Happy Birthday

by Kiwi

島田のマンションの駐車場に車を停めたジョーは、自分の横のスペースを横目で見た。そこ
に有るはずの車が無い事で、住人が今不在だと言う事が分かる。
「ちぇ、島田の奴居ないのか」
舌打ちをして彼は、車から降りた。少し冷え込んできた晩秋の風が誰も居ない地下の駐車場に
吹き込んで、ジョーの長い髪を嬲った。
「まあ、いいや。鍵は有るし、そのうち帰ってくるだろう」
独り言を言いながらエレベーターに乗り込み、最上階の島田の部屋に向かう。勝手知ったる他
人の家だ。と言うより最近は別荘に居るのと島田の家に居るのと、さてどちらが多かったかな、
とジョーは思った。ポケットから取り出した合鍵で扉を開けて、彼は島田の部屋に入った。
部屋をグルリと見回すと、ジョーは自分の気に入っているソファに身を横たえた。このところ
訓練や様々な知識を詰め込まれるのに忙しくて、ジョーは島田の部屋に3日ほど来て居なかっ
た。明日は久しぶりにオフなので、疲れた身体を引き摺って此処までやって来たのだ。
「ちぇ、何もこんな日に仕事でなくても良いのにな」
それは何時も連絡を入れもしないで、勝手にやって来る自分が悪いと言う考えはジョーには無
い。今日は島田と居たい、それだけの理由で彼は何時もやって来る。
「今日は特別なのに・・」
誰も居ない部屋に呟いて、ジョーは立ち上がった。
「風呂でも入って、あいつの秘蔵のブランデーでも飲んでやる」
彼は態と足音も荒く、バスルームに入った。着ている物を何時ものように脱ぎ捨てて、ジョー
はそれを洗濯物のバスケットに入れようとして、その手を止めた。そこには島田が着替えたで
あろうシャツと、下着が入れたままになっていた。その様子にジョーは、島田が何日か帰って
来ていない事に気付く。自分の服をそこに入れるのを止めて、ジョーはバスケットを思い切り
蹴飛ばした。
「何日か留守にする時は、洗濯して行けよな。俺の服を一緒にしていたら臭くなるじゃねえ
か」
これは半分島田が居ない事への八つ当たりなのだが、意外に綺麗好きなジョーは自分が脱いだ
服共々、島田の衣類も隣にある洗濯機の中に詰め込んで、洗剤と勿論柔軟剤も放り込んで、ス
ィッチを入れた。
シャワーブースではなく、今日はバスタブに熱い湯を張って、その中にミントのバスバブルを
投げ入れる。バスタブの中一杯に広がる細かい泡をみながら、ふとそれを掌で掬い上げた。
「今日は特別なのに・・」もう一度ジョーは小さく言った。

ゆっくり使ったバスルームから出る頃、洗濯機がピーという音で洗濯終了を教えてくれた。リ
ネンが入った棚からバスタオルを引っ張り出して、身体を乱暴に拭うと彼はそれをバスケット
に放って、裸のまま洗濯物をその隣の乾燥機に放り込んだ。本当は太陽光で乾かすのが好きだ
が、島田のマンションでそれは不可能だ。タイマーをセットして、バスルームを後にする。が、
忘れ物をした様に戻って来た。
水色のバスローブを身に纏う。
「裸でウロウロするとあいつが五月蝿い」

島田の秘蔵のブランデーでも飲んで遣ろうと、キャビネットに歩み寄った彼はそこに貼り付け
てある、見慣れた文字に目を止めた。
「ジョーへ。25日〜28日まで博士の学会に同行します。この間は此処に来ても駄目ですよ。
早く帰って訓練に励みなさい。たまには女の所にも行かずに、しっかり訓練して、ついでに皆
との時間も作りなさい」
「ふん、分かったような口を利くなよ」
ジョーは島田の置手紙を指で弾いて無視すると、キャビネットからバーボンの壜を出した。
『今晩はバーボンの方が良い』
厚手のグラスに氷を一つ。バーボンを注いで、口元に運ぶ。熱い刺激的な香りが口の中に広が
って、彼は体温が上昇するのを感じた。
ベッドに歩み寄ると腰を下ろして、サイドボードにグラスを置いた。膝を抱えて、額を膝頭に
乗せる。
「明日じゃなきゃ帰って来ないのか」
其の侭身体をベッドに横たえると目を閉じる。島田のベッドは煙草の香りと、微かに島田の匂
いがする。その香りを嗅いでいると島田が側に居るようだ。ジョーは自分の中で何かが頭を擡
げるのを感じた。
『今晩は島田に抱かれたかった』
口に出しては決して言えないけれど、ジョーは心からそう思った。今日は自分の誕生日だ。ケ
ーキやご馳走、プレゼントで祝うほど子供じゃない。唯島田とこうなってから初めての誕生日
だから・・何か欲しい訳ではなく、祝って欲しい訳ではなく。唯島田と一緒に過ごしたかった。
「ちぇ」
又舌打ちをすると、ジョーはサイドボードに置いてあったグラスの中身を、一気に飲み干した。

