高校3年生!

by デューイ




その1

「なぁ、健。俺とやってみねぇ?」
 2学期の中間試験を間近に控えた週明けの午後、真っ赤な夕焼けに、金色の銀杏並木が
更に色濃く染まった通学路で、ジョーが言った。
「やる・・・って、何をだ?」
 単語帳片手に前方不注意の状態で健が聞く。
 ヤるって言やぁ・・・おまえ・・・、
 ツン・・・と、鼻の奥がせり上がってきて喉に落ちた酸っぱい唾液をゴクリと飲み込
む。ズズッと鼻をすすると途端に咽た。
「風邪か?」
 あのな・・・・、
“A cold may develop into all kinds of illness.”
「気をつけろよ、今度の中間、期末、落とすとマズいんだから」
 学年トップの健は国立T大狙いだ。だから、近頃ガリ勉気味で、朝もきちんと目覚まし
をかけて定時に起き、顔を洗って登校する。それも始業時間のきっかり10分前にだ。普
段、折り紙付きの寝坊の健からすれば、これは驚異的なことで、お陰でちょくちょく
ジョーは置いてけぼりを食らってしまう。
「今度のは、内申書にモロ響くんだぞ」
「わかってるよ!」
 ちぇ・・・、このカマトト。
 舌打ちした唇が尖った。
 夕焼けが健の頬を染めている。俯いて歩く横顔に指を伸ばすと短くなった髪に触れた。
「勿体ねぇよな、似合ってたのに」
「風紀の南部先生が煩いんだよ」
「学年主任の南部の野郎か、ふん、最近エバりやがってよ」
 この時期、学年主任という地位は強い。ジョーの好きだった健の長かった髪は、今は見
る影もない。
「あーあ、面白くねぇよな」
「何が?」
「何もかもだ。おまえは南部の言いなりだし、担任は部活辞めろって言うし、親は家庭教
師をつけるとか言い出しやがるしよ」
「自業自得だろ。その成績じゃ」
 ・・・って、随分な言い方じゃねぇか!
 そりゃ、俺は大衆私大でT大なんて雲の上どころか、アンドロメダのその先の話だが、
これでも毎回試験じゃ、中の上ぐらいは維持してるんだ。もっとも健が提供してくれるヤ
マを叩き込んだ一夜漬けには違いないが・・・・、
「H本ばかり見てないで、たまには家でも教科書くらい開けよ」
「うるせぇ!」
 H本なんかよりなぁ・・・・、
「なぁ、健。俺さ、おまえ見てると欲情すんだよ・・・」
 一瞬、健の足が止まった。
 ジョーは、思わず右手で滑らせた口を押さえた。
 夕焼けが奇麗だった。
「ジョー、おまえ、俺を、“オカズ”にしてるんじゃないだろうな?」
 単語帳を下ろした健の瞳には、これ以上ないというほどの困惑・・・・、いや、羞恥?
  いや、怒りが迸っていた。
「あ・・・、その・・・」
 鋭いじゃないか・・・と、感心しつつ、ジョーは思いっきり眉間に寄った健の眉を、ど
うにかして定位置に戻そうと、
「おまえ、その、そこら辺の女よりずっと可愛いからさ、き、奇麗だし・・・、性格は、
ちょっとバツでも、頭良いしよ・・・」
 努力するが、口から出るのは一向にフォローにならない言葉ばかりだった。
「俺の、どこが“可愛い”・・・って?」
 低位置どころかますます寄った眉に、思わず後退さる。
 しまった・・・・、健に、この言葉はタブーだった。
 中身はこんなだが、見かけは万人が口を揃えて言うほどに健は可愛いのだ。だが、当の
健はそれを良くは思っていない。ま、男にこの褒め言葉は、ちょっと酷だとは思う
が・・・。
 しかし、“可愛い”には、異常に敏感だが、“奇麗”には反応を示さない。ということ
は奇麗だという自覚はあるのかな・・・、などど、ニヤけている場合でなかった。こうい
う時の健は怖い上に、とってもしつこい。
 案の定、「どこが!」と、でっかい目で迫ってくる。
「どこがって、その・・・・、チュッパチャップス舐めてる時の子供みたいな唇とか、
ショコラフレンチ食ってる時の幸せそうな顔とか、宇治金時の白玉突ついてる楽しそうな
指とかだな」
「食ってる時ばかりか」
 おっと・・・、つい。
「そ、そういう訳じゃねぇ、缶ビールごときに酔っ払って、口開けて眠り呆けてる顔とか
も、なかなかいい・・・痛っ!!!」
 思い切り向こう脛を蹴られて、ジョーの目尻から涙がぶら下がった。
「おい、健」
 つかつかと前を早足で行ってしまう背中を追いかける。
「怒るなっての、何も悪気があって言ったんじゃねぇんだから」
 その言葉に振り返った健は、気のせいか耳を赤く染めていた。いや、短くなった髪のせ
いではっきりとわかった。
「おまえ、“眠り呆けてる”俺に何をした?」
 げっ!
 思わず健以上に耳を赤くし赤面してしまったジョーに、フン・・・と、健は鼻を鳴らし
た。
「知ってたのか・・・、健、おまえ」
 俺がキスしちまったこと・・・、
「今、気がついたんだよ。まったく油断も隙もありゃしないな。この性欲魔人!」
「・・・んだって! ほんの好奇心だろ、俺のどこが!」
「男を見たって欲情するんだろうが!」
「誰にでもって訳じゃねぇぞ!!」
 思わず叫んでしまった台詞に、言ったジョーが硬直した。
 俺って・・・・?
 おまえ見てると欲情すんだよ・・・、さっきの自分の言葉を反芻する。
 これって、もしかしてヤバい・・・・のか?
 じっと見つめている健の視線を避けて、アスファルトを睨む。
「ジョー、俺、明日から一人で帰るからな」
 健の声は冷たかった。
 遠ざかる白いスニーカーの踵を見送りながら、ジョーは胸に覚えたチェリーコークのよ
うな甘酸っぱい思いを飲み込んだ。

