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THE TRICKY TRIP
/ ANOTHR STORY OF THE GATCHAMAN


by 鷲尾さゆり

THE TRICKY TRIP


      act.1

風が吹き渡る、どこまでも、どこまでも真直ぐな道を1台のコン
バーティブルが走っていた。右も左もただ赤っぽい単調な風景が
続く。時おり、現れてはすぐ後方へと消えて行く小さな潅木。道
は緩やかにアップダウンしながら、真直ぐに続いている。
「つまらねえ任務だぜ。」
片手でハンドルを握るラスティ・ブロンドの若い男が独言ちた。
頬骨の張った精悍な顔立ちにブルー・グレイの目がよりシャープ
な印象を加味している。だが、その目は白い陽光のせいか、彼の
内心の苛立ちからか、眩し気に細められていた。
「なんだって俺達が行かなくちゃならねえんだ?」
眉根を寄せて、あからさまに不機嫌そうな顔である。
「おまえだっていつか言ってたじゃないか?国際科学技術庁だの
の尻拭いはごめんだ、ってよ。」
正面から照りつける陽差しに、ちっと舌打ちすると、彼は、
「おい、サングラスを取ってくれ。眩しくてかなわねえや。」
サイドシートを半ば倒して、目を閉じているもう一人の男にそう
声をかけた。年齢は同じくらいだろうか?いくぶんふっくらとし
た頬が幼さを感じさせるその男は、目を閉じたまま、応えようと
もしない。チョコレート・ブラウンの長い髪が風に流れる。
「おい、健!寝るな。起きろよ!」
ドライバーズシートから右手を伸ばして、その肩を小突く。
「さっきからうるさい奴だな・・・」
健と呼ばれた男は両腕を空に向け、うんと伸びをすると、ダッシ
ュボードからサングラスを取り出した。そして、
「ほら。」と、ドライバーに渡す。その左手首に巻いたスチール
ブルーのブレスレットが陽光にキラッと光った。それに目を止め
て、健が笑いながら言った。
「おい、ジョー。すっかり忘れてたぜ。こいつを外しておかなく
ちゃ。」
2人は科学忍者隊、コードネームG1号とG2号だった。

しばらく走るとガスステーションとドライブ・インが見えて来た
。大型のトレーラーが並んでいる。日没までにはまだ時間がある
が、トラッカー達はすでにお楽しみの時間に入っているのかも知
れない。いや、単調な風景とドライブに飽きた人々の心理を突い
た実にうまい立地に作られたドライブ・インなのだろう。何も無
い景色の中に、大きくて派手な看板が魅力的に微笑んでいる。
「ちょっと早いけど、あそこで食事にしようや。」
もう居眠りにも飽きたのか、健がそう言い出した。もとよりジョ
ーにも異論はない。もう半日近く、何も無い道をただ走って来た
のだから。
「ああ、いいとも。一休みしようぜ。」
一も二も無く賛成すると、ジョーは大きなトレーラーの間にコン
バーチブルを滑り込ませた。コンテナの影に入ると、健は自分の
ブレスレットを外し、代りにダッシュボードから何の変哲もない
腕時計を引っ張り出して手首に巻いた。
「ほら、ジョーのはこっちだ。一応、通信は出来るらしいぜ。」
ジョーはドアを飛び越して車外に降りると、コンバーチブルのフ
ロントをぐるっと歩いて右側へ回った。そして無言で腕時計を受
け取ると、まるで身体の一部のように馴染んだブレスレットを外
す。今回、2人に与えられた任務は、彼等が科学忍者隊だという
事を秘匿する必要があった。相手は彼等の秘密ー科学忍者隊は左
手首に揃いのブレスレットを付けている、という事を知っている
らしいのだ。任務を言い渡した時、南部はこの事を告げ、通信機
能のみを組み込んだ腕時計を渡した。
それを付けるとジョーは外したブレスレットをダッシュボードに
投げ込んだ。なんだか嫌な物でも投げ捨てるような、ちょっと乱
暴なその動作に、健が眉をひそめる。また説教するつもりか?と
、ちょっと構えたジョーだったが、意外な事に、
「足枷・・・じゃなくて、手枷だもんな。」
屈託のない顔で健はぽつりとそう言った。だが、手枷と呼んだ自
分のブレスレットをポケットに捩じ込もうとするのを見て、それ
が無性に勘に触った。そう思っているのに、後生大事に持って歩
くつもりか?と、ジョーは健の手を掴んで言った。
「車に置いておけばいいだろう?」
「しかし、盗まれでもしたらー」
「そんな物を盗む奴なんかいねえよ!」
「それもそうだな。」
健はちょっと考えていたが、結局、ブレスレットをダッシュボー
ドに入れた。それを横目で見て、ジョーは伸びをしながらレスト
ランの方へ歩き出した。少し遅れて健が走って来た。

act.2

 店内はカントリー&ウエスタンの陽気な音楽に包まれていた。
賑やかに談笑している、まるで西部劇から抜け出て来たカウボー
イようなトラッカー達が多い。ゲームに興じている者もいれば、
ひたすら食べている者もいる。戸外の素っ気無い景色とは打って
変わった、暖かくて懐かしくて、ちょっとうるさい人間の世界が
展開していた。窓際のボックス席に座った健とジョーを見るとは
なしに見ているトラッカー達。明らかに場違いな2人は、退屈し
のぎには丁度よい話題を提供したようだ。
「見ない若造だな?」「旅行者だろ?」「こんな所へ?」「何を
しに?」
と、言った言葉が喧噪の中をひとしきり流れた。やれやれ、だ。

「初めてね?どこから来たの?」
と、水とカトラリーを運んで来たきれいなブロンドのウエイトレ
スが尋ねた。
「ユートランドからだよ。」
と、健が親指で後方を差しながら、微笑んで答えた。
「あ、いい街ね。で、どこへ行くの?」
「あっちさ。」
と、今度はジョーが無愛想に前方を指差した。そして、それで?
と言わんばかりに相手をじっと見つめる。こういう時のジョーは
ちょっと怖い。悪気はなくとも他人を寄せ付けない冷たさがある
のだ。よせよ、と言うように健がその顔を睨む。そして、メニュ
ーを広げると明るい声で言った。
「コーヒーとサンドイッチにしよう。」
「なんでこんな所でまでサンドイッチを食いたがるかね?」
ジョーが苦笑した。いい男なのに、食い物に関してはまったく無
頓着な奴だな。
「え、そうかな?じゃあコーヒーとハンバーガーをー」
「変わらないじゃねえか。」
思わず笑いが出た。ウエイトレスもつられて微笑む。
「うちのハンバーガーは美味しいわよ。で、こちらは?」
「ああ、俺も同じ物でいい。」
なんだっ?というように健が顔を上げた。
「まあ、何でもいいんだよ。腹さえ膨れれば、な。」
「なら人のオーダーにケチをつけるなよ。」
「そう怒りなさんなって。ところで健、一体どういう事なんだ?
こんな所にギャラクターがいるって言うのか?」
声を落としてジョーが訊いた。
「か、どうかはまだ分からんさ。ただ博士の話だとその可能性が
高いらしい。」

