月曜の朝に・・

by KITT


おはよ!ワタシの名前は、ハル。二ヶ月前からISOに勤めはじめたの。え?優秀な人材の
集まるココに、どうしてワタシみたいな平凡な女の子がいるのかって?
答えその1。優秀な頭脳の方々には、電球を替えてる暇なんかないから。
答えその2。私の従姉がその、超優秀な頭脳の一人で、縁故採用ってとこかしら?だって、
情報が漏れるのが一番まずいみたいだから、パートのおばさんってわけにはいかないらし
いわよ。
ワタシの仕事は、電球替えの他に、色々備品をそろえたり。ま、はっきりいって雑用って
とこ?同じ部署にはKITTって先輩がいるんだけど、金曜から一週間の休みを取ってるか
ら、いまはワタシ一人ってわけ。あ、ココだけの話、先輩はボディーガードのSさんにちょ
っと惚れてるらしいのよ。食堂でけんちんうどんをすするSさんにキュンときたんだって。
おはしの使い方がセクシー、とか訳のわかんないこと言ってたけどね。あの、きつい目、
ワタシは趣味じゃないんだけど。どっちかって言えば、Kって子の方がワタシは有望だと
思うな。
でも、何でワタシより年下の男の子が、いくらN博士の関係者だからって、この辺をうろ
うろしてんのかしらね?もう一人、Jって子もいるの(こっちは生意気っぽくて、ちょっ
とね)。先輩に聞いてもなんだか要領得ないのよ。秘密って言うより、先輩自身があんま
り興味なさそうって言うか。先輩って、絶対スパイには向いてないってとこが、ココの採
用の決め手だと思うな。あ、今の言葉、削除しといてよ。

備品室、ワタシ達は「納戸」って呼んでるんだけど、そこには、N博士が使わなくなった
ソファがあるの。こないだ二日酔いでしんどい時、先輩が「ここで寝てていいよ」って言っ
てくれたわ。PHSが鳴ったら起きて戻ってよって。でもどうやら、このソファ、いろんな
人が使ってるらしいのよ。
その納戸の電球が、金曜の夜から切れてるって連絡あり。ここ、窓側にも棚があるから暗
いのよね。脚立引きずってソファ近くまで来たら、つまづいて、ソファに倒れこんじゃっ
たの。
ぐにゅっ。
!?
「いてっ!何すんだよっ。」
ご挨拶よね、ワタシは仕事よ!?
暗がりの中で目を凝らしたら・・・
「J !? アンタこんなトコでなにしてんの」
「しょうがねえだろ、昨日の夜はほとんど寝てないんだよ」
「寝てないって・・」
「しっ!」
J はまるでうってかわった表情で、ワタシの口を手でふさぐ。
「やばい、Sだ、ばれたか?」
そのまま部屋の奥の机の影に移動する。じたばたするワタシを難なく引きずって。
「いいか、絶対声出すなよ、物音も立てんなよ」
抑えた声で脅されると、ちょっとコワイわね、この坊や。
と、すぐにドアが開いて、(足音なんか、聞こえなかったわ!)
「J 、そこにいるんでしょう、分かってますよ」
Sさんの声がした。Jは息を潜めてる。
「もう充分寝たと思いますがね。N博士が随分前から待ってますよ。後五分で来てくださ
いね」
ドアの閉じる音。
横で、Jは小さくため息。
ん?さっきは気づかなかったけど、Jから随分いい匂いがするじゃないの?
「あーら、J、女物の香水つけちゃって。なにこれ。」
ワタシは皮肉のつもりだったのよ。寝不足って、そういうこと?
「俺、あんまり詳しくないんだけど、たぶん・・・ブルガリのプールファムかな?」
・・詳しくない、ですって?
「ハルはアナスイ?」
Jは仕方ないといった身振りで立ち上がって、そのまま手を振った。
「お前も早く来いよ、先に行くぞ」
ドアが閉まる。何のこと?
「何だ、J、知ってたのか」
その声に振り返ると、Kの、ちょっと寝ぼけた顔。え、・・・カ、カワイイ。
「あなたまでここで寝てたの?」
「やあ、ハル、おはよ。俺たち、月曜の朝は・・・ふぁ・・弱いんだよ」
伸びをする姿は、思わず抱きしめちゃいたくなるほど。
「あら・・、Kもコロンつけてるの?」
「あ?なんて名前なのかな?今度聞いてみよう」
聞いてみるって・・K・・もしや、あなたまで。
「じゃあ、Jが待ってるからもう行くね。」
柑橘系の香りと、うっとりするほど無邪気な笑顔を残して、Kは行っちゃった。
なによなによなによ、ナニモンなのよ、あいつら。
 ずっとしゃがんでて足がしびれたわ。ワタシは一歩も動けやしない。じいんとする感覚
をこらえながら、ワタシは誓ったわ。
 あいつら、絶対正体をあばいてやるからねっ!


THE END



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