 夕焼けが、奇麗だった。


その2

『おまえさ、やっぱり俺がついてねぇとダメだな』
 受話器から思いっ切り偉そうぶったジョーが言った。
「関係ないだろ、おまえとは・・・」
『・・・ったくな、見かけによらないドジだぜ。おまえ、体育は2だっけ?』
「4だ!」
 苦手な砲丸投げとマラソンのダブルパンチで、前期の体育の成績が思わしくなかった健
の事情を知ってジョーが痛いところを突いてくる。
 けけけ・・・と、電話の向こうで勝ち誇った彼の顔を思い浮かべて、唇を噛んだ。“体
育だけが5”のヤツに言われたくはない・・・と、思いながらも、いつものように強気に
出られないのは、健にも少々認めたくない落ち度があったせいだ。
 ・・・・おまえを見てると欲情する。
 不躾なジョーの言葉に憤慨し、明日からは単独下校すると、アスファルトに釘付けに
なったジョーを残し、一人家路を辿った健は、だが、単語帳片手の前方不注意に、歩道の
段差を踏み外し、強か右足首を挫いてしまったのだ。そればかりか、痛みとに、ちっ!
と、舌打ちすると、たった今まで集中していたはずのスペルと発音記号には上の空だった
ことに気がつき、ジョーの言葉に少なからず動揺している自分を自覚しなければならな
かった。
『いいぜ、じゃ、明日は自転車で迎えに行くから』
 勝利のVサイン付きでジョーが言った。電話の向こうが見える訳じゃないが、きっとそ
うに違いない。
「いや、朝はオヤジの車で行くからいい。帰りは部活終わるの待っててもいいか?」
 水泳部の活動がそろそろ陸上トレーニングに切り替わるこの時期には、大概の3年生は
引退しているのだが、ジョーが往生際悪く続けている理由は、決して、校外の温水プール
での合同練習となる女子水泳部の水着姿に未練があるわけではない・・・いうのは、本人
の弁だが。
『オーケー、じゃ、5時半に教室覗くからいろよ』
「うん、わかった」
『感謝の気持ちは?』
「・・・・ありがとう、ジョー」
『それだけ?』
「頼りにしてるよ」
『もっと』
 ・・・・くそ、つけ上がりやがって!
『愛してるよ・・・とかって、言えねぇ?』
 ガチャン! 
 付き合いきれない!と、健は音を立てて受話器を置いた。が、これで気を悪くして明日
ジョーが迎えに来なくなるなどとは、夢にも考えないところが健の健たる処で、実際、そ
のとおりなのがジョーのジョーたる処だ。

 何なんだ。あいつは!
 一気に疲れてどっとベッドに転がると、湿布薬と包帯にぐるぐる巻きになった右足に、
キーンと痛みが走った。
「当分体育は欠席か・・・・、掃除当番はサボれるだろうからいいけどさ」
 恨むぜ、ジョー。内申評価を考えると、とても憂鬱な健だった。