コーヒーと確かに旨そうなハンバーガーが運ばれて来た。厚手の
白いカップにたっぷりと注がれたコーヒーを飲むジョーを眺めな
がら、健は話を続けた。
「どうもギャラクターを抜けた人間らしいんだが、繋がりがない
、とは言い切れないだろ?」
「で、何を探して来いって?」
「スーツケースに入った携帯用小型原子爆弾さ。」
ハンバーガーを齧りながら健があっさりと言ってのけた。
「なんだって?そんな物騒な物をなんで盗まれたんだ?」
「知るもんか。しかもその数、80個!ま、推定だがね。もっと
あるかも知れないが。」
ジョーが目を剥いた。
「80個?ふざけるのもいい加減にしろ!第一、どうやって80
個のスーツケースを2人で運ぶんだ?あの車でか?ちきしょう、
竜を連れて来れば良かったぜ。」
けほっ、とコーヒーに咽せながら健が笑う。
「そりゃ考えなかったな!俺達だけで80個はちょっと無理だろ
う。」
「何を笑ってやがる?なんだってそんな物を大量にー」
「落ち着けよ、ジョー。80個っていうのは世界中にバラ撒かれ
た数だ。俺達が探すのはその制御用のマスターキーさ。そいつが
なければ80個はただのスーツケースだ。ま、とは言っても核爆
弾が入っている訳だし、TNT火薬にしたら千トン相当の破壊力っ
て言うんだから物騒な代物だよな。そっちは各国の警察や軍情報
部が回収を急いでるって話しだ。で、そのお探しの品をそいつが
持ち逃げしてくれたもんで、こうして遥々やって来たって訳さ。

「俺はな、ギャラクターを叩き潰すために戦いたいんだ。なんだ
ってそんなくだらない事を俺達が引き受けなきゃならないんだ?
どうしてなんだよ、健?」
ジョーがいらいらするのは分かる。戦いは長引いているし、膠着
状態だ。健自身、もどかしさに腹が立つ事もある。情けなくなる
事もある。しかしー
「ジョー、これは任務なんだ。くだらなかろうと何だろうと、俺
達は与えられた任務を遂行するしかないんだ。」
ジョーと自分にそう言い聞かせて、健はさっさと席を立った。
「電話をかけてくるから、俺のフレンチフライも食っていいよ。

「なんで?」
「じゃがいもは嫌いなんだ。」
「じゃがいもは身体にいいんだぞ。」
「だったらおまえが食えよ。」
2人分のフレンチフライはかなりの量がある。80本くらいはあ
るかも知れない。ジョーはそれを端から口に運んだ。まったく面
白くもない任務だ!

act.3

 「分かったか、甚平?まだ手がかりはない、引き続き宝物を探
す。そう連絡してくれ。頼んだぞ。え、何だって?あ、ジュン・
・・やあ、元気?えっ、ツケってそんな事、急に言われてもさ・
・・まわりがうるさくてよく聞こえないよ。じゃな、頼んだぜ。

公衆電話のフックを掛けながら、健は苦笑した。甚平の奴め、置
いてきぼりの腹いせかな?いきなりジュンに代わらなくてもいい
だろうに。参ったな・・・いや、そろそろ払わないと本当にまず
いかな?しかし、立ち寄った所で必ず通常回線の電話からスナッ
クJに連絡を入れろ、とはまた変わった指令だが、博士には考え
があるんだろう・・・。と、突然、靴を蹴られた。
「何をニヤニヤしてんだよ?あんちゃん。」
ドスの利いた声に見上げると、大男とその仲間らしき男が数人で
通路を塞いでいた。他所者にいちゃもんをつけて、金でも巻き上
げようという魂胆か?碌な奴らじゃないな。
「いや、別に何でもないよ。電話で弟にちょっと面白い冗談を言
われてね。」
「何が弟の冗談だっ!」
大振りなフックが飛んで来た。健は僅かに左へ重心をかけつつサ
ッと左腕を上げて、前腕の外側、即ち最も骨が丈夫な部分でそれ
を横に払いのけた。痛くもないし力も要らない。勢い余って大男
が前のめりに倒れかかる。
「おっと・・・」
と、そいつのシャツを掴む。
「大丈夫かい?ちょっと飲み過ぎてるみたいだけど。」
「うるせえっ!放しやがれ!」
「こうかい?」
シャツを放すと、大男はそのまま床にドウッと転倒した。したた
か腹を打ったらしい。
「この野郎!」
数人の男が気色ばんで向かって来る。
(困ったな・・・)
と、健は頭を掻いた。叩きのめしてしまうのは簡単だが、こんな
所で無用な騒ぎを起こす訳にはいかない。同時に真正面から殴り
掛かられたが、素人のパンチほど当たらないものはない。しかも
必ず顔を狙って打ってくる。第一、その曖昧な握り方の拳じゃ、
もし当たっても自分の指が痛いだけだぜ、とひとつは交わし、ひ
とつは胸の前に上げた両腕で受けた。さて、どうする?
「こいつっ!」
聞き慣れた声と同時に、懲りずに殴り掛かろうとしていた一人が
凄まじい勢いで横にすっ飛んだ。
「ジョー!?」
「遅いから来て見れば、こんな雑魚を相手に何をもたもたしてや
がる?」
言うよりも早く、ジョーは更に一人を強烈なサイドキックで床に
沈め、起き上がった大男の手首を掴んで投げ飛ばした。テーブル
がひっくり返り、食器が割れ、あっと言う間に大騒ぎだ。
「やめろよっ!まったく手の早い奴だな、おまえはー」
ジョーの腕を押さえて、健がたしなめた。
「こういう奴らは口で言ったって分からないのさ。それで、どう
する?」
「それは俺の台詞だぜ。」
もはや店内は蜂の巣を突いたような騒ぎだ。ジョーにやられた連
中も手に得物を持って、再び突進して来る。「喧嘩は外でやって
くれっ!」と、店主が怒鳴った。健はすぐ横にあった木箱の中に
手を突っ込んで何やら掴み出していたが、突然、走り出した。
「逃げよう!」
ジョーもその後を追った。

 2人は重心を低くして肩で囲みを突破し、外へ飛び出すと、健
が抱えていた物をドアの前にバラッと撒いた。それから後も見ず
にジョーを追って走り出す。後方で「わーっ!」と言う声と、何
かが次々と倒れる音がした。ジョーが肩ごしに振り返ると、ドア
の前で男達が重なりあってもがいている。
「じゃがいもは身体に良くないんじゃないのか?」
と、健が笑った。木箱の中に入っていたじゃがいもをドアの前に
転がして来たのだ。それに足を取られて相次いで転倒しているら
しい。
「間抜けな奴らだぜ!」
ジョーも笑った。2人の脚力に普通の人間が追いつく訳がない。
しかも彼らはこれから走り出すのだ。さあ、このトレーラーの向
こうにコンバーティブルが。と、思った瞬間、轟音が響いた。ど
うした事か分からないが、彼らのコンバーティブルが爆発したの
だ。襲って来た爆風に健がトレーラに叩き着けられるのが見えた
。その向こうでコンバーティブルが激しく炎を上げている。
「おい、健ッ!?」
倒れたまま、地面に長くなった健の元へ駆け寄ったジョーは、そ
の刹那、何か棒のような物で強か後頭部を殴りつけられた。あっ
と思う間もなく、目の前が真っ暗になり、ジョーも健に折り重な
って意識を失った。

