分析 ジョージ・浅倉 という男

                       by 少佐



副題:コンドルのジョー進化論
    <ケンの服を剥いだのは我々か、それともジョーか?>


元設定 
 本名    : ジョージ・浅倉
     コードネーム : 科学忍者隊G2号、コンドルのジョー
     年齢    : 18才
     国籍    : イタリア
     特技    : 射撃(武器はエアガン、羽根手裏剣)
     職業    : プライベートカーレーサー
             ISOシークレットソルジャー(科学忍者隊)
     所属    : ISO

進化設定
  本名    : ジョージ・アサクラ
     コードネーム : なし(昔"コンドルのジョー"だった場合もある)
     年齢    : どう見ても二十歳はとうに過ぎている
     国籍    : 不明(イタリア、BC島出身だったりもする)
     特技    : 射撃、ドライビング、女を口説くのも得意である
     職業    : 情報機関の秘密工作員、または無職             
     所属    : ISOに付属する組織であったり、新しい情報機関であった
り、警察のSPであったりもする

第二設定
  本名    : ジョージ・アサクラ(又はミドルネームを付 けて、ワシオ、
又はナンブ)
     コードネーム : なし
     年齢    : 不詳(20代後半迄は想像されるが30才は超えない)
     国籍    : 不明

     特技    : きっと拳銃裁きは上手いだろう
     職業    : 実業家、カーレーサーだったりもするが共通して財力に富む
     所属    : 時々、マフィアのボスだったりもする


George Asakura・・・・、

 果たしていったいどんな男なのだろう?
 謎と言えばこれ程謎の多い人物はいないだろう。かの"謎のレッド・インパルス"と呼ば
れた男より、遥かに得体の知れない男である。
 ある時はISOのシークレットソルジャー、科学忍者隊G2号・コンドルのジョー、又
ある時は、秘密機関の諜報員。そして富と権力を手中に収めた大財閥のオーナー、その傍
らでレーサーや、ボディガードの副業までやってのける驚異の男である。
 溢れる程の情熱を、涼しいPrussian Blueの瞳の奥に秘めた精悍な青年。ニヒルでクー
ルが売り物と言われるが、決してそうじゃない。ナイーブで一途、思い込んだら命がけ、
試練の道もなんのその、である。
 獲物を追い詰める鋭い眼光、トリガーを引く時の不適な微笑、それがいかに似つかわし
くとも、彼を語る全てには程遠いということを我々は知っている。

 元設定段階で記される限りの彼は、単純明快。性格=ニヒルでクール、である。捻くれ
ていて冷たい奴なのだ。しかし、元設定にこそ我らが永遠不滅の本編があるのだ。だから
こそ"捻くれ者の冷たい奴"は心優しいロンリィウルフと成り得るのだ。
 ギャラクターの裏切り者として両親を殺され、その復習のみに生きる術を見出した少年
が戦いの道を突っ走り始める。だが、その過程で彼が知るものは、怒りや悲しみ、苦しみ
ばかりではなかった。友情、絆、信頼。本編に垣間見る様々な彼の感情、或いは葛藤、時
には誰よりも脆く、寂しがりやでナイーブな彼の内面を我々は知ってしまったのだ。