「浅倉せんぱーい!」
 朝礼が終わって1時間目が始まる憂鬱な教室に、皆がぞろぞろ足を引き摺る廊下で、元
気な声がジョーを呼んだ。振り向くと窓から差し込むキラキラ輝くお日様(二日酔いには
大敵の・・・)を燦燦とうけて手を振りながら華奢な身体が駆けて来る。
「よ、オダ。どうした?」
「ワン!」
 よしよし・・・、いつもの挨拶に頭を撫でてやる。尻尾を振った犬っころのように懐い
てくる1年のオダは、こう見えても理数系の天才児で末は医者か博士か大臣?・・・か
と、職員室でも噂されていて、あの南部教論のお気に入りでもある。
「先輩が言ってたイケナイHPの壁紙、ダウンロード出来ましたよ。ほら!」
 CDを差し出し、嬉しそうに声を張り上げる。
 こらこら、紛らわしい言い方をすんじゃねぇ。“イケナイ”じゃなくて“行けない”
だ。
「きっと、ドットか、スラッシュの入れ忘れだと思うんだけど」
 ジョーがやると、どうしても行き着けなかったHPから、オダが望みの壁紙をゲットし
てくれたのだ。思わず、
「よくやった!オダ」
 さすがはパソコン部の新鋭!と、肩を抱き寄せる。感謝の気持ちは素直な心と、スキン
シップで表す・・・と、いうのがジョーの信条だ。
 ちょっと恥ずかしそうに身を竦めたオダを、更に抱き竦めると、サラサラの髪が頬に触
れる。
「先輩・・・、人が見ますよ」
「何、恥ずかしがってんだ。何も恥ずかしいことしてないじゃないか」
 とは言うものの、健相手にはこんな“いいこと”出来ねぇしな・・・・と、一時、腕の
中の感触を楽しむジョーだったが、
 俺って、やっぱり見境ないのかな・・・、オダだって男だし。でも、何か違うよ
な・・・。
 オダは確かにコロコロと可愛いし、抱き心地も悪くない。こうして腕の中にすっぽり納
まるのもいい感じだ。だが、こう、何と言うかムラムラっとくるのは健だ。
 ああ、あいつの身体を抱きしめてみたい。
 思った途端にカッと血液が逆流し下半身に集まった。
「せ、先輩・・・・」
「あ、悪りぃ・・・」
 うっかり変化を示してしまった身体を、ばつが悪そうに離すとオダの頬が赤く染まって
いた。
 すまん・・・、誤解だ。
 言葉には出来ずにジョーは詫びた。
 オダも捨て難い。
 だが、こいつの味見をするのは健の後だ。
 思わず不敵に吊り上げた唇に、初心忘るべからず・・・? 
 決意を新たにするジョーだった。


その3

 西館の3階の端、社会科の遠留教論担任の3年B組が健の教室だ。
「健、帰るぞ!」
 5時50分に、ジョーは3Bの教室の扉を開けた。部活が終わって即行2分で着替えた
ので五時半には余裕だと思ったのが、20分も遅れてしまった理由は部室を出たところ
で、あの憎っくき学年主任の南部に捕まってしまったためだ。
 廊下を走るな!から始まって、上着のボタンはきちんと留めろだの、靴の踵を踏むなだ
の、挙句、回れ右をさせられズボンのポケットから買ったばかりの煙草を没収され、ねち
ねちと注意を受けること20分。

 ・・・ったく!いい加減にしろよな。
『先生、俺、急ぐんですけど』
『なんだと!』
 案の定、人の話を真面目に聞きたまえ!と雷が落ちたところで、さっさと用意していた
切り札を投げる。
『俺、健・・・、鷲尾君を自転車で送って行かないといけないんです。あいつ、昨日、
足、捻挫しちまって』
 すみません・・・と、頭を掻きながら精一杯反省した振りをして言うと、途端に眼鏡の
奥の瞳が怯んだように眇められた。
『なに?捻挫?鷲尾君が?そ、そうか、そういう理由で急いでいたのかね、うむ・・・』
 思惑通り、優等生の“鷲尾君”の名でジョーは、あっさり無罪放免となった。
 へっ・・・、ちょろいもんだぜ。
 健の名前は、こういう時、便利だよな。しかし、
『君が、あの優秀な鷲尾君の親友だとは私は未だに信じられんよ、まったく・・・、世の
中、容易ならん』
 何が、容易ならんのか?(爆)まったく、失礼な奴だ。俺のどこが健に相応しくないっ
ていうんだ。
 水泳で鍛えたこの逞しい筋力といい、広い胸板といい、包容力のある腕といい・・・・
だが、どうしてもそちら方面の長所?が主になるジョーだった。