act.4

 ハッとして目が覚めた。ズキッと殴られた頭が疼く。
「くそっ!」
反射的に痛む箇所を押さえようとして、両手が自由にならない事
に気がついたジョーは、
(やられた!)と、心の中で舌打ちをした。両手は後ろ手に縛ら
れていたが、感触からして細引きのロープのようだ。見れば足も
同じロープで縛られている。、解きにくい物で、指さえも自由に
ならない縛り方をしてあるという事は、相当手慣れた奴だという
事だ。
そうだ、健は?ー肘で上半身を起こすと、ちょっと離れた壁際に
転がされて伸びている健が見えた。同じように両手両足を縛られ
ているが、後ろ姿なので顔はまったく見えない。
「健っ!」
にじり寄って呼びかけたが返事がない。
「打ちどころが悪かったからな。死んだかも知れんぞ。」
突然、知らない声が剣呑な事を言った。ハッとして振り返ると、
ス−ツを粋に着こなした中年の男が立っていた。その後ろには若
い男が一人控えている。こっちもスーツ姿だ。
「意外と早く戻って来たからなあ。だがもうちっと早かったら、
本当に死んでたぜ。」
車を爆破したのもこいつらか、とジョーは思わず唸った。
「誰だ、おまえは?何だって俺達をー」
「宝物を探しに来たんだろう?」
「何故それを知っている?」
「電話さ。そっちの兄さんがあの店の電話で、そう言ってたぜ。

立ち聞きされたのか、盗聴されたのか?いずれにしてもキナ臭い
。やはりこいつらなのか?と、ジョーはそのブルーグレーの目で
鋭く男を睨んだ。
「俺達の宝物を欲しがる奴は大勢いる。しかし、この辺へ探しに
来る奴は追っ手のギャラクターか、さもなきゃ取り引きを持ちか
けた国際科学技術庁の人間しかいねえはずだからな。」

ビンゴ!だ。
「で、俺達はそのどっちだって言うんだい?」
ジョーは口の端で薄く笑うとそう訊いた。高価そうなスーツと指
輪、その物腰、そして取り引きと言った口調から男の素性が分か
った。こいつらはマフィアだ。ジョー自身、マフィアの世界に生
まれた。子供だったとはいえ、8才までその世界で育ったジョー
は懐かしいとさえ思えるその匂いを記憶している。そしてそれを
嗅ぎ分ける事もまた簡単だった。しかし健はギャラクターと言っ
ていたはずだ。何故、マフィアが?
「兄さん達は科学忍者隊だろう?」
あんたもビンゴ!だな。すっと目を細めてジョーが訊いた。
「へえ、何故そう思う?」
「まずそいつを確かめなくちゃ、話が先へ進まないな。聞いたと
ころ、忍者隊はブレスレットをしているそうだ。だが、そんな物
は外しちまえば分からない。兄さんが付けているのもただの腕時
計のようだ。おい、カルロー。」
ブレスレットだと?腕時計?ーあっ、ブレスレットは車の中だ!
車が爆発したって事は・・・!!
ジョーの背中を冷たい汗が流れた。確かに俺達の正体はバレっこ
ない。ブレスレットは絶対に見つかりゃしない。何しろ燃えちま
ったんだからな。で、俺達はただの間抜けな囚人て訳だ。せめて
健だけでもあのままポケットに入れていれば!だが、それを止め
たのは、この俺だ・・・。くそっ!何て事だ!ジョーは激しい自
責の念にかられて唇を噛んだ。その表情をスーツ姿の男がじっと
凝視している。何を慌ているんだい?と言うように。
若い男が健の左手首から時計を外して投げて寄越した。
「むこうの兄さんのも普通の時計だ。だが、中味は普通じゃない
のかな?」
いや、それはただの腕時計だ。それよりもまだ気がつかないのか
?健。どうした?・・・ジョーの視線が健の方へ逸れたのを男は
見逃さなかった。革手袋をはめた指がジョーの顎を掴んだ。
「さっきから何が気になるんだい?」
「さあな?」
と、ジョーがうそぶく。男の平手が頬に飛んだ。鋭くて、まるで
鞭のような一発だった。顔を固定しておいて打つなんざ、やはり
慣れてやがる。さっきの連中とは大違いだ、とジョーは思った。
「ま、一発叩いたくらいじゃ話してはくれんよな、兄さん?」
当たり前だ、とジョーはフンと鼻で笑った。今度は前髪を掴んで
、二度、三度と頬を打つ。手袋のせいか、よほどの巧者なのか、
平手なのにやけに痛みが残る。しかし、ジョーはじっと男を睨ん
だまま微動だにしなかった。

「ちょうど夕食にしようと思ってたとこでね。」
急にそう言うと、男は開け放したドアから隣室へ消えた。様子を
窺うとなるほどダイニングテーブルにワインやら何やらが乗って
いるようだ。カチャンと小さな音がして、男が手に小さな瓶を持
って引き返して来た。くすんだ緑色の液体が中でゆっくりと揺れ
る。
「パスタは好きかね?」
「好きさ。だが、生憎と腹がいっぱいでね。」
「そいつは残念だな。ま、味見だけでもしてくれよ。」
カルロと呼ばれた若い男が背後へ回ってジョーの両肩を抑えた。
男は小瓶から掌にたっぷりと液体を振り出すと、アフターシェー
ブローションを客の頬に塗る理容師のように、気取った手つきで
ジョーの頬を撫で回した。
「うっ!」
頬に焼け付くような痛みが走る。革手袋にはガラス粉か何かで細
工がしてあったらしい。頬はちょうど紙ヤスリで擦られたような
擦過傷になっていた。その傷に、目に、その液体がひどく染みる
。身体中がカッと熱くなり、汗がドッと噴き出した。身を引いて
逃れようとしても、肩を掴まれて動けない。
「辛いのは苦手だったかな?」
と、男は笑って床にペッパーソースと書かれたラベルの張られた
小瓶を置くと、立ち上がった。
「痛いだろうが、擦らない方がいいぜ。余計に痛くなる。」
「くそっ!」
こん畜生め!肩に頬を擦りつけたい衝動に駆られたが、やれば痛
みを増すだけだ。とにかく我慢するしか方法がない。痛みは我慢
出来る。そのコントロール法は熟知している。その様子をじっと
観察していた男が舌打ちをした。
「我慢強いな、兄さん。カルロ、そっちの兄さんは起きねえか?

