月光

                       by Kiwi



灯りを落とした部屋の中に、明るい月の光が差し込んでいる。
『ああ・・今晩は満月だった』
健はベッドの中でぼんやりと考えた。気の無さそうな唇を、自分の上に居る男に噛
みつかれて、健は「うっ」と小さく呻いた。
「何を考えてた?」
問われて、「何も」と首を振る。が、男は「知っているぞ」と言わんばかりに、健の首
筋に唇を這わす。
「本当だってば」
「どうだかな・・・」
男は独特のアクセントで話す。余り抑揚の無いそれは、反対に彼の気持ちの激し
さを表していて、健は少し恐れたように彼の首に手を廻す。
「何も」と口を開こうとした途端、右の乳首を噛まれて、健の身体が意思とは関係
なくビクッと震えた。
「何も考えていないなら、黙っていろ」
言葉と共に口付けをされて、健は頷いた。其の侭男の唇が締まった健の腹部から
股間へと愛撫の場所を移し、健は身体の奥から湧いてくる昂揚感を味わった。丹
念に繰り返す愛撫の度に男の長い黒髪が、健の内股の敏感な部分を刺激して、
思わず漏れる吐息がほの暗い部屋に響いた。
切れ長の黒い瞳が健の反応を確かめるように彼を見上げ、健の表情にウットリと
したように又閉じられた。やがて限界にまで高められた健の物は、男の暖かな口
の中に若い命を迸らせ、一瞬力が抜けた健の身体を彼はうつ伏せにした。其の侭
繊細な指で健の双丘を押し開くと舌をその奥へと滑り込ませた。息が弾んで、健
はその快感に眉を寄せて、声を上げた。ゆっくりとその部分を湿らせると、薔薇色
の花芯のようなそこは誘うように収縮を繰り返す。それに答えるように男は自分の
物を、舌の代わりに差し入れた。
健の少し開いた口元から、最初苦痛を訴えるような小さな呻きが上がって、直ぐに
それは快感の溜息に変わった。
男はその細くしなやかな腕で、健の細い腰を支えて更に深く侵入した。顔を上げて
その快感に耐える健の白い顔を、ココア色の髪の毛が縁取り、彼を年齢以上に幼
く見せる。男の黒い瞳がそうした健の様子を満足げに見つめ、彼は健の中に自ら
を放った。

枕に顔を押し当てて、瞳を閉じている健に男は顔を近づけると、もう一度口付け
た。彼の背中までの長い髪が、その動作で健の頬を撫でた。
「くすぐったい」
子供のように笑うと、健は身を起こした。身体の奥には疼きが未だ残っているが、
気怠さが今は心地良い。
「誰の事を考えているか、分かっているぞ」
男の言葉に健は首を傾げる。
「誰の事も考えていないけど・・」
「・・ジョーが欲しいんじゃないのか?邪魔なら島田という男を殺してやっても良い。
健がそれを望むなら、今直ぐにでも。俺にはそれは簡単だ。あいつが居なくなれ
ば、ジョーはお前の所に帰って来るぞ」
「ジョーは欲しいけど、それは駄目だ。もしジョーを傷つけたら、悲しませたら、俺は
お前でも許さない」
「・・・俺はお前の為だけに此処に居る。お前が望むことだけを叶えて、お前だけを
守る為に居る。だがお前は本当に良いのか?」
「ずっと側に居てくれるんだろう?」
「それがお前の望みなら」
頷く男の長い黒髪を一房持ち上げて、健はそれに口付けた。
「俺の望みはそれだけだ。俺は嫌な奴に進んで抱かれたりはしない。今俺が欲し
いのはお前の腕だけだ」
目を閉じる健の首筋に再び唇を這わせる。
『ジョーがどんな顔をして抱かれるのか、俺は知らない。俺がどんな風に抱かれる
のか、ジョーは知らない』
月光が照らし出す中で、健の瞳が蒼く煌いた。
『それでも俺はジョーを愛している。だから一番の望みは・・・』
吐息に隠れて呟いた健の声は、誰にも届かなかった。彼は瞳を閉じて男の股間に
顔を埋めた。

The End


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