 一人暮らしの寂しい老婦人を思いやる彼、事故で傷つけた少年に輸血を施す彼、「坊や
が良くなるまで見舞いに来ます」と・・・・。彼の優しさはごく自然で、時に子供のよう
な純粋さと弱さを内包する。
『傷つくまいとする用心深さが知らず知らずに自身をガードすることを覚えさせ、出来る
だけ他人と接するまいと努めてきたジョーは、心を封じるという酷く子供じみた方法をし
か知らなかったし、自分はそれだけ弱いのだということを自らに知っていた。端で見るほ
どジョーは自信に満ちてなどいなかったし、勇敢でもなかった。弱いからこそ殊更に強く
有りたかった。』(GRAVE STONE「英雄伝説より」)・・・・と、語られるに
然りである。
 そして又、悪夢の恐怖に脅え、死の淵に曝されて尚、決して諦めることをしない、手の
内をすべて曝け出したように見えて、それでも最後の一つを掴もうと本能的に生きてきた
・・・・と、言われた彼の生き様は健気でさえある。
 我々はそんな彼の一途さを見出したことに喜々とし、自らにして称賛した。
 だが、これが曲者だった。いや、不幸の始まりと言ってもいい。想像過多、かつ感受性
豊かな我々は、限りなく無責任にも彼の世界を広げてしまったのだ。実際、彼の素直な程
の内面は書く者につけ込まれやすいのだ。感情移入がしやすい分動かしやすいし、気持ち
を掘り下げていくのも簡単だ。その証拠に"ジョーは・・・"の傍観形式を取るより『俺
は・・・』の独白(一人称)形式を取った方が、より効果を上げることが出来るという点
でも納得がいかないだろうか?
 余談だが、健には傍観形式が効果を上げる。(私的な見解だが・・・)それは一見、表
に出さないと言われているジョーの感情が、観察すればする程手に取るように解ってしま
うのとは反対に、健は深読みすればする程、感情が見えなくなってしまうからだ。(彼に
は鋼鉄のベールを纏った鮮麗な微笑が似合う、美貌の青年を演じてもらわねばならない)
それに、健というのは痛めつけたくなるタイプなのだ。(グッと耐えるところが見たい、
とは健ファンのサディスティック精神の現れに他ならないのだが・・・)痛めつけようと
すれば書き手は第三者、或いは本人以外の作中人物にならなければならない。「苦し
い・・・、助けてくれ」より"苦痛に健の身体は戦慄いた"の方が、健の場合は悲壮感があ
り想像力が掻き立てられる。(声にすれば別だが・・・・)
 反対に"苦痛にジョーの身体は戦慄いた"より「苦しい・・・、助けてくれ」の方が切迫
感があり、文字で書いても色っぽいと思うでしょ。最後に「・・・・健」なーんて入れる
と、だぁーーーと、又想像が広がるというもの。そして、そんなことに快感を覚えてしま
った我々は、先の成り行きなどお構いなしに、更にジョーにのめり込んでいく。

 バードスタイルから皮ジャンに着替えさせ、羽根手裏剣を拳銃に持ち替えさせた。そし
て我々は驚喜した。スパイ、殺し屋、逃亡、クーデター、戦争、バイオレンス、裏切り、
友情、ハードロマン、あらゆる状況と場面を設定し、我々はジョーを楽しんだ。
 こうして生まれたのが進化設定=ジョージ・アサクラの基本設定である。
 考案されたと思われるのは本編終了後。そのため当然物語はその続編ということになる
だろう。ここではジョーはまだ元設定の姿を色濃く引き摺っている。我々が一番共感出来
るのは多分このあたりの彼だろう。本編よりも深く緻密にまた豊かに表現されている。
 瞳のPrussian Blue(当時はよく使われた)が定着したのもこの時期で、翳りのある彼
の横顔に定説の過去を張り付け、斜に構えた実はいじらしい程純粋で無垢な内面を設定し、
物語は次々と展開された。傍らに不可欠な健という存在を配して、本編での欲求不満を解
消させようとした我々の欲望の始まりだった。
 そして又、ここで重大な過失、いや大罪を犯してしまったのも我々だ。しかし、それは
決して我々の想像力だけが犯した罪ではない。彼の一途さ=純愛性がもたらした、犯され
るべくして犯された罪である。
 ・・・・・ジョーは健を愛してしまった。
 それが、苦悩の始まりだった。彼にとっても、我々にとっても・・・・・。

 今回、進化設定に基づき、ジョーを主軸にストーリーを書いていた私は「ジョーって、
なーんて優しい奴なんだろう」と、思わず惚れてしまいそうになった。自分の作った話で
あるにも拘らず、自己陶酔も甚だしいのだが感激してしまった。もっと、もっと健に我侭
を言わせたくなった。もっと健に苛めさせたくなった。しかし、それでもジョーは突っぱ
ねもせず、健気に健に付き合ってくれた。実に寛大で大いなる愛の持ち主だ。アラン神父