相変わらず転がったままの健を若い男が無造作に蹴った。一瞬、
眉根を寄せてうっと呻いたが、それでも健は一向に目を開けなか
った。生きている。が、おい、まさかー?と、ハッとしたその表
情を読まれた。
「そうか。時計じゃなくてあいつか?兄さんは友達思いなんだな
。カルロ、そいつを起こせ!」
若い男が手首のロープを掴んで引っ張り上げたが、健は起きない
。手荒く揺すぶられても、くたんと頭を垂れたままだ。
「駄目か?ま、食事が済んだら水でもかけて起こしてやるさ。」
笑いながら2人はドアの向こうに消えた。

と、それを待っていたように、健がその特徴のある目をパッと開
いた。そして、肘で起き上がると、黙ったまま顎を引いて「こっ
ちへ来い」と呼ぶ。なるべく音を立てないように傍らへ寄ったジ
ョーに、声を潜めて言った。
「ひどい顔だな、ジョー。だが、まずロープを外さないとどうに
もならん。」
「健、気がついたのか?死んだかと思ったぜ。」
「馬鹿、死んでたまるか。」
と笑ったものの、左の耳の辺りから目の横にかけてドス黒い痣に
なっている。こめかみを強打した場合、一歩間違えば生命に関わ
る。打ちどころが悪かったのは事実のようだ。
「いったい、何が起こったんだ?車が爆発したまでは覚えてるん
だが・・・」
健は水から上がった犬のようにブルッと頭を振って、顔にかかる
髪を払い除けるとそう言った。
「爆発でおまえは吹き飛ばされたんだ。で、俺は殴られて、この
ざまさ。」
「そうか・・・途中で気がついたんだが、伸びたふりをしてチャ
ンスを窺ってたのさ。すまなかったな、痛かっただろう?」
「大した事はねえさ。だが車に入れたブレスレットが・・・すま
ない。俺が余計な事をー」
「ジョー、とにかく今はこいつを外す事だけを考えろ。」
つまりおまえは俺が痛めつけられたのも、自分が蹴られたのも我
慢して、じっとチャンスを待ってたって訳か?そして、今、しな
ければならない事だけに集中しろ、と?もし、逆だったら?と、
ジョーは苦笑した。自分だったら、きっと飛び起きて無駄に暴れ
ただろう。相手のミステイクを詰っただろう。悔しいがこういう
判断力と冷静さは健には適わない。
「さすがだぜ、健。」
「なにが?」
おかしな奴だな、というように健は怪訝な顔をしながら、背中で
手首のロープと格闘している。
「さっきのでロープが少し緩んだんだ。よし、これで指が動くぞ
。羽根手裏剣を持ってるか?」
「ああ、いつものところだ。」
健は俯いてジョーの右腿に顔を寄せると、サイドステッチに隠さ
れたファスナーを歯で引き下げ、羽根手裏剣を口で引っ張り出し
た。その端をジョーが銜え、今度は健の背中に回された手にそれ
を渡す。
「よし!」
背中合わせになると、ほどなく鋭利な先端がジョーの手首のロー
プを切断した。自由になった手で羽根手裏剣を持つと健の手首の
ロープを切った。続いて足首。そして最後にジョーが自分の足首
のロープを切った時、ドアの向こうで人が動く気配がした。パス
タを食い終わったって訳か。2人は素早く立ち上がってドアの両
側に身を潜めた。無言のうちに取るべき行動を打ち合わせる。・
・・こう牽制するから、背後から攻撃しろ。・・・よし、分かっ
た。
ドアが開いた。

act.5

「パスタは旨かったかい?」
ロープで男を縛りながら、ジョーが訊いた。若い方は健が縛って
いる。
「ワインがちょっとな。この国のワインは口に合わねえ。」
相変わらず落ち着いた口調でそう言いながら、スーツの皺を気に
している。やはりただもんじゃないな、この男は。
「BC島のワインは旨いぞ。」
男の言葉にジョーの手が止まった。BC島だと?思わず驚いた表情
のまま、男の顔を見てしまった。おや、という風に男が訝しむ。
「兄さん、どこかで見た顔だな?いや、さっきもそう思ったんだ
がね。」
「あんたはBC島から来たのか?」
健が尋ねた。健は知っていた。BC島がジョーの故郷である事を。
そしてそれが二度と帰れない故郷だという事と、今は実質的にギ
ャラクターによって支配されている地域の一つだという事を。
「兄さんはドン・ジュゼッペの身内の者か?よく似ているが・・
・」
ジョーの表情が見る見る険しくなった。
「こいつ!」
「やめろっ、ジョー!」
殴りかかろうとする瞬間、健が止めた。男はおっ、と呻いて、
「ジョー?・・・バンビーノ?バンビーノ・ジョージなのか?」
と、訊いた。
「そんな奴は知らん!」
ジョーが怒鳴った。畜生、何だって思い出させるんだ?何だって
おまえは俺のパーパを知っていやがるんだ?キ・エ・レイ?おま
えは誰だ?こん畜生!
坊ちゃんと呼ばれていたあの頃、パーパは強くて、マーマは優し
かった。それだけで良かった。悩む事も哀しむ事も、人を憎む事
も恨む事も知らなかった。いや、愛する事も、かも知れない。そ
れは当然の如く与えられるものだった。BC島の明るい太陽が光を
くれるように、パーパが、マーマが、そして周りの人々が俺を愛
してくれた。夏の終わりのあの日までは・・・。

「バンビーノ、よく生きていたなあ。俺だよ、ビトーだよ。覚え
てないか?駆け出しだった俺はドンに頼まれてよくバンビーノを
迎えに行ったっけ。いや、悪戯な坊やだったからなあ。」
「人違いだと言ってるだろ?」
ビトーを覚えているのか、いないのか?無表情に答えるジョーの
横顔からそれを窺い知る事は困難だった。封印したはずの記憶な
ら思い出さない方がいいのかも知れない。
「ドン・ジュゼッペは頼れる人だった。ファミリーの誰からも愛
されていたのに、まさかあんな事になるなんてなあ。だがドンが
何よりも大切にしていたバンビーノが無事だったんだ。ドンも天
国で喜んでるぜ。あいつらが島にー」
「うるせえやっ!そんな話しは聞きたくねえ!」
ジョーの拳が微かに震えている。まずいな、と健は思った。だが
、ビトーは構わずに続けた。
「あ、そうか!バンビーノはドンの仇を討つために科学忍者隊に
入ったんだな?」
「ノ!アッソルタメンテ、ノ!違うっ!」
「よせっ、ジョー!相手になるな。」
ジョーは激怒し、久しく話す事のなかった故郷の言葉をつい口に
してしまった。そしてそれを制した健の手を払い除けた。仲間割
れか、と、ビトーの口元に笑みが浮かんだ。
「ペルケ?何故だい?レイ・エ・マフィアーノ?あんたもマフィ
アだろ?血と名誉の掟を忘れたのかい?流された血は、仇の流す
血でしか償われない。そうだろう?」
「シ!」
ジョーが鋭く叫んだ。
「シ、エサット!そうだ、その通りだ。」
その瞳は激しい怒りを映してほとんどスミレ色に見えた。もし止
めれば、恐らく健にでも殴りかかるだろう。復讐心はジョーの全
てであり、ジョーの行動原理を掌るキーワードでもある。だがそ
れに偏れば自らを二重に拘束してしまう。駄目だ!このままでは
・・・。

