Want to be with you tonight

by Kiwi


俺の上で瞳を閉じて眉を顰めていた身体が耐え切れないように緊張して、それと同時に俺
の昂ぶりも頂点に達したように自然と腰が持ち上がる。両膝を拘束していた奴の力強い腕
が其処から離れても、俺の両脚はその身体から離れるどころか確かな手応えを求めるよう
に、俺を抱く自分よりも随分と逞しい腰に絡み付いている。ふと目を開けて俺を窺う奴の
視線から、逃れる様に俺は瞳を固く閉じた。その黒い瞳に映る自分を見るのが怖いように、
俺は目を開けることが出来ない。
「目を開けて下さい、ジョー」
必ず島田はそう言う。それに必ず俺は首を振る。汗に湿った俺の長い髪がシーツの上で、
ささやかな音を立てるのさえもが、まるで熱に魘された自分の快感を物語るようで、俺は
自分の両手で島田の視線から逃れる。けれど・・少し焦らした様に動き止めて、もう一度
島田が言うと、俺は逆らえないように両手を外す。
「目を開けて・・」
二回目に島田が唱える声は一度目よりも低くて優しい。瞼に触れるように口付けをしてく
る奴に、仕方なく俺は開いた瞳に島田を捉える。そして何時もと同じ様に島田が又俺の中
で動き始めて、俺は唇を噛み締める。苦痛だけでは決して無くて、でもそれが快感だと奴
に教えるのが嫌で・・。そんな俺の感情を御見通しの様に島田が更に深く俺の中に自分を
刻み込むと、僅かな自制心が弾け飛ぶのと共に、俺は熱い迸りが自分の身の内に注がれる
のを感じた。

重い瞼が眠りを誘うのに、意識だけは冴えて眠りに付くのを拒否している。冷め遣らない
身体は未だ力強い腕を欲しているようで、伸ばした手に触れる温かみがちょっと感情を逆
撫でする。俺は起き上がって前髪を掻き上げた。
「眠らないんですか?」
背中に掛けられた言葉に、少しビクッとして俺は島田を振り返った。
「お前こそ寝ないのか?」
「・・思い出してました」
「何を?」と聞き返した俺の言葉は島田の唇で塞がれて声に成らなかったのに、島田は答
えた。
「あんたのイク時の顔を。凄く好い顔をするんですよ」
「馬鹿野郎!」
島田の言葉に耐え切れなくなって俺は枕を奴の顔に投げた。簡単に避けられるくせに、島
田はそうしなかった。枕が顔を直撃して下に落ちるのを、絶妙のタイミングで受け止めて、
奴は笑った。
「そんなに恥ずかしがらなくても好いじゃないですか」
「そんな事を言うのなら、もう二度とお前となんか寝るもんか!」
肩が自然と怒りで震えて来る。島田に抱かれるのは嫌ではない。しかし、自分が同じ男に
抱かれて喜んでいるように感じるのは、嫌だった。
「じゃあ何で此処に来るんです?」
何処までも意地悪な島田は訊いてくる。
「それは・・」
「それは俺が好きだからですか?それともイイからですか?」
手首を掴んで訊いてくる島田の真剣な瞳が俺の瞳を覗き込んで、返答に躊躇する俺を奴は
再びベッドに押し付けた。其の儘奴は同じ質問を繰り返す。
『ちぇ・・本当に汚ねえ奴なんだから。力では敵わないことを知ってるくせに』
そっぽを向きかけた俺の頭を両手で固定して、島田の黒い瞳が尋ねる。
「俺のことが嫌いですか?」
「・・俺は嫌いな奴になんか抱かれない」
今更何でそんな事を訊くのだ。俺の声は尖っている。思い切り顰めた顔を、島田の指先が
滑っていく。それだけで俺の頬が僅かに熱を帯びるのは、きっとさっき聞いた言葉の所為
だ。
「イク時に凄く好い顔をするんです」
島田が耳元でそう囁いて、俺の首筋から更に下へと唇を這わす。キュッと顰めた眉に指先
で触れて、「ほら、今は我慢してるでしょう」と笑う。
「此処に触れてもね・・」
意地悪く俺の股間に手を伸ばしながら、続ける。
「あんたは声も出さないで、我慢してる。でもイク時は凄く好い顔をするんです。自分の
感情に素直なね」
島田の言葉を否定する様に、俺は唇を噛み締める。
「だから、俺はあんたとこうしているのが好きなんです」
島田の声が何処か遠くから聞こえてくるように、俺にははっきり聞こえなくなった。その
代わりに自分の切れ切れになったような息遣いと、喘ぎ声が耳に響いて来るのに俺は頬を
染めた。
「熱くなっているのは・・俺も同じですよ」
絶頂に達する時の島田の言葉が、心地良く耳に届いた。

「今日は何の日か知ってますか?」
「バレンタインデーだろ。それがどうかしたのか?」
喉が渇いたと、訴えた俺に島田がバーボンの入ったグラスを持ってきて手渡してくれた。
珍しいことも有るものだ。何時もは要求しないと酒なんかベッドに持って来てはくれない
のに・・。
「いえ、だから思い切り愛し合おうかと思いまして・・」
だからバーボンか・・。先程までの仕返しに、俺が今度は意地悪してやる。
「もう、これ以上は遣らないぞ。俺は疲れた」
「・・もうさっきの顔は見せてくれないんですか?」
業とらしく耳元で囁く島田を、俺は叩いた。
「・・一人で、ソファで寝ろ!」
「此処は俺の部屋ですよ」
「じゃあ一緒に寝ても良い。但しもう触れるなよ!」
一方的に断言して、俺はベッドに入った。透かさず隣に来る島田に、両手を回してやった。
「・・ジョー触れるなって言いましたよね」
「ああ、お前はな。俺は構わないんだ」
島田の顰めた顔に、俺は内心舌を出した。
『そうそう好き勝手させてたまるかよ』
お前とこうしているのが心地良いなんて、絶対に教えてやらないからな・・


THE END




Top  Library List