も顔負けの慈悲深さである。ところが・・・・、その優しさを追求していくに従って、彼
の定義は進化設定の基本枠からじわじわとはみ出していくのである。

 一途で突っ走りやすいジョーは、ストーリーの中でも知らぬ内に一人歩きをし始めます。
(・・・・これは決して書き手の未熟さばかりではないと、言い訳しておこう)彼のプレ
イボーイの手管にかかり、甘いムードに惑わされた私は、つい、うっかり健を相手にキス
シーンなんかを書いてしまいます。しまった!!と思ってももう遅い。せせら笑いを浮か
べたジョーは、健を手中にアルマーニのスーツに着替えます。(過去、きっと、こうして
第二設定のジョーが生まれたのだろうと、私は彼にスーツを着せた書き手の気持ちがよく
解る)そして、健の服を剥ぎ、ベッドに押し倒すのであります。
 ここまで来ると元設定とは、かけ離れたジョーになりますが、しかし、決して赤の他人
にはならないのが不思議なところ。健の場合、似ても似つかぬ別人と化しますが(多重人
格者でも、ああはならんぞ!)ジョーの場合はそれなりの過程と時間を積めば、立派に出
来上がるという代物である。(バキッ!ジョーファンの皆様ゴメンナサイ)それは過去、
進化設定、第二設定を定義付けた書き手のジョーに対する人権保守?の現れだろうか、領
域侵犯の境界線がはっきりある。(健の場合はない(笑))
 強姦までさせておいてどこに境界線があるのだと言われそうだが、健のように貞操観念
を剥奪された男娼ごときにならないだけ、大事に扱われていると言っていいのだ。それに
容姿だって、元設定を決して崩して描かれたものはないのだ。(あったのかも知れないが
私は知らない)・・・・と、健ファンの私はジョーの待遇の良さを訴える訳だが、ここで
当然上がるであろう、ジョーファンの抗議の声を少し代弁しておこう。諸悪の元凶はすべ
て健にあるのだと言う・・・・、
 進化設定から第二設定に行き付くところのコンセプトとは・・・・、
 考案されたと思われるのは、U、F、終了後。本編でクロスカラコルムを生き延びたジ
ョーは進化設定時代より成長してずっと大人になっており、病気話で弱くなった健の常に
上位にいて守る役目にあった。その過程で少しだけなら、と手を出したラブシーンが、思
いもよらず様々な方向に派生し、見る間に出来上がってしまった"僕らが愛の物語(バード
クインロマンス)"

『なんだってやる、俺の命だってくれてやる』 (華羅枯流夢「はるか秋の日に」より)
『今も昔も、俺の戦いはケンだけのものだ』  ( 〃 「and LAST LULLABY」よ
り)
『もう、おまえしか愛さない。おまえしか愛せない。誓ってやるよ』
                      (「ILLUSION」より)

 これが他ならぬ第二設定に行き着くところのコンセプトとなるべき背景である。そして
気を許した隙に、どっぷりとはまり込んでしまった我々は、罪の意識を感じつつも数多く
の物語を書き綴ったのだった。かくして、心優しいジョーは律儀に健に付き合い、愛し合

