I'm sweet on you

by Kiwi


1

南部のオフィスで久し振りに見る健とジョーは、それぞれの訓練の成果で以前より逞しく
見えた。未だ少年特有の、縦の高さに横が着いていかない風では有ったが、それでも元々
付いていた無駄の無い筋肉に、更に磨きが掛かったような感じを島田は受けた。
今日ベースから戻ったばかりの二人は、南部に訓練についての報告をしにやって来た。そ
の場で二週間の休暇を申し渡された二人と共に、島田は南部のオフィスを後にした。
「島田さん、ちょっといいですか?」
部屋を出るなり健に呼び止められた島田は、歩みを止めた。
「俺は先に帰るぜ」
南部のオフィスで言葉少なだったジョーが、背中越しに手を振って出て行こうとするのに、
健は声を掛けた。
「何だよ、久し振りなんだから、一緒に帰ろうぜ」
「久し振りなんだから、尚更だろう。野暮は言うなよ」
「何だデートか?」
問われた言葉に意味有りげに笑って、ジョーは肩を竦めた。
「まあ、そんなところだ」
出て行くジョーを見送って、健は傍に居心地が悪そうに立っている島田に向き直った。
「島田さん、今時間有りますか?」
「ええ、少しなら」
頷く島田を促して、健は職員専用のティルームへ誘った。
運ばれてきたコーヒーの湯気を通して、健の青い瞳がきらりと光って、島田は居心地の悪
さが更に増した。こういう時の健は油断が成らない。
「島田さん、ジョー変ですよね」
「そうですか?俺にはそうは思えませんでしたが・・」
薄々感づいていても、健はこういう時単刀直入に聞かずに問いかける。
「変ですよ。気が付かないわけじゃないですよね。ジョーはあなたの顔を一度も見ません
でしたよ」
「今日あなたとジョーは博士に用事が有って来たのでしょう?俺にじゃない。俺の方を見
なくても、何ら不思議なことは無いと思いますが」
「島田さん、惚けてます?それとも俺がそんなに鈍いと思っているんですか?」
僅かに変わった健の表情と口調は、彼を幼い時から知っている島田でも、ドキッとする。
彼は改めて、健も又その優しげな容姿に似合わぬ戦士なのだと、痛感させられた。
「ジョーはね、島田さんのことが好きなんですよ。あいつ、自分は気づいていないみたい
だけれど、昔からね。あんまり自分から恋愛感情を持ったことが無いから、多分本人は気
づいてないと思いますけどね」
「しかし、俺達は・・」
「何です?男同士だからですか?」
そう言いながら健はその端正な口元を少しだけ歪めた。
「人間そう簡単に割り切れれば、良いんですけどね」
意味有りげな健の言葉に島田は考え込んだ。
あの夜自分はジョーを抱いた。自分の目の前に佇んだ裸のジョーを、自分は美しいと思っ
た。愛しいと思った。自分の腕の中で、未だ快感よりも苦痛のほうが勝っているのを、悲
鳴を上げるでもなく涙を流すでもなしに、唇を噛み締めて耐えていたジョーの表情は、彼
の性格やその生き様そのもののようで、島田は保護欲を駆り立てられた。この腕の中の存
在を守ってやりたいというそれは、男に対して感じるべきものではないかもしれない。そ
れをジョーに言おうものなら、きっと彼は「馬鹿にするなよ」と一笑にふして、自分の腕
の中から出て行ってしまうだろう。だが、未だ幼さが残っている彼の身体や、魂がこれか
ら歩むであろう修羅の道を思うと、島田は堪らなくなる。「止めろ」と言えるわけでも、
自分が身を挺して守ってやれるわけでもない。ジョーにしても、目の前の健にしても、何
と過酷な運命を背負ってしまったのだろう。
「俺も帰ります」
考え込んでいた島田は健の声に我に返った。慌てて自分も立ち上がろうとする彼に、健は
笑いかけた。
「未だ時間が有るなら、それを飲んでしまったらどうですか?」と、島田が手を付けずに
いたコーヒーを指差した。
「じっくり考えるにはここは良いですよ。静かだし、誰も寄って来ませんしね。俺も時々
ここで考え事をするんです」
「奢ってくださいね」と笑いながら、健は出て行った。