 だけどよ、
 “優等生の鷲尾君”てのは聞こえはいいけどよ、あいつ1年の時から浮いた噂一つない
んだよな。それってちょっと男としてヤバいんじゃないのか?
 「大きなお世話だ!」と健の声が聞こえてきそうだが、実際、ジョーはその手の話を健
から聞いたことは一度もない。
 こっちがゲットした彼女の話をしても、つまらなさそうに相槌を打つだけで一向に乗っ
て来ないし、たまに「それで?」と聞き返してきたかと思うと、ジョーが「ヤったぜぇ
〜!」と息巻くや思い切り頭を叩かれる。
 こいつ、もしかしてマジで純情[シャイ]のなか?と心配したこともあったが、引く手
は数多なので、それなりの知識はちゃんと持ち合わせてはいるようだ。まあ、実戦経験が
ないのは、優等生である健を取り巻く諸事情によって致し方ないにしても、親友の武勇談
にぐらいは付き合えるようになって欲しいものだとジョーは思う。
 が、その反面、そんな健のシャイなところが、ジョーにはたまらなかったりする。
 大人ぶって見せてはいるけれど、きっと女の子の手を握ったこともないに違いない。コ
クられているのは何度か知っているが、興味を示したこともなければ、返事をどうしたも
のかと相談されたこともない。答えはいつもNOだった。だから、これは確かな推測だ。
その証拠に、きわどい話題を振ると決まってソッポを向く。ひっそりと頬を赤らめて。
それが面白くて、ジョーは健の腕をひっぱり、耳元に口を近づけてもっときわどい話をし
たくなる。
 そして、今は、もっときわどいコトをしたくなる。
 あいつを、他の誰かに渡すのはイヤだ。唐突にジョーは思った。
 何せ、“缶ビール”であいつのファーストキスを奪ったのは俺だからな・・・と、思わ
ず唇を綻ばすジョーは、だが、下校時刻を知らせるチャイムの音にハッと我に返った。慌
てて時計を見る。
 5時50分。
 いけねぇ!

 健は窓際の席で分厚い参考書を開いていた。勢いよく扉を開けた息せき切ったジョーを
見てしっかり眉を顰めた。
「遅い!」
 寝坊なくせに?時間には厳しい健だった。1年の時から洗顔と朝食は断念しても遅刻は
したことがない。
「すまねぇ、眼鏡ザルに捕まっちまった」
 眼鏡ザルとは、ジョーが付けた南部教論の渾名で、その由来は不明(読者のご想像に任
せるとして)だが、“構内不良一掃”をスローガンに今春、学年主任に就任した彼は、
ジョーのような生徒には、この上なく鬱陶しい存在であるのは確かだ。
「南部先生には逆らうなよ」
「わかってるよ、ほら、帰ろうぜ」
 自転車の鍵を人差し指に引っ掛けながら言うと、寝不足なのか小さな欠伸を一つ、健は
机の上の参考書を鞄に仕舞い席を立った。
「おっと!」
 不自由な足によろめいた身体に、すかさず差し出した腕を、だが「いいよ」と断られ
た。
 ちぇ、予防線貼りやがったな。
 それでも、自転車の後ろに乗せ、しっかり腰に腕を回すように言うと素直に従った。
 見慣れた銀杏並木を走り、信号を2つ渡って、もうすぐ健の家。車の行き交う通りを閑
静な住宅街に入ると、途端に街の喧騒が遠くなる。どこからか、昔聞き覚えた古いシャン
ソンが聞こえてきてペダルを踏みながら一緒に口ずさむ。

 黄昏時には側にいて、
 久しく貴方を愛している、
 セピア色した窓辺に寄り添い、あなたが欲しい・・・と囁いて、

 不意に背中に柔らかい感触を覚えた。健がジョーの背中に頭を預けている。頬の弾力が
学生服の上からでも感じられた。
「健?」
「おい、健!」
 寝るなーーーーー!危ねぇじゃないか!
 ロマンチックとは程遠いツーショットだった。


その4

「眠れない」
 5時間目が終わった音楽室で、ジョーが腰も上げずにぽつりと言った。
「んぁ? 今、ぐーすか寝とったじゃないか」
 移動のために皆が足早に後にする教室で、ジョーの言葉に振り向いたのは中西竜。隣の
席で太った大きな体を重そうに揺さぶった。
 うるせぇ・・・と、横目で睨みながらも、このところ夜なかなか熟睡できなくて不眠症
気味のジョーだった。
 原因は他でもない。
 ・・・・健のことを考えると眠れない。
 ベッドの中で健のイク時の顔を想像して悶々となる。悪いと思いながらも明け方近くに
は我慢ならずに×××にしてしまう。
 で、子守唄(シューマイトだかベントーベンだか知らないが)を聞きながらうつらうつ
ら・・・となるのだが。音楽鑑賞[お昼寝の時間]のために音楽を専攻したのは竜も同じ
なので非難を受ける筋合いはない。
「なんか悩み事でもあるんか?」
「まあな」
「恋の悩みなら相談にのるぞ」
 恋・・・・? およそこの図体のデカイ男には似つかわしくない可憐な単語だが、竜は
その外見からは想像もできないほどロマンチストな上に、マメな性格と人の良さで女子に
は意外と人気がある。付き合ってるヤツもちゃんといて、恋愛についてはかなりな経験者
だ。
 恋・・・なのか? あまりの乙女チックさにカッと頬に熱が集中する。だが、実際、こ
の感情にどんな言葉が当てはまるのか?ジョーにはわからなかった。ただ、健が欲しくて
たまらなかった。