「無駄話はそのくらいにしてもらおうか?」
ビトーの話しを健がぴしりと遮った。静かだが、ゾッとするよう
な声だった。
「あんたが持って来た物はどこにある?」
「ふん、可愛い面に似合わず、えらく迫力のある兄さんだな。」
「この際、俺の面は関係ないんでね。」
ジッと上目づかいに睨む健の目は怖い。だがビトーはまったく動
ぜず、平然と言ってのけた。
「取り引きになら応じてもいいぜ、兄さん。バンビーノに免じて
な。」
思わずジョーはビトーの胸ぐらを掴んでいた。
「この野郎!いい加減にしないかっ!」
「やめろ!」
「止めるなよ、健。ぶん殴って吐かせてやるっ!」
にやり、と健が笑った。
「ジョー、親分さんは殴られたって喋りゃしないぜ。そうだろ?」
そう言いながら、つかつかとカルロの所へ行くといきなり強烈な
平手を食らわせた。わっ、と声を上げるカルロを立たせ、さらに
殴る。そして身体を丸めてディフェンスしようとする男の襟首を
ひっ掴むと、そのままビトーの前に引き据えた。
「親分さんが舎弟思いだといいな?そうだろ?カルロ。」
健の手にはいつの間に拾い上げたのか、ペッパーソースの小瓶が
握られていた。
「おい、何をする気だっ?」
ビトーの顔色が変わったのを見て、しめた、と健は内心ほくそ笑
んだ。だが、ジョーの視線は辛い。
「さっきはよくもやってくれたな。だがな、こいつは目に入れた
方が効くんだぜ。なあに痛いかも知れんが、擦らない方がいい。」
と、素早くカルロの頭をホールドし、小瓶を顔の上にかざす。カ
ルロの端正な顔が恐怖に引き攣った。
「ノン!フェルモッ!やめろっ!」
ビトーが叫んだ。こいつは本気だ、何をするか分からねえ!チッ
と忌々し気に舌打ちすると、
「分かったよ、兄さんの勝ちだ。カルロを放してやってくれ。宝
物の在り処は教えてやる。」
と、吐き捨てるように言った。

「顔を流して来いよ、ジョー。とにかく冷やした方がいいぞ。」
怒ったような顔で健がそう言った。自分で自分に嫌気が差した時
の癖だ。ジョーはそれをよく知っている。わざと逆らう時もある
が、今は放っておくしかない、と冷静さを取り戻したジョーは素
直に頷いた。
「ジョー、ついでに電話してくれ。Jに伝言を頼むんだ。宝物は
間もなく入手、とな。電話はどこだい?親分さん。」
「セルならここにあるが?」
「携帯じゃなくて普通の回線の電話さ。ついでにファーストエイ
ドもあるといいんだがね。」
「カルロ、バンビーノを案内してやんな。」
そう呼ばれても、もうジョーは怒らなかった。健の表情が和んだ。
「気にするなよ、ジョー。」
「健、おまえもあんまり無理をするな。」
ぽつりとそう言い残して、ジョーはカルロと廊下へ出て行った。

「兄さん達はやはり科学忍者隊だな。」
ビトーは確信に満ちた口調でそう言った。
「何故そう思うんだ?情報を掴んだ、ただのチンピラかも知れな
いぜ。いや、あんたを追って来たギャラクターかも・・・。」
「ギャラクターじゃないさ。あいつらは仲間同士、思い遣るって
事がないからな。兄さんはバンビーノに辛い思いをさせないよう
に、あんな乱暴な真似をしたんだろ?」
フッと健の口元が緩んだ。なんだ、バレてたのか?大した事はな
いな、俺も。
「親分もずいぶんと優しいじゃないか?」
「カルロは末の弟だからな。マフィアはな、何よりもファミリー
と名誉を大切にする。それも俺達の掟だ。バンビーノの親父さん
もこの掟を守ろうとして殺された。」
「ジョーの親父さんが?」
「ああ。あいつらは最初、武器密売の取り引き相手だったんだ。
だがな、徐々に組織自体を乗っ取ろうとしやがったのよ。ドン・
ジュゼッペはそれに気付いて、あいつらから離れようとしたんだ
。ま、あいつらも血族的な組織らしいから、俺達の組織には馴染
み易かったんだろう。今じゃ大半があいつらに牛耳られてるって
訳さ。ざまあない話しだぜ、まったく。」
「で、例のマスターキーってのは?あんたが持ってるんだろう?」
ビトーがにやりと笑った。
「そうさ、俺が持ってる。兄さん、こいつはな、崩壊したS連邦
の国家保安委員会が作ってバラ撒いた代物だぜ。」
「なんだって?」
「知らなかっただろう?こういった武器を商うのもマフィアのビ
ジネスさ。もっともここ数年は全てギャラクターが動かしてんだ
がね。」

そんな事情があったのか、と健は驚いた。マフィアは世界的なネ
ットワークを持つ組織だ。非合法な事に精通している。賭博や麻
薬、武器の密売を仕切り、それを取り締まるはずの警察や軍部に
もコネションを持つと聞く。それを動かしているのがギャラクタ
ーなら、これは相当に厄介な事だ。
「で、俺もあいつらとは切れようと思ってね。お宝を持ってりゃ
、手は出せまい?兄さん、悪いが一服させてくれないか?」
ビトーが上着の胸元を顎で指した。
「手が自由にならないんでね。胸の内ポケットだ。」
「ああ。」
ポケットから滑らかな金色の光沢を放つシガレットケースを引っ
張り出すと、細巻きの煙草を1本、ビトーの口に銜えさせてやっ
た。
「火は?」
ビトーはそれに答えず、じっと健のスカイブルーの瞳を凝視した
。健もじっと男の瞳を見返す。
「あんたの目はきれいだな。嘘のない目だ。そいつをバンビーノ
に渡してくれ。それはドン・ジュゼッペから貰った大切なもんな
んだ。ライターは右のポケットに入っている。さあ、火を着けて
くれよ、兄さん。」

act.6

 だが、ビトーの煙草に火を着ける事は出来なかった。突然、複
数のマシンガンの銃撃音が響き渡ったからだ。
「ジョーッ!!」
健が廊下に飛び出すと、斜め向かいのドアの陰にジョーとカルロ
が跪いていた。
「ギャラクターだっ!」
ジョーが怒鳴った。再びマシンガンが乱射され、2人が身を隠し
ているドアが端からバラバラと崩れて行く。何故、真ん中を撃た
ない?健は不審に思った。だが、躊躇してはいられない。
「床に伏せろ!こっちへ来いっ!」
ダッとジョーが身を投げ出して、そのまま横に転がって来た。が
、カルロはそこに留まったままだ。いやジョーが離れると、素早
く立ち上がってドアの向うに姿を消してしまった。
「カルロッ、戻れ!撃たれるぞっ!」
健は思わず後を追おうと廊下へ踏み出したが、今度は逆の方向か
ら撃って来る。
「くそっ!囲まれたようだぜ。」
「いったい、どこから?」
「分からん。急に窓から撃ってきやがったんだ。あいつら、ギャ
ラクーー」