2

島田の家に泊まった翌日、彼の帰りを待っていたジョーは鍵の開く音に読んでいた雑誌か
ら顔を上げた。立ち上がって戸口に行こうとした彼の歩みを止めたのは、島田と話す女性
の声を捉えたからだ。『しまった』と思う気持ちを、仏頂面で覆い隠す。
「ジョー・・」
彼を見つけた島田の意外そうな顔を、ジョーは仏頂面で見返した。
「今帰るとこだ。昨日世話になったからメシを作っといた。彼女と食べろよ。たまには身
体に良い物を食わねえと、マーサに叱られるぜ」
不思議そうに自分を見ている女性に、それでも笑いかけてジョーは部屋を出た。
「ジョー」
ジョーを追って部屋を出た島田は、閉まろうとするエレベーターの扉を手で開けた。ジョー
が扉を閉めようとするのを手で押しもどして、ジョーの顔を覗き込んだ島田は凍りついた。
彼の薄い水色の瞳から溢れ出した透明の雫が、秀でた頬を伝って顎から首筋にまで流れて
行った。一瞬緩んだ島田の手をジョーが扉から放して、扉は音も無く閉まった。

部屋に戻った島田は、異論を唱える女性を部屋から追い出した。「何よ!ゲイだったの!」
という捨て台詞に「悪かったな!」と怒鳴り返す。静かになった部屋で島田はダイニング
の椅子に腰を下ろした。
『あいつが泣いた?』
島田は長い間、ジョーの涙を見たことが無い。引き取られて間もない頃は、時折涙を流し
ているのを見かけたことも有るが、そんな時でも彼は島田や健に気が付くと、グイッと涙
を手の甲で拭って、何でも無いかのようにぶっきらぼうに振舞った。子供の頃から怪我を
しても、治療で泣いたことも無い。彼はそれだけ自分の弱みを見せるのを嫌っているのだ。
それを自分は泣かせてしまった。だが、何故ジョーは泣いたのだ?ジョーも自分もゲイで
はない。ジョーだって女と付き合うだろう。勿論ジョーが未だ此処にいると知っていたら、
島田とて女性を連れては来なかったが。一体何に彼は傷ついたのだ?自分の前で涙を見せ
るほどに・・

『分かっている、それは自分の我侭だ』
屋敷までタクシーを走らせながら、ジョーは窓からクリスマス一色の町並みを見つめた。
島田が自分を欲しいと言ったわけではない。アランに応えてやらなかった自分の罪の意識
から逃れるように、アランの口にした島田への思いを試してみただけだ。島田が女を抱く
のを嫌だとは思わない。自分だってきっと女のほうが好きだ。だけど何故、今日、あの部
屋でなのだ。自分の思うほどに、島田は昨日の事を気に掛けてはいないのだ。それが空し
くて、そう思ってしまう自分が情けなくて・・もう二度と島田に近づくのは止めよう。こ
んな弱い自分は要らない。ジョーは唇を噛み締めた。

「一成、あなたジョーに何をしたの?」
電話口での非難めいた口調のマーサに、島田は苦りきった声を返した。
「いきなり何ですか?」
昨晩眠れなくてボーッとしている頭に、マーサの声は響く。
「ジョーよ。あの子昨日遅くに帰ってきたと思ったら、部屋に閉じこもったままで。出て
来たと思ったら、今日からベースに行くって言うのよ。未だ怪我も治っていないのに。あ
なたジョーと何か有ったの?」
何かは有りすぎるほど有ったのだが、そんな事を話したら、ジョー贔屓のマーサには殺さ
れかねない。
「それで博士は何て言っているんですか?」
「博士はジョーがそう言うならって、本当は怪我が治ってからの方が良いって、大分説得
していたんだけど」
「・・ジョーと代わってくれませんか?」
マーサから受話器を押し付けられたジョーは、仕方なく電話に出た。
「・・メシ喰ったか?」
「そんな事より」
「結構旨いだろ。マーサが時々教えてくれたんだ。健は意外と不器用で、よく指を切るん
で諦めたけど、俺は筋が良いって褒めてくれたんだぜ」
「ああ、メシは旨かったですが、あんた本当に今日からベースに行くつもりなんですか?」
「別に用事もないし、退屈だから。それに来週も今日もそう変わらないしな」
「もう邪魔しないから、彼女と仲良くしろよ」そう言って一方的に電話を切られてしまっ
て、それから三ヶ月島田はジョーと会っていなかった。