 放課後。
 メンテナンス日だとかで、デフラグを終えて早々に部員たちが帰ってしまったパソコン
部の部室で、ジョーは1年のオダを相手にとぐろを巻いていた。
 水泳部が陸上トレーニングに切り替わってからは、“特別な用件”がない限り、彼は部
活の時間をここで過ごしていた。
「なぁ、オダ」
「なんですか、先輩」
 広い部室に二人きり。
 ちょっと、大人しく待ってて下さい。今ダウンロードしてますから、と言うオダのキー
ボードの上の手元を覗き込みながら、ツンツンと肩をつついたり髪を引っ張ったりと
ちょっかいを出していたジョーは、擽ったいと振り向いたその唇に、不意打ちをかけるよ
うに接吻た。
 沈黙・・・・・。稍有って・・・・、
「な!! 何てことするんですか〜〜!」
 両手で口を押さえたオダが、両足をじたばたさせて、瞠目する。
 なかなか、面白い反応をするな・・・と、感心しながら、
「あ、すまねぇ・・・」
 ぽつりと言ってジョーはゴリゴリと頭を掻き、一度天井を仰いでから俯いて大きな溜息
をついた。
「ど、どうしたんですか?先輩」
 そんな、ジョーに急に心配顔になるオダ。
「う〜〜ん」
 おまえさ、男に欲情することある?・・・とは、とても聞けねぇよな、この天然には。
 反応その1、
『それってホモじゃありませんかっ!俺はホモじゃありませんから!』>軽蔑の眼差し。
 反応その2、
『せ、先輩はするんですか? 欲情。へぇ〜、へぇ〜、へぇ〜』>驚嘆の叫び。
反応その3、
『俺・・・、します。欲情』>恥じらいの告白。
 ・・・って、こりゃ、ありえねぇよな。と思い直しながらも、ちょっと好奇心も湧いて
きて、からかい半分に聞いてみる。と、オダは一瞬考えて、あろうことかポッと頬を染め
た。
「俺・・・」
 ええっ??!!
「俺、鷲尾先輩になら、するかも・・・、ちょっと・・・その欲情っていうの」
 えーーーーーっ!!
「オダ、おい、オダ。思い直せ、思い直した方がいいぞ。あいつってば、あんな顔してる
けど、言うこと滅茶苦茶きついし、意地は悪いし、寝坊で猫被りだぜ。性格がバツな上に
柔剣道二段ときてる。襲いかかろうにも・・・」
 何を慌てているのか、しどろもどろのことを口走ったジョーに、オダがきょとんとした
目を向ける。
「浅倉先輩、もしかして鷲尾先輩狙いなんですか?」
 大当たり!〜〜〜とは、言えずグッと唇を真一文字に結ぶ。それを見たオダの肩が小さ
く震え、サラサラの前髪が揺れた。クスッと余裕の笑みが小憎たらしい!
 それだけでも、ジョーには十分過ぎるショックだったのだが、あろうことか、更にオダ
はメガトン級の爆弾発言をした。
「鷲尾先輩って、奇麗で素敵だから。知ってます? 保険医の華院先生、鷲尾先輩にモー
ションかけてるの。あの先生、 奥さんと離婚したばっかりだって、それって、ちょっと危
ないですよね」
「な、なんだとぉ」
 モーションだぁ?
 唸ったジョーに、オダが思わず椅子の上で後退る。
「あんの、変態野郎が!」
 華院は、3ヶ月前から産休に入っている保健医の勝江先生の代行だ。
 ジョーは、華院がとても嫌いだった。
 すらりとした長身にビシッとスーツの似合う精悍さを纏った大人の男で、白衣を羽織っ
た時には、眼鏡の奥のシャープで理知的な瞳が禁欲的で素敵と、女生徒たちの間でも密か
に人気を集めている。
 だから・・・という訳じゃない。
 相性が悪い、馬が合わない、性格の不一致?というものは、どう努力したとて歩み寄れ
るものではない。そして、第一印象が全てを決めるということも良くあることだ。

『今日から、3年の保健体育を担当する華院だ。勝江先生が復帰なさるまでの間だが、宜
しく』
 教壇でそう挨拶をする華院を、ジョーは胡散臭そうな目で見つめた。
 スーツもネクタイもブランド物・・・と、囁く女子たちの声にフンと鼻を鳴らす。袖口
からカルティエをチラッとわざとらしく覗かせ、片手を腰に当て教務手帳[エンマ帳]を
繰るポーズもいけ好かない。
 気障ったらしい野郎だぜ・・・と、鼻息も荒く溜息をついた時だった。不意に目が合っ
てまるで見透かすように不敵に、華院が笑った。
 今思えば、それは勘違いだったと、彼にとってはこれから親しく付き合っていかなけれ
ばならない生徒に対しての単なる社交辞令だったのかも知れなかったが、その時、ジョー
の思いを決定的にしたのは他でもない。
 放課後、
『今日、おまえのクラスでも授業があったろ。華院先生の』
 健が言った一言だった。
『けっこうイケてるよな、あのセンセ』