ジョーの声を遮るように乱射が開始された。木製のドアが消し飛
び、漆喰の壁があっと言う間に文字通り蜂の巣のように穴だらけ
になる。2人は室内に転がり込むと、ドアの背後に回り込んで、
両脇の壁にぴたりと身体を付けた。事態を察したビトーもジョー
の横に身を寄せると、大声で訊ねた。
「カルロは?」
「あっちの部屋に戻っちまった。何を考えてやがるんだ?あいつ
?」
「電話はかけたか?」
そう聞いた健の声はいつもと変わらぬ冷静さを保っている。
「ああ、Jに伝言したぜ。撃って来たのはその直後さ。」
ジョーの声にも乱れはない。ビトーの眉がはね上がった。驚いた
度胸だ、2人とも。バンビーノ達はこうした修羅場に慣れている。
この落ち着きはどうだ?だが、カルロはー?
「おい、この縄を解いてくれよ。これじゃどうにもならん。」
健が頷いたのを見て、ジョーはビトーの両手を解放した。ビトー
は上着に手を差し入れると、小型のピストルを引き抜いた。
「こんなベレッタでもないよりはましさ。それよりもカルロをー」
「よせっ。今、出たら蜂の巣にされちまうぜっ!」
廊下に出ようとするビトーをジョーが制した。わずかにドアが動
いただけなのに、それを目掛けてマシンガンの弾が殺到する。毎
度の事ながら、よく撃ちやがるぜ。と、ジョーが顔をしかめた。
たちまちドアはぼろぼろの木っ端となって、もはや遮蔽物として
の用を成しそうもない。
「このままじゃ動きが取れないぜ。健、どうする?」
「あっちの窓からは撃って来ないな。何故だろう?」
反対側にある大きな窓を眺めやりながら、健がビトーに尋ねた。
「あっち側は崖なんだよ。まさかあそこからは来られやしねえー

その言葉が終わらないうちに、件の窓から強烈なライトが差し込
み、窓ガラスが粉々に砕け散った。防音性に優れたガラスだった
らしく、途端に耳慣れない甲高い音が室内に流れ込んで来た。
「畜生っ、あっちからも来やがったぜ!」

絶体絶命ってやつかな?と、健は思った。しかし、まだ切り札が
あるさ。
「親分、ここを動くなよ。」
と、健はビトーにそう言うと、素早くジーンズの右腿に隠された
ポケットから取り出した物をジョーに投げた。
「!?」
片手で受け止めたそれは、スチールブルーに輝く彼のブレスレッ
トだった。戸口の向こうで健が白い歯を見せて笑っている。こい
つめ、とジョーも笑った。
「行くぞっ、ジョー!」
「おうっ!」
2人は崖に面した窓から、躊躇する事なく外へ飛び出した。と、
一瞬、虹色の光芒が閃いた。
「おいっ、何をしやがる?」
驚いたビトーが目を見張った時には、もうそこには2人の姿はな
く、虚空に翻る白と青の大きな猛禽の翼が見えただけだった。そ
うか、やっぱり!その背中にビトーが叫んだ。
「カルロを頼むぜっ!」

眩いライトを照射しながら浮いていた海星に似た機影が、急に高
度を上げ始めた。ジョーのエア・ガンから発射された銛が狙い違
わず下面に突き出したランディング・ギアと思しき部分を捉えて
おり、ワイヤーに引かれて2人は空中にいた。真下に入れば攻撃
は出来ない。
見渡すと、どうやら今までいた建物は、ずっと続く大地の裂け目
のような地溝帯の、切り立った崖の先端に建てられた別荘か何か
のようだ。朝になれば、さぞ雄大な景色が楽しめることだろう。
その景色を見るためにはまず状況を打開し、生き残る事だ。建物
の上にも緑と茶の隊員達が見える。だが、撃てやしないさ、ここ
にぶら下がっている限りは。しかしこのままではどうにもならな
いー。
と、突然、海星が真直ぐに急降下した。あっと思う間もなく、2
人は海星の上空に浮いた。バランスを崩したが、健は怯む事なく
ジョーの身体から身を踊らせて海星の端に降り立った。ジョーも
それに続く。上部中央の円形のキャノピーに乗っていたのはー。
「あの仮面の女だっ!」
ジョーにとってそれは直接的な憎しみと復讐の対象である。ジョ
ーはそう叫ぶや否や、健の前に飛び出した。急降下を続ける中、
キャノピーの中で仮面の口元が笑ったように見えた。
「!!」
それを目にした瞬間、ジョーはハッとした。こいつらはギャラク
ターでも生え抜きの暗殺集団だ。もし自分だったらどうする?宿
敵である科学忍者隊を例え2名でも確実に葬り去るには?ー思い
至る手段は一つしかない。自爆だ!中央部へ突進しようとする健
の首に、振り返りざま肘を引っ掛けると、ジョーはそのまま虚空
に身を踊らせた。
「なっ!?」
健が叫んだ。何でもいい。一刻も早く離脱しなければ!だが、無
理な体勢で跳んだため、マントが大気を捉えて広がらない。空中
で2人は縺れ合う格好になった。バードマントは航空力学的に優
れた構造と特殊な素材から、大きさの割には非常に大きな揚力を
生む。だからアゲインストの風に乗るか大気を捉えてマントが膨
らみ、鳥の翼と同じ角度と厚みを持てば、見た目よりかなり高性
能の滑空飛行能力を持っているのだ。だが、今は落下速度が早や
過ぎる。無風状態での直線飛行距離と沈下高度の比率、即ち滑空
比で言えば、バードマントは1対10以上の値を持つ。いや、大
気と風をうまく捕捉すれば、そして彼らのテクニックがあれば、
さらに比率は上昇する。だが、今のままでは1対2も難しい。1
対2とは100mの高さから飛んで、200mの距離を滑空する事
だ。だが、実際これでは墜落とさほど変わらない数値なのである。
数秒にも満たない出来事だったかも知れない。しかし、ジョーの
目には左腕の中で大きく見開かれた健の目がはっきりと見えた。
諦めるな!と、健の瞳が叫んでいる。ああ、諦めてたまるか・・
・!次に見えた物は目が眩むほどの爆発光だった。そして、凄ま
じい爆風が重なり合った白い羽と青い羽を飲み込んだ。吹き飛ば
され、空中にあってさえ風圧に身体が激しく痛む。だが2人は引
き離され、そしてバードマントがついにその風を捉えた。それは
幸運の風となった。