何時の間にか眠っていたジョーは、誰かの息遣いを身近に感じた。
「誰だ」と跳ね起きようとする前に、ベッドに押さえつけられた。
「またそんな無防備な格好で、寝てましたね」
笑いを含んだ島田の声に彼は一気に覚醒した。
「島田なんでお前帰って来たんだ」
「此処は俺の家ですが」
何を言ってるんだというような島田の頭を、ジョーは平手で殴りつけた。
「じゃなくて、お前明日帰ってくるんだろ」
「・・ああ、あの手紙ですか?」
漸く意味が分かったと言う様に頷いて、島田はジョーの隣に腰を下ろした。
「その予定だったんですが、学会が早めに終わって、一日帰りが早くなったんです」
「そうか・・」
島田の顔を見て嬉しいのを、ジョーは見せない。今晩は一緒に過ごしたい。だけど島田にそれ
を気付かせるのは嫌だ。
「あんた飲みましたね」
「俺が飲むのを分かってて、あそこに手紙を貼り付けたんだろ」
「全く予想通りの行動でしたよ」
肩を竦めてキャビネットの上の時計を見る。未だ午後11時半。
『取敢えず俺は、誕生日を島田と過ごせたってわけだ』

「そうそうこれを・・」
島田がベッドの上に小さな包みを放り投げた。
怪訝な顔をするジョーに、島田は笑った。
「今日は誕生日でしょう。柄にも無いんですけど、今回は特別に」
と、照れた様にそっぽを向いて言う。
包みを開けるとアクアマリンのピアスが出てきた。
「女じゃないぜ」と言うと、「分かってますよ」と島田が答える。
「あんたの瞳の色だったから、つい買ってしまいました。男相手に変なんですけどね」
「・・変だよな」
言いながらジョーは、ピアスを目の前に翳してみた。
『変だけど、気に入ったから良いや』
「でも俺、穴空けてないぜ」
「俺が空けてあげますよ。でもその前に」
言葉の最後はジョーの耳元で囁くと、島田の息で彼の身体が震える。耳を優しく噛みながら、
手の方は段々と下降して、乳首を摘む。
「・・っ」と洩れる声をジョーは両手で押さえた。その手を島田は口から外す。
「今日は特別って事にしませんか」
「今日だけだぜ」
頷く彼の唇を塞いで、島田は右の手をジョーの股間に伸ばす。噛み締めた呻き声を上げて、ジ
ョーの身体が跳ね上がる。
「未だですよ。未だ夜は長い。もっと見せて下さい」
ジョーの締まった内腿を舌で愛撫しながら、彼の手はジョーの秘所を捜し求める。到達したそ
こに、指を一本差し入れながら、舌は上へと移動して、ジョーの物を舐めた。その途端最初抵
抗していた様に、彼の指を押し戻そうとしていたジョーの秘所が、島田の長い指を全て飲み込
んだ。眉根に皺を寄せて耐えているジョーに、島田はもう一度言う。
「今日は特別。声を聞かせてくれませんか」
自制心を失うのが怖いように、頭を振るジョーに島田は呆れて、秘所に入れている指をもう一
本増やした。
「あぁっ」
堪えきれずに上がった小さな悲鳴に、彼は満足そうに言った。
「いい声です」
頬を染めて、顔を背けるジョーに口付けをしながら、島田は自分の物を入れた。

「いて!」
『未だ冷やすのが足りなかったか』
ジョーが上げた悲鳴に島田は思った。耳朶を挟んで丁度ホッチキスの要領で空けるピアスの機
械は、同時にピアスも入れてくれる。
「簡単だし、冷やせば痛みもないし、血も出ないらしいです」
と島田は言ったが、所詮自分も未経験。そうは上手くいかない。両耳を開けた後には、痛そう
に顔を顰めたジョーと、血に染まったタオルが一枚。
「痛いじゃないか」
怒るジョーに、島田は「よく似合いますよ」とふざけた口調で応じた。
ムスッしているジョーの耳朶を舌で愛撫する。
「大丈夫俺が消毒して、治して上げますから」
「お前最近いやらしいぞ。年取った所為か?」
「それはあんたの所為ですよ」
尚も耳を愛撫しながら答える言葉にジョーは又顔を赤くした。


The End


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