 相性が悪い、馬が合わない、性格の不一致というものは、どう努力したとて歩み寄れる
ものではない。そして、それが嫉妬の対象なら尚のこと。


  その5

“パパパパパパパパパッ!イッパツマン〜〜〜〜”
 6時間目の終業チャイムと共に健の携帯が鳴った。一発マンの着メロはジョーからのも
のだ。
『健、俺だ』
「どうした?ジョー」
『悪りぃ、クラブのヤツらとどうしても外せない付き合いがあってよ。今日は送ってやれ
ねぇ』
「ああ、そうなのか、でも、丁度良かった。こっちも連絡入れようと思ってたんだ。実は
帰りは車が調達できたんだ」
『車? オヤジさん早帰りか? 良かった、なら任せる』
 オヤジ?
『おっと、ヤバイ。眼鏡ザルのヤツだ。んじゃ、健、明日は送ってくからよ。ゴメンな』
 プツッと、世話しなく通話は切れた。「携帯電話は不良の始まり!」という南部教論の
指導の下、校内及び登下校中の携帯使用はご法度なのだ。勿論、持っていてもいけない。
持ち物検査に引っかかれば有無を言わさず没収である。
 まったく小学生じゃあるまいし・・・と、それでもそそくさと携帯を鞄に仕舞い、健は
教室を後にした。

 その車は、自転車置き場のある北門の門柱の影に、ひっそりと身を隠すように止まって
いた。渋銀の落ち着いたフォルムの車体だが、一目見てそれとわかる高級車は否が応でも
人目を引く。
 ・・・・こういうのを地味派手っていうのかな?と、健が助手席のドアに手をかけよう
とすると、すかさず運転席から伸びた手が、まるで労わるかのようにしてドアを開け迎え
入れてくれた。
「すみません・・・」
 小さく頭を下げると、ドライバーズシートに背中を戻したスマートな肢体がシートベル
トに固定され、その手が優雅にハンドルへと流れた。そして、ゆっくりと滑り出すように
して発進した車の乗り心地は最高だった。
「いい車ですね」
「そうかな、教頭先生のベンツには敵わないが、鷲尾君にそう言ってもらえるなら光栄
だ」
 返る言葉に少し焦る。
「父の車をご存知ですか?」
 チラリと流した視線に「ああ」と言う返事が返ってきて嘆息。が、直ぐに「家は、三日
月ヶ丘だったね」と矛先が逸れてほっとする。
「ええ、銀杏並木の信号を2つ渡った先です」
「了解。でも、まだ早いからお茶でもどうかな? よければ夕食とか」
「夕食は・・・、今日は俺が当番で用意しなきゃならないので・・・」
 言うと、ちょっと意外そうに片眉が上がった。
「家政婦さんはいないのか?」
「俺の小さい時は来てもらっていましたけど、今は親子水入らずってことらしいです、無
理矢理(笑)」
「そうか、大変だな。それじゃ夕食は断念するとして、じゃ、紅茶の美味しいケーキハウ
スに招待しよう」
 夕暮れの街にいつもの金色の黄昏が落ちている。が、少し違う今日のシチュエーション
に健の好奇心が沸く。
 でも、送ってもらって喫茶店にまで寄って・・・って、ちょっと問題かな?と思いつつ
も“ケーキ”の一言に、つい快く頷いてしまう(意外に、いや、最近では定着してしまっ
た嗜好を伺わせる(爆))甘党の健だった。

 ケーキハウスを出て家の前に車を付けてもらったのが、6時丁度だった。途中ドーナツ
ショップで夜食にと差し入れまで買ってもらった健は、丁寧に礼を言って車を降りた。
「じゃ、また明日」
 ドライバーズシートからの爽やかな笑顔と共に、軽やかに発進する車を見送りながら
「鮮やか・・・」と思わず溜息が洩れた。
 ああいうのを“デキる男”っていうのだろう、いや“モテる男”かな? あれじゃどん
な女でも落とせるよな・・・と、よもやその対象が自分だとは思いもしない健は、ボック
スいっぱいのショコラフレンチにご満悦だった。