3

やはりどう考えても自分が悪いのだ。島田がこの三ヶ月の間何度も自問自答してきた思い
が、健の言葉に又甦った。
『愛想を付かされたかな?』
そう思うと何だか寂しい。幼い頃から見てきたジョーは島田にとって、南部とは又違った
意味で大切な存在だった。雇い主である南部を守るのは彼の仕事であり、義務である。し
かし島田はジョーを守りたいという気持ちの反面、傷付いた彼の姿に惹かれる自分が居る
ことに気が付いた。あの夜彼の瞳から溢れた涙の意味を、自分は未だ理解しては居ない。
だが、繰り返し思い浮かべるそんなジョーの姿がたまらなく自分を誘うのを、島田は自覚
している。傷付かないようにしてやるのではなく、傷付いて尚美しい姿や魂に見惚れて居
たくなる。自分は何処か歪んでいるのだろうか?と島田は思う。大事な存在が傷付くこと
を望む自分は非道かも知れない。だが、それでも手に入れる喜びの方が大きい。そして他
者がジョーを傷つけることを、島田は決して許さないであろう。
「さてどうやってご機嫌を直してもらおうか」
口に出して、島田は自分の言葉に驚いた。今まで誰かの機嫌を取ろうとしたことなど無い。
南部にしても、もし彼の機嫌が悪ければ、放って置くまでだ。どうやら本気で惚れている
らしい。これも意外だ。今まで本気になった相手が居ただろうか?
「やれやれ・・初めて本気になった相手が、自分より16も年下で、しかも男ときてる。
俺も焼きが回ったな」
溜息をついて、島田はレシートを手に立ち上がった。

結局それから何も出来ないまま3日が過ぎて、漸く島田は南部の屋敷にやって来た。が、
思い切り自分に対して不信感丸出しのマーサは、ジョーの居所について教えてくれなかっ
たので、仕方無しに島田は飛行訓練に出掛ける健を捕まえた。何処と無く含みが有りそう
な健に問い質すのは、出来れば避けたかったのだが、仕方が無い。
「自分から行動する気になりましたか?」
思ったとおり青い瞳を意地悪そうに光らせて問いかける健に、島田は苦り切った顔を向け
た。
「そう苛めないで、教えてくれませんか?」
下手にでた島田に、尚も健は追い討ちを掛ける。
「俺やマーサの前では普通にしてますけど、ジョーはかなり荒れてますよ。マーサが愚痴っ
てました。ジョーは何時も何処かに泊まりに行っているって」
「それは前と変わらないでしょう」
「違いますよ。ベースに行くまでは、正確にはあなたの部屋に泊まりに行くまでは、ジョー
は例え夜抜け出してデートに行っても、朝までにはちゃんと帰ってきていました。マーサ
に心配を掛けたくなかったんでしょうね」
『だから尚のことマーサが自分に対して不信感丸出しなのか』
『何てこった・・ジョーの機嫌が直らないだけじゃなく、マーサにはジョーの外泊の原因
は自分に有ると思われ、健にはチクチクと苛められ、まるで針の筵だ』
「ジョー、車を買うお金を貯めるって言っていたけど、ジョー目当てに毎日来る常連も居
るみたいだし、その内車をプレゼントして貰ったりしてね」
未だ苛め足り無いのか、健は面白そうに島田に告げた。
「でも、このままだとジョーが可哀想だから」と、それでもジョーのバイト先を教えてく
れた健は、何処まで自分とジョーの関係に気付いているのだろう?「あなたの為じゃなく、
ジョーの為に」言いながら、健はジョーがバイトしているレストランのアドレスを書いた
紙を、渡してくれた。

レストランのお仕着せの黒いベストとスラックスが、ジョーに良く似合っている。島田は
凡そ接客業に向いているとは思っていなかったジョーの、意外に洗練されたマナーに驚い
た。席に案内された自分に気付いているだろうに、知らない振りをして他のテーブルにオー
ダーを運んでいるジョーは、営業用なのか彼には珍しくにこやかな笑みを浮かべている。
そんな彼の様子を横目で窺いながら、島田はオーダーした高価なワインを苦り切った表情
で飲み干しては、グラスに注いでいる。運ばれて来たコース料理に手を付けるでもなく、
唯アルコールだけを摂取している彼の様子にジョーが少し気がかりな視線を投げた。
『あの馬鹿。メシも喰わないで、あんなにワインばかり飲んだら、酔いが回るぞ』
何か言ってやろうかとも思ったが、ふと自分がそんな心配をする必要も無いことに思い当
たって、ジョーは又そっぽを向いた。
『誰か他の奴に心配して貰えば良い・・』
本来酒には強い島田だ。ボトルを2,3本空けても、大丈夫だろう。