い、抱き合い、無理やりメロドラマの主人公に仕立て上げられたのである。その行き着い
た先が、アルマーニのスーツを着た、ケンのパトロンだった訳だが・・・・、しかし、

『俺は願った・・・、いつまでもいつまでも生き続けることを。誰を待つわけでもない、
ケン、おまえは死んだ。二度おまえには会えないとわかる。だが、俺は覚えている、いつ
までもいつまでも覚えている。ケン、おまえのことだけを・・・・』
(「ネバーエンディングストーリー」よ
り)
 このようにして語られた数多の言葉、だが、これらは紛れもなくジョーの口から出た言
葉だと我々は疑わないのだ。
『死なば諸共、おまえが正気に戻るまで俺はここにいるぞ』と、健が吐いた台詞よりずっ
とナイーブでありながら、強烈な印象をもって我々の心を捕らえたのだ。
 それは、常に健の死を持って描かれたジョーの姿ではあったが、ここに改めて我々はジ
ョーの純愛性を発見するのである。"健至上主義"とまで言われた彼の純愛こそが、永遠の
愛の定義であるということを。
 彼は愛するということを本能で成す人間である。なんの邪心も抵抗もてらいもない。だ
からこそ、ジョーは不滅なのだ。
 アルマーニのスーツを着ようが、葉巻を咥えようが、マフィアの首領に納まろうが、健
を強姦しようが、彼の根底たるものは決して崩れないのだ。いや、崩せないのだ、我々に
は。なぜなら我々は持っていないからだ、彼の持つところの真の純愛性というものを。
 それは彼の中で(・・・たとえ、どんなに書き換えられようとも)決して失われること
のない至上の聖域として我々を阻隔しているのだ。
 そして彼はこうも衝撃的に語っている、
『俺はケンに惚れている、惚れたから抱いた』・・・・・と。(「X」より)

 考えようによってはU、F、を経て、当然変わるべくして変わったこれはジョーの姿な
のかも知れない。そして、その姿は実は我々の憧れ求めて止まないところの"理想"であっ
たのではないだろうか?
 理想は追求されるものだ。だから、我々はジョーを描いたのだ。
 一途に激しく、奪い取るように愛したいと・・・・・、

 だが、ここでもう一度言っておこう、
 彼は決して我々が無理強いした変貌(・・・我々の理想とするところの)を受け入れた
訳ではない。それは書き手である我々が一番知るところである。前述したように、まるで
ページの上で生息する生き物のように、意思を持って動くジョーは、決して我々の思惑に
従ってはくれない。ストーリーの中で思いもよらぬ自己を主張され戸惑うこと数多、挙句
の果てには彼の主張に流され、話を書き換えるという事態にまで落ち込んでしま
う・・・・、
 いや、決して書き手の未熟さばかりではなく。
 我々は、そして、思い知るのである。高慢で浅はかな自身の思い上がりに。
"ジョーは初めからジョーだったし、常にジョー以外の何者でもなかった"という(至極当
然だが)愕然とした事実を。
 南部博士の部下から大財閥のオーナーにまで変貌させた我々の手腕は、確かにたいした
ものだったが、その影で彼が唇にあの不敵な微笑を湛え、それこそせせら笑っていたこと
に我々は気づいていなかったのだ。
 一途に激しく、奪い取るように・・・・、常に我々の意識下深く存在する烙印のような
情熱、それこそがジョーだったのだ。
 誰の手によって創造されたものでもない、ジョージ・浅倉という男は、コンドルのジョ
ーとして生まれた時から、我々の中で生息し成長を始めた一個の、疑うべくもない生命体
なのだ。
 元設定に従った進化設定、それに留まらず考案された、特技のところに"ベッドでの寝
技"を付け足さなければならない第二設定。全て話をややこしくしてしまったのは我々だっ
たが、結局のところ、振り回されたのも我々だった。
(健の服を剥ぎ、ベッドに押し倒したのは我々ではない。我々は彼の自由な意思と欲望を
尊重したにすぎない。もとい、それに従わされただけなのだ)

 冒頭に"得体の知れない男"と書いたが、実のところ、ジョー程明確にその正体を現す者
はいないのではないだろうか?
 彼を分析することなど無意味なのだ。
 始めておきながら甚だ無責任な言い様だと思う。しかし、これを以て結論とするのを許
して欲しい。
 彼は始めから私たちの前にいた、逃げも隠れもせず。

『本部の入口を健に教えねぇと、俺は、俺は・・・・、健! 健!!』
 その姿のどこに、我々の創造の介入する余地があっただろうか・・・・・・。






参考文献

    GRAVE STONE(1983発行)
           「英雄伝説」 作/そう銀星

    華羅枯流夢(1985発行)
           「はるか秋の日に」
           「・・・and LAST LULLABY」 作/魔木子

    X.CROSS(1986発行)
           「Fairy」 作/魔木子

    ILLUSION(1984発行)
           「ILLUSION・V」 作/鷲尾滋瑠

    ガッチャマン・クロスカラコルム篇(1985発行)
           「ネバーエンディングストーリー」 作/正岡武士



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