「さてと・・・」
 ダイニングテーブルに鞄を投げ出し、冷蔵庫を物色する。普段は帰りにスーパーに寄っ
て買い物をしてくるのだが、足が治るまでは買い置きの食材でメニューを考える。
「ちぇ、オヤジのやつ、買い出しをサボったな」
 寂しい庫内を覗きながら、出前にでもするかな?と手抜きなことを考えた時だった。鞄
の中で携帯が鳴った。
「はい、鷲尾・・・、何だ、オヤジ?」
『何だとは、何だ。さっきから何度もかけてるのにちっとも出ないで!』
 さっきから・・・って、携帯禁止令が出てるのに、教頭が生徒の携帯にかけてくるか
なぁ!普通!
「“デート”だったんで、電源切ってたんだよ!」
 喫茶店で、会話の邪魔にならないようにと気を使ったのだ。
「で、何?」
『うむ、実は南部君に誘われて飲みに行くことになったので、夕飯は一人で食ってくれ』
「またクラブ“愛S王”?」
『うむ、あそこのパンドラママに南部君がご執心でな・・・・。と、いうわけなので今夜
は遅くなる』
「鍵、持ってるんだろうね」
『うむ、先に寝てていいぞ。何ならその彼女のところへでも・・・』
「わかったよ!」
 語尾を遮って仏頂面で答えると、プツンと楽しげに通話は切れた。
 何が、『・・・と、いうわけ』だ。まったく。受験生を抱えた親が(それも教職の身
で)いくら会員制高級クラブとはいえ、堂々とそんな如何わしい場所に出入りするとは。
“愛S王”の「S」がscience の「S」でないことぐらい健にもわかる。
 このことをジョーにリークしてやれば、きっと勇んで南部先生への牽制に使うだろう
が、如何せん、彼と父親が無二の親友だということは校内でも有名だった。「何、ちょっ
とした娯楽だよ」と大人は言うのだろうが、対岸の火事というわけにはいかない。それに
万一スッパ抜かれでもしたら・・・、
 まったく、少しは気を使ってくれよな・・・、あんた、可愛い一人息子を愛してないの
かい?
 愛しているぞ、健。
 突然、声が聞こえたような気がした。
「言いかねねぇな、あのオヤジなら、真顔でさ。あーあ、こんなことだったら夕食ご馳走
になるんだったな」
 テーブルに頬杖を付き、食べ損なった華麗なる晩餐を思い浮かべながら、宅配ピザの番
号を検索する健だった。


その6

“ヤッタ!ヤッタ!ヤ〜〜〜ッタァマ〜〜ン!”
 ヤッたぁ!マンの着メロはジョーからのメールだ。
『話がある。今から行く』
 まるで“明日、午後着く”と半世紀前の電報文のような簡素なメッセージはいつものこ
とだが、話って何だろう? 改まって話すことなんてあるのか? もしかして・・・、例
の“欲情”のことだろうか? それだったら、ジョーなら“話”じゃなくて“行動”ある
のみだよな・・・などと訝りながらもジョーが来るのだったらと、階下のキッチンへ足を
運ぶ。
 土曜日、休日返上の職員会議に出席した後、週末大売出しで隣町のスーパーまで買い出
しに寄った父、健太郎が帰って来たのは夜の8時を回っていた。鳴き始めた腹の虫を宥め
ながら先に風呂に入った健はベッドに横になりながら、階下から漂ってくるスパイスの効
いた食欲をそそる匂いに大いに空腹を刺激された。
 父子家庭の夕食は当番制。今夜は健太郎自慢のシーフードカレーだ。
「オヤジ、ジョーが来るってさ。カレー余分にある?」
「ああ、十分あるが、カレーぞ」
 ・・・って、だから“辛れ〜ライス”ってか? 
 一人突っ込むオヤジの駄洒落が笑えない。
「カレーの王子様の買い置きがあっただろ」
 ジョーは、ああ見えても辛いのが大の苦手だ。健はストックボックスを探って愛らしい
レトルトの箱を見つけ封を切った。水を張った鍋を火にかけ沸騰したところでドアチャイ
ムが鳴った。慌てて銀色のパックを湯に沈め、タイマーをセットし、後は健太郎に任せて
玄関に向かう。

「今晩はー」と、ドアの向こうで声がした。
「よぉ、どうしたんだ、急に」
 迎え入れ、早々用件を確かめようとすると、これ以上ないという不機嫌さでジョーはス
ニーカーを脱ぐと、ダイニングルームから顔を出した健太郎に「お邪魔します」と頭を下
げただけで、勝手知ったる他人の家とばかりに、さっさと健の部屋に向かうべく階段を
昇った。何なんだ?と慌てて後を追うと、ギクッと痛めた足が悲鳴を上げた。