レストランの従業員専用出口から出て来たジョーは、いきなり左腕を暗がりから掴まれて
驚いた。が、それも一瞬の事で、訓練通り彼は腕を引っ張る相手の力を利用して、その人
物の手首を取って投げようとした。が、相手に反対に腕を押さえ込まれて捻り上げられた。
息が詰まりそうに成るのを堪えて、彼は目を凝らして相手を見極めようとした。
そこに見知った人物を見つけてジョーは溜めていた息を漏らした。
「島田、何の真似だ!」
ジョーの言葉に耳を貸さずに、いきなり島田は唇を合わせた。鼻を突くアルコールの匂い
に、訳知らずジョーは嫌悪感を抱いて抗った。無理やり合わせた唇を噛まれて、島田は口
付けを解いた。噛み切られた下唇から流れ出した血を、彼は舌で舐め取った。
「そんなに俺が嫌いですか?」
島田が尋ねた言葉に、ジョーは顔を背けて答えた。
「・・嫌いだ。お前なんか、大嫌いだ!」
長い前髪に隠されたジョーの表情は島田には窺えない。そしてジョーも又島田の黒い瞳の
底に光る剣呑な光に気が付かなかった。もう一度島田は強引に唇を合わせた。血の香りが
する口付けが自制心を妨げそうで、ジョーは間近に有る島田の顔を殴りつけようとした。
が、その為に上げた右腕は簡単に受け止められて押さえつけられた。続いて上げた左腕も
同じ様に押さえつけられて、レストランの壁にジョーの背中は押し付けられた。
長い口付けに思考が、霞が掛かったように一旦停止する。それを感じ取ったように、島田
はジョーの鳩尾にパンチを入れた。全く予期していなかった攻撃に、ジョーはゆっくりと
崩れ落ちた。