act.7

 大理石の天板を貼った豪華なダイニングテーブルを横倒しにし
、そこへ身を潜めていたビトーの耳に爆発音が飛び込んで来た。
あっと顔を上げて、窓の外を見れば、空中で海星が大爆発を起こ
していた。凄まじい勢いで飛び散る破片と繰り返し噴き出す炎。
無気味な色の煙りがムクムクと沸き上がる。
「バンビーノっ!!」
2人は海星に飛び移ったはずだ。と、言う事はー??
「バスタッ!おい、冗談じゃないぜ・・・」
ビトーは思わず呪いの言葉を口にし、だがそれに反して彼の手は
素早く十字を切っていた。サンタ・マリア!
やはり爆発に気を取られたのだろう。マシンガンを構えたギャラ
クターの隊員達に部屋の中に踏み込まれた。小型のベレッタが一
丁とは割に合わねえ、とビトーは苦笑した。しかし、撃ち殺され
る事はない。何故ならマスターキーを持っているのは俺だからな。
「ドン・ビトー、出て来なさい!」
ずらりと並んだ隊員達の前に1人の女が出て、そう命令した。ヴ
ェネツィアの四旬節のカルナバルを思わせる仮面を着けた、すら
りとした女だ。彼女達がカッツエ直属の重要なポストにある特殊
コマンドであることを、ビトーはもちろん知っていた。
「ドン・ビトー、大人しくマスターキーを渡すなら、あなたの弟
の命は助けましょう。」
えっ、何だって?ビトーはテーブルの陰から立ち上がった。カル
ロだ!カルロが隊員達に捕まっている。ビトーの姿を認めると、
カルロが叫んだ。
「助けて、兄さん!」
「カルロッ!」
「すまない、兄さん。俺は怖くて、何がなんだか分からなかった
んだー。」
十以上年齢の離れたカルロは子供の頃から気が弱く、何をするに
もビトーに付いて回った。そんな末弟が可愛くて、請われるまま
につい連れて来てしまった事をビトーは後悔していた。またもや
カルロだ!こいつは俺の足枷だ、とんだお荷物だ、いい加減にし
てくれ。だが、肉親だ、最愛の弟だ・・・仕方がない。

「分かった!取り引きに応じよう。まずカルロを放せ!」
ビトーがテーブルの前に出、そう怒鳴るとあっさりとカルロは釈
放された。
「ほう、ずいぶんと俺を信用してるんだな?」
「いや、我々ギャラクターは誰も信用などしない。」
仮面の女が冷たく言い放った。
「例え、肉親だろうとも、ね。」
何だって?と、思う間も無く、傍らへ来たカルロがビトーの仕立
ての良いスーツの左胸に銃口を突き付けた。心持ち顎を上げてビ
トーを見据えるカルロの顔は、かつて見た事のない自信に溢れて
いる。ビトーの口元に微笑が浮かんだ。
「何がおかしいんだい、兄さん?」
「いや、おまえもそんな面が出来るようになったんだな。嬉しい
ぜ、カルロ。」
「うるさいっ!いつまでもガキ扱いしやがって!今度は俺がドン
になるんだ。」
カルロは形の良い唇を歪めるとそう怒鳴り、やおらビトーのスー
ツの胸元に手を突っ込んだ。
「!?」
「シガレット・ケースか?もうここにはないぜ。」
ビトーが笑った。ない?切り札だったはずのシガレット・ケース
がない!?
「ないっ!ここに入っていたはずなんだっ!!」
振り返り、カルロは仮面の女に向かって歩きながら悲痛な叫び声
を上げた。
「嘘じゃない・・・」
「ノッ!」
ビトーが叫ぶ。奴らはカルロをー!だが、あっと悲鳴を上げてよ
ろめいたのは仮面の女だった。どこから飛んで来たのか、輝く白
銀の鳥が女の手から銃を弾き跳ばした。鳥は美しい弧を描いて主
人の手へと戻る。チャッと銀の翼が鳴って、青い指が鳥を掴んだ
。そこに立っていたのは白い影ー。
「ガッチャマン!?生きていたのかっ?」
スモークブルーのバイザーの下、その口元が不敵に笑った。
「忘れたのか?ガッチャマンは不死身だ!」

白い影目掛け、マシンガンが一斉に火を噴いた。と、その刹那、
反対側からもう一つ、青い影が飛び込んで来た。目にも止まらぬ
疾さで飛び回り、攻撃する2つの影に隊員達は完全に翻弄されて
いた。そう広くない室内でマシンガンを乱射したため、影が閃く
たびに仲間が倒れる。
風を切る鋭い音とともに、ビトーの前に2つの影が降り立った。

「ギャラクター、弟を思う兄の心まで利用するとは、相変わらず
やり口が汚いぜ!」
怒りを込めて健が怒鳴った。
「おっと、動くんじゃねえっ!」
ジョーのエア・ガンが仮面の女の動きを封じた。
「科学忍者隊、ではおまえ達のやり口とやらを見せてもらおうか
?」
女はどこまでも冷静だった。足元に踞ったカルロの頭にぴたりと
銃口を着け、さらに静かな声で続けた。
「カルロは我々の仲間だ。だがもう利用価値は一つしかない。取
り引きに応じないなら、今、この場で撃ち殺しても構わない。さ
あ、どうする?」
「この期に及んで、マスターキーを手に入れ、逃げおおせられる
とでも思っているのか?」
「ふふ、はったりはやめろ、ガッチャマン。失敗なら失敗で構わ
ないさ。ならばカルロは道連れだ。おまえ達にこの男が死ぬ様を
見る気があるかどうかだ。」
その言葉に健はぎゅっと唇を噛んだ。くそっ、どこまで汚い奴ら
なんだ!こいつらには肉親も友人もいないのか?何故、ここまで
冷酷になれるんだ?だが、カルロを見殺しには出来ない。例え任
務のためとは言え・・・。健は心を決めた。
「シガレット・ケースはここにあるぞ!カルロと交換だ。ジョー
、銃を下ろせ。」
一瞬、躊躇したものの、ジョーはリーダーの言葉に従った。個人
的な復讐心を克服し、科学忍者隊のメンバーとしてー。エア・ガ
ンをホルスターに収めると、
「さあ、カルロ!おまえは騙されてるんだ。こっちへ来い!」
と、怒鳴った。カルロが振り返った。その両手には床から拾い上
げたマシンガンが握られている。その瞬間、健が抜く手も見せず
ブーメランを投げた。ブーメランはマシンガンの銃身を捉え、銃
口が跳ね上がった。にも関わらず、まるで玩具のような軽い音を
立ててマシンガンが天井を撃つ。しかし、トリガーに掛かったそ
の指にもう生命は無く、カルロはゆっくりと仰向けに倒れた。
「馬鹿なっ!?」
思わず叫んで振り返った健の目に映ったのは、ベレッタの銃口か
ら立ち上る一筋の硝煙だった。
「ビトー・・・。」
「裏切り者には死を。それが掟だ。」
静かに、だがきっぱりとビトーが言った。
「その通りだ、ビトー!」
だが、仮面の女が撃つよりも一瞬早く、その右手に白い羽根手裏
剣が飛んだ。深々と刺さったジョーの一撃に狙いを逸らされた女
は、舌打ちすると素早く身を翻した。
「逃がすかっ!」
ジョーが後を追おうと飛び出す。しかし、戸口まで辿り着いた所
で女は無数の銃弾を受け、悲鳴とともに崩折れた。と、サブ・マ
シンガンを構えたまま、部屋に入って来たのは、黒いスーツに黒
いサングラス姿の屈強な男達だった。
「!?」ー咄嗟に身構えた健とジョーに、
「ご苦労でした、科学忍者隊。」
と、リーダーと思しき黒服が落ち着いた声でそう言った。
「到着が遅れて申し訳ない。後は我々、アメリス中央情報局が引
き継ぎます。これは旧S連邦とアメリス国間の高度に政治的な問
題ですから。」 