「俺は見たんだ」
 部屋に入るなり、ソファ代わりのベッドに腰を下ろしたジョーの第一声は、コレだっ
た。
「何を?」
「おまえ、昨日、オヤジさんの赤いベンツじゃなくて華院のポルシェに乗っただろ」
「何だ、見てたのか? すごい車だよな。さすが財産家は違うな」
 ウチのオヤジのは単なる見栄だ。(ベンツへの冒涜だ!とエーベルバッハ少佐に銃殺さ
れかねないあの色にはイマイチ理解に苦しむが高級車には違いない)が、華院のポルシェ
(ジョーの言うところによると“911GT3”だそうだ)は違う。
 セレクションに乗る者のこだわりが伺える渋銀に鮮麗さが際立ったボディ、しなやかな
加速と滑るような走行に、スポーツタイプの遊び心を秘めながらも落ち着いた重厚さを漂
わせている。
「ああいうのって、大人の男の洗練された魅力を感じるよな」
 隣に腰を降ろしながら、ほぅ・・・と、感嘆の溜息を交えて健が口にする。勿論、
ジョーには聞き捨てならない。
「おまえ、車で釣られるクチか?」
「えっ?」
「金持ちのバツイチ独身男ってのが、一番危ねぇんだ」
「何だよ、何が言いたいんだ、いったい。はっきり言えよ」
 持って回ったようなジョーの言い様に、健はだんだんと不愉快になる。だが、朝から
悶々と悩んだ挙句、とうとう我慢ならずにやって来たジョーは、怯んでなどいられなかっ
た。
「華院に何をされた」
「された・・・って、何って? ケーキセット奢ってもらって、送ってもらって」
「それだけか?」
 ドスの効いた低い声がまるで尋問のように問い質す。
 それからドーナツを買ってもらって・・・と、
 不味い。
 車の次は食いモンで釣られたのかと、ジョーはきっとバカにするにちがいない。既での
ところで言葉を止めたが、この沈黙が悪かった。
「健、おまえ、やっぱり!」
 狭い車内で身動きの取れない身体に覆い被さっているスーツの背中。倒されたシートに
縫い付けられた両手首。僅かな抵抗を封じ込められ奪われる唇。
 ジョーは脳裏を駆け巡った妄想に「うっ」と苦しげに喉を鳴らした。だが、まさか自分
の濡れ場を想像されているとは露とも知らぬ健は、何故か動悸の激しくなった様子の
ジョーを訝しむ。
「どうかしたのか? ジョー」
 無防備に覗き込むのは危険だ・・・などというシグナルは、健には発せられない。いき
なり肩を掴まれ上半身をベッドに押し倒された。
「ジョー!」
「華院なんかに渡さねぇ」
「な、何を言ってるんだ、寝ぼけるのもいい加減にしろよっ!」
「寝ぼけてなんかいないさ、言ったろ、健。俺はおまえを見てると欲情するんだって」
「バカ!冗談・・・」
「冗談なんかでもねぇ。抱きてぇんだよ! 俺は、健、おまえを」
 荒々しくシャツの襟元を掴まれ、音を立ててボタンが飛んだ。
 無意識に抵抗を試みた足が、ズキンと強烈な痛みを発した。そして、
 ジョーなら“行動”あるのみだな・・・などど、さっき呑気に思ったことを反省しつ
つ、漸く身の危険を感じた健が、反撃に出ようと腕に力を込めた時だった。
 軽いノックの音が聞こえたかと思うと、いきなり勢いよく部屋のドアが開いた。
 立っていたのはエプロン姿の健太郎だった。
 オ・ヤジ・・・・、
 これは、もうヤバイと言うしか他ない状況である。
 ジョーは健の両腕を押さえ込んだまま、膝の上に乗り上げて硬直し、健は胸も露に組み
敷かれたまま頬を引きつらせた。これじゃ、オヤジたちの乱交を責められない。頭に浮か
んだのはソレだった。
 一瞬、えも言われぬ沈黙が制し、次にベッドヘッドの時計のアナログ音が妙に大きく耳
に響いた。声を発すること、身じろぐことが憚われるように。
 その躱しがたい静寂を打破したのは健太郎だった。
「高校生にもなってプロレスごっこか? 飯の支度が出来たから早く降りて来い」
 それだけ言うと、さっさと階段を下りて行ってしまった。
 一気に力が抜けて、ジョーが健の身体の上に崩れ落ちる。まだ乾き切らない髪から仄か
なラベンダーが香った。時に色香を誘うそれが今は鎮静剤となって冷静さを呼び覚ます。
「イカしたオヤジさんだな」
「ああ、PTAのおばさんたちもそう言うぜ」
「でも、あの“ひよこクラブ”のエプロンはやめた方がいい」
「あれは、出産の報告にいらした勝江先生に頂いたんだそうだ」
「なぁ、健。もう華院の車には乗るなよ。俺がちゃんと送ってやるから」
「ああ、毎回、こんな目に合うんじゃたまらないからな。ちぇ、実技休んだ分、保健体育
で点数稼ごうと思ったのに」
 えっ?!
 思わず身体を起こしたジョーが、まじまじと健の顔を見る。
「健、おまえってやつは・・・」
 ふふっ・・・と、健が笑った。
 その策略を秘めて輝く瞳に、ゾクリとジョーは背中を竦める。
 そして、
 そうだ、こいつは任務、いや、こうと決めたら手段を選ばないヤツだった・・・と、ま
すます不安に駆られるジョーの心中など、健には知る由もなかった。


    To be continued




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