4

目を開けた時に真っ先に見つけたのは、自分が寝かされているベッドの端に腰掛けた島田
の背中だった。背中の右側、丁度肺が有る辺りに残っている古い弾傷に目が吸い寄せられ
た。その他にも島田の身体は傷だらけだ。弾傷やナイフで切りつけられたであろう傷が幾
つも付いている。その傷と共に筋肉が動いて、島田が手にしていたロックのグラスを呷っ
た。何時もの彼なら気配でジョーが目を覚ましたことが分かる筈だった。今日それに気付
かないのは、やはり無謀に取り過ぎたアルコールの所為なのだろう。その弾傷に引き寄せ
られるように、ジョーは手を伸ばしてそれに触れた。感触に振り返った島田が、彼の手首
を掴んで強引に引き寄せる。
「弾傷が珍しいわけでもないでしょう」
引き寄せた手首を掴んだまま、島田はジョーに言った。確かに珍しくはない。自分にも有
る。左の肩口。2年前に家出をした時に、撃たれた傷だ。
「お前でも撃たれるんだな・・」
ジョーの声には、驚きと少し不安が込められている。そんな彼に島田は鼻を鳴らした。
「嫌いな奴がどうなっても、あんたには関係ないでしょう」
吐き出すように告げられた言葉が胸に痛くて、ジョーは顔を俯けた。
「・・・俺をどうして此処に連れて来た。お前こそ他に気遣ってやる奴が居るだろう」
「・・どうしてそう思うんですか?」
島田は、背けたジョーの顔を、顎を掴んで自分に向けた。必要以上に力を込めすぎたのか、
ジョーが辛そうに眉を顰めた。
『この顔だ』と島田は思った。この表情が自分を捕らえて離さない。何も言わずに彼は、
ジョーの唇を荒々しい口付けで塞いだ。それから頭を振ってジョーは逃れようとする。こ
んな時にも強情なジョーに、島田は微かに腹立たしさを感じた。両腕に力を込めて自分よ
りは一回りほども細いジョーの腕を、手首を掴んでベッドに押えつけた。手に入れた獲物
を見下ろして、島田はジョーの左肩の弾傷辺りから胸の突起まで舌を這わせた。その間に
も手首の拘束は解かない。それを解けば直ぐに反撃に出られるのが、瞳を閉じて快感をや
り過ごそうとしているジョーの筋肉が少しも弛緩していない事から、島田には分かってい
た。本来こうした抱き方は、島田らしくない。今まで彼は力ずくで女を抱いたことなど無
かった。只、今ジョーに対してそんな気遣いをする気に、彼は成らなかった。
『ここで手を放したら、きっとこの自由な鳥は羽ばたいて、自分の元には帰って来ない』
そんな切羽詰ったような、何時もの彼なら鼻先で笑い飛ばしそうな感情に、彼は知らずと
突き動かされていた。
舌を更に下まで進めて、ベルトを外していた僅かに下がったジーンズから覗く腰骨を愛撫
する。途端にビクッと身体が跳ね上がるのが、どうしようもなくジョーは嫌だった。が、
島田の方はジョーの抗うような腕の筋肉の緊張が僅かに緩んだ事に満足して、彼の下着を
ジーンズごと一気に引き下ろした。露になった彼の下肢を舌で愛撫し続けながら、島田は
ジョーの着衣を全て取り除いた。既に頭を擡げかけている彼の物には、敢て愛撫せずに、
島田は意地悪く舌先をその物に掠めさせては、すっと他の場所へと愛撫を移す。熱を持っ
て辛いほどに膨れ上がったそれは島田の愛撫を待っているにも関わらず、島田はそれを与
えようとはしない。
「触れて欲しければ、そう言いなさい」
島田の命令に、ジョーは首を振った。
「強情な人ですね、あんたは何時も・・」
島田の口調は驚嘆に近かった。
『全く呆れるほどのプライドの高さですね』
「じゃあ、ここはどうです」
笑いを含んだように言って、彼はジョーの胸の突起を啄ばんで、次に歯を立てた。又身体
が跳ね上がって、背中が弓なりになる。浮いた腰を素早く引き寄せて、島田はジョーの両
足の間に自分の逞しい身体を入れた。其の儘双丘を割り広げて、彼は自分の指を其処に入
れた。その指をジョーの中でゆっくりと動かすと、ジョーの口元から噛み締めた様な呻き
が洩れた。彼の物は限界に達していて、解放を望んでいる。それでも島田は其処に触れよ
うとはしなかった。
「触れて欲しければそう言いなさい」
もう一度言われた言葉に、ジョーは頭を振ろうとした。が、実際にはきつく閉じた目から
涙が流れただけだった。
「泣くほどに、嫌いなんですか?俺が」
「・・ち・・う」
話しながらも秘所への愛撫を続ける島田に、ジョーの言葉は途切れがちだ。
「違う・・い、嫌なのに・・気紛れで俺を・・抱く、お前になんか・・・・絶対に感じな
いって思ってたのに・・」
意思とは関係なく、零れ出した涙を島田から隠す様に、ジョーは両手で顔を覆った。そん
な仕草に、島田はにやりと笑うと、熱くなったジョー自身を口に含んだ。限界までに達し
ていたそれは、一度吸い上げただけで白い液体を放出した。息をついている少し開いた唇
に、島田は自分の唇を合わせた。口付けに含まれた自分の味に、ジョーが眉を顰める。深
く口付けたまま、島田は熱く膨れ上がった自分の物をジョーの中に入れた。ゆっくりと、
だが激しく腰を動かすと、彼の下でジョーがシーツを固く掴んだ。その手を掴んで離すと、
彼は島田の背中におずおずと両腕を回した。島田が大きく腰を回して達した時、ジョーの
爪が彼の背中に跡を残した。

ぐったりとした身体を投げ出しているジョーの横に、島田は身を横たえた。手にした煙草
に火を点けると、ジョーが閉じていた瞳を開いた。熱の冷めたような水色の瞳で、ジョー
は島田を睨んだ。
「こんな事はこれっきりにしようぜ」
突然言われた言葉に、島田は煙草に噎せた。
「何ですって?」
「好きでもないのに、男を抱く必要は無いって言ったんだ。お前だって女に不自由してい
る訳じゃないだろ。何も好き好んで何とも思ってない男を抱くことは無い」
「・・ジョー、俺はゲイじゃ有りません」
「分かってる。俺もだ」
「だけどあんたは欲しいんです。あんたは男で俺もそうです。けれど俺が今まで本当に欲
しいと思ったのは、あんただけなんです」
「・・・どうだかな?」
疑わしそうに言うジョーは、それでも笑っている。
「言っときますが、俺はこの3ヶ月女とも男とも、してませんよ」
島田の言葉にジョーは鼻で笑った。
「どうだかな?」
「だから溜まってます。試してみますか?」
ベッドに押えつけられて、ジョーは目を閉じた。その筋肉は緊張していない。島田は、伸
ばされた彼の身体に唇を寄せた。思い出したように先程ジョーが付けた爪痕が、ピリッと
痺れた様な痛みを齎したが、直ぐに彼はそれを忘れた。


THE END




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