、眠りから覚めたように青い瞳が瞬いた。
「何故、俺のせいなんだ?」
「おまえが俺の...を...」
喘ぎの中に言葉が途切れた。ジョーの指は愛撫を続ける。包み込み、圧迫する。
健の指もそれを追うようにジョーを掻き立てて行く。2人の熱い呼吸がさらに速くな
る。
「健、俺はおまえを...」
そう言いかけ、ジョーは健の身体を持ち上げて抱きしめた。くちづけながらジーンズ
を引き下ろす。片方の靴を踵から床に落とすと、立てた片膝が自由になった。腰に
回した腕で引き寄せ、ジョーが健の中へ入って行くと、健は、「うっ」と呻いて再び
目蓋を閉じた。ジョーの首に回したままの腕に力が込められ、微かに震える。伏せ
た睫毛が陰を落とす殉教者のようなその表情と、切ない呻き声に、今度も抑制と
いう名の鍵が外れた。ゆっくりと動きながら、再び健を愛撫する指先に力を込め
る。2つの息と鼓動と喘ぎが重なり、どこまでが自分なのか分からなくなる。滑るデ
スクの上で、ジョーは健をひどく揺すった。波が押し寄せるに任せて激しく突き上げ
ると、「ああっ」と健が叫んだ。しなやかなその肢体が痙攣するように震え、ジョー
の手の中で健が弾ける。そして、ジョーも...。
荒い呼吸だけが2人を包む。デスクの上に緩やかに広がったチョコレート色の髪
を、ジョーが優しく撫でた。と、濡れた青い瞳がジョーを見た。驚くほど真剣な表情
でじっとブルーグレイのジョーの目を見つめながら、微かな声で、
「おまえを、何だ?」
と、訊く。
「愛している。」
ジョーはきっぱりと答えた。愛している?恋愛をしている訳じゃない、と思ったの
に?あまりにもあっさりと言ってしまった言葉にジョーは自分で驚いた。健は少し微
笑むと、身を起こしてそう言ったジョーの唇に優しく唇を重ねる。ふいにその唇に何
かが触れた。瞬いて唇を離すと、健の目から涙が溢れている。
「おい、どうしたんだ?」
健は子供のように手の甲でそれをぐいと拭うと、
「おまえがあんまり馬鹿な事を言うからさ。」
と、笑って、ジョーのラシッドブロンドをくしゃくしゃと掻き回した...。


−THE ENDー


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