act.8

 「ちょっと待てよ!どういう事だ、健?」
黒服に掴み掛からんばかりのジョーを抑えて、健が無表情に言っ
た。
「南部博士の指示がなくては、あなた方にドン・ビトーをお渡し
する事は出来ません。」
黒服は頷くと、パチンと指を鳴らした。ちょっと大掛かりな感じ
の携帯電話に耳を当てて待機していた黒服がそれを差し出す。
「どうぞ。南部博士に繋がっています。」
「博士、南部博士、G1号です。宝物は手に入れました。持ち主
と宝物を中央情報局の方に渡してもいいんですか?」
その横顔をジョーがじっと見つめている。
「そうですか、ラジャー。ええ、分かりました。はい。ありがと
うございます、博士。」
一瞬、健が鼻筋に皺を寄せた。大方そんな事だろうと思ったぜ、
馬鹿野郎!とでも言いたげな表情だったが、それに気付いたのは
ジョーだけだったろう。黒服に真直ぐ向き直った時には、もう科
学忍者隊のリーダーの冷静な顔に戻っていた。
「南部博士から命令がありました。ドン・ビトーとこれをー」
滑らかな光沢の薄いシガレット・ケースを差し出しながら、健は
言葉を続けた。
「お引き渡しします。後の事はどうぞよろしく。」
「待ってくれよ。」
ビトーがそれを遮った。
「こいつはバンビーノに渡してくれ、と言ったはずだぜ。こちら
さんが欲しいのはこれだけだからな。」
蓋を開け、その裏張りの下から記念硬貨ほどの小さなディスクを
取り出して、それを黒服に渡す。無言のまま、黒服がそれをノー
ト型のPCにセットするのを横目で見ながら、ビトーはフンと鼻で
笑った。そして、ケースをジョーの濃紺のグローブに握らせると
、バイザーに頬を寄せ、囁いた。
「チャオ、バンビーノ。達者でな。後で蓋に書かれた文字を読ん
でくれよな。」
「ミ・ディスピアーチェ、気の毒したな、カルロ・・・」
だが、ただ頷いただけでビトーはそれに対して何も言わなかった。
黙ってジョーの肩を叩くと、ついと離れ、今度は健に囁いた。
「チャオ、兄さん。バンビーノを頼んだぜ。」
「アリヴェデルチ、親分。」
と、短く答えた健は握手するふりを装って、ビトーの手の中に小
さな発信機を渡した。ビトーの片眉が上がった。健がニヤッと笑
って頷く。高度に政治的か何か知らないが、博士の指示なんでね
、と。
「ドン・ビトー、マスターキーのファイルを書き換えましたね?」
PCと格闘していた黒服が腹立たし気にそう怒鳴った。ビトーが平
然と応酬する。
「当たり前さ!」
「新しいパスワードをどうぞ。」
「そいつは俺の切り札だ。取り引きになら、応じてもいいぜ。」
黒服は溜め息をつき、それから慇懃に頭を下げた。任務には忠実
な男らしい。
「一緒にお越し下さい、ドン・ビトー。条件は本部で伺います。」
「まず、哀れな俺の弟を丁寧に運んでくれよな。」
そして、出て行きざまにジョーを一瞥すると、早口にこう言い残
して微笑んだ。
「Morte al Garactore !Isola anela !」

どこまでも続く真直ぐな道を2人は歩いていた。風が吹き、時折、
2人の髪を掻き回して行く。
「なあ、連絡して竜に迎えに来てもらおうぜ。」
「いやだね!」
健の提案はただちに却下された。ジョーの機嫌は最低だった。
「何が高度に政治的な問題だっ!それじゃあ、俺達の任務は何だ
ったって言うんだ?」
「ま、ルアーだよな。簡単に言えば。」
噛んでふくめるように健が何度目かの答えを繰り返す。
「電話線で全部が筒抜けだった訳じゃないか!あの、くそ忌々し
い黒服の奴らに!」
「だから、そういう作戦だったんだろ?ブレスレットの交信じゃ
、中央情報局が俺達をトレース出来ないじゃないか?それに博士
だって俺達を信用してるからこそ、こうした任務をー」
「なら最初っからそう言えばいいじゃねえか。俺達まで引っ掛け
やがって!健、結局は黒服達も兵器としてスーツケースを活かし
たいんだろ?ギャラクターとおんなじだぜ。」
ジョーの機嫌は直りそうもない。言うだけ無駄か、と健は口をつ
ぐんだ。だがもう歩くのはうんざりだ。そうだ、もしかしたら話
題を変えれば・・・。
「なあ、ジョー。」
「なんだよ?」
「最後に親分は何て言ったんだ?早口なんで俺には聞き取れなか
ったが。」
「Morte al Garactore , Isola anela . 」
「だからそれはどういう意味なんだよ?」
ジョーは立ち止まって、健の顔を真直ぐに見つめた。
「健、マフィアのスペルを知ってるか?」
「M-A-F-I-A、だろ?」
「じゃ、この言葉の頭文字をつなげると?」
「M-A-G-I-A、マフィアと似てるな。」
ジョーはゆっくりと微笑むと、やがて声をたてて笑い出した。
「ああ、ただそれだけさ。大した親分だぜ、ドン・ビトーは!ざ
まあみやがれ、だ。ギャラクターめ!健、親分はきっと俺達の大
きな力になるぜ。」
「へえ、博士と同じ事を言うんだな、ジョー。そう言われて、親
分に発信機を渡したんだぜ。」
「そうか?そいつはいいや。さすがは博士だよな、健?」
よく分からないが、とにかく機嫌はだいぶ良くなったみたいだ。
これで歩かなくて済むかも知れない、と、健も思わず笑顔になっ
た。
「思わぬところで親父さんの形見が手に入って良かったな。」
「まあな。」
「俺もいつかおまえが『とっとけ』って言ったあの飛行帽、貰っ
ておいて良かった、と思うよ。」
「そうか?うん、あれはおまえに似合ってたもんな、健。」
遥か彼方を見つめる、ジョーの横顔はとても穏やかだった。お、
もう少しかな?
「で、あのシガレット・ケースには何て書いてあったんだ?」
途端にジョーはむっつりと顔をしかめると、足早に歩き出しなが
ら、吐き捨てるように言った。
「知るもんか!」
やれやれだ。そのうち歩くのにも飽きて、機嫌も直ることだろう
。いいさ、それまでとことん付き合ってやるよ・・・。眩しい空
を見上げて、健もまた歩き始めた。

さて、件のシガレット・ケースの蓋にはこう刻まれていた。
「最愛の息子に守護聖人の加護があらんことをー」
ドン・ジュゼッペがジョーの誕生日か何かの記念に作らせた物な
のだろう。そして、ビトーが選んだパスワードとは、ジョージに
因んだ守護聖人=サン・ジョルジョだった。だが、これを知る者
はビトーとジョー以外にはいない。だから80個のスーツケース
が脅威となる事はないだろう。きっと。
 
(余談ながら、MAFIAには13世紀にフランス領シチリア島で圧
政に苦しめられた島民の「Morte alla Francia , Italia ane
la」=「フランスに死を、これがイタリアの叫び」という言葉の
頭文字、という謂れがあることと、Isola=島ということを付け
加えておく。)
 
−THE ENDー
Different stories for different fans.
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