Love Hotel

by マロンパイ

 ギャラクターは相変わらず、叩いても叩いても、豊富な資金力とクモの巣のように張っ
た裏道から武器を得ていた。なりを潜めていても、どこかで準備をしながら力を蓄えてい
ると思うと健たちは焦る心を抑えきれなかった。
しかしとうとうある日、大掛かりな武器取引をするらしいとの情報を得て、5人は町の中
で潜伏しているであろう、ギャラクターを探した。 
数日が過ぎて、5人は集めてきた情報を確認するために、街の中心のレストランに集まっ
た。
「怪しいのはこの3人という訳か。どこか出入りする場所とかはわからないか?」
「港の倉庫を調べている所よ。このごろ怪しい船が入ってると言うから。」
「裏町は俺が見てきたが、この3人の足跡はなかったな。」
「何か手がかりがなければ街中を探し切れな・・・あっ・・!」
ジュンは言いかけて、突然立ち上がった。
「どうしたジュン」
「こんな事って・・・あるもんなのねえ・・・」
健が振り返ると、ちょうど写真の男の一人が健たちに向かって歩いてきた。ジュンは急い
で写真をしまい、いかにもグループで遊びに行く相談をしてるようにはしゃぐふりをした。
「ねえ、今度の週末はみんなでサイクリングでも行かない?」
「サイクリング?ダサいなあ、行くならドライブか、バイクでツーリングだろう。」
男は科学忍者隊がそばにいるとはつゆ知らず、5人とは少し離れた席に座った。さては、
武器取引の相手が現れるのかと、健たちはさりげなく話をしながら、神経はその男に集中
していた
しかしそれから間もなく、その男の席には若い女性が現れ、二人は楽しそうにメニューを
選ぶとワインを飲んで食事を始めた。楽しそうに話しながらワインを飲んで、ゆっくり食
事を楽しみ、なかなか席を立とうとしない二人にジョーはいらつき、ジュン達は気が抜け
てきた。
「あれじゃ商談って雰囲気じゃないわね。」
「くそっ、何をいちゃついてるんだ、あいつらは・・!」
「シッ・・!もう少しだ、我慢しろよ。」
 ようやく立ち上がった二人を健とジョーが追ったが、あとの3人は待機していた。
 その男、いや、今はカップルとなった二人はホテルらしい建物の前まで来ると車を降り、
中に入っていった。健も急いで車を降りて、中の様子をうかがい、ジョーを振り返った。
「追いかけよう、部屋を確かめないと。行くぜ」
と、健は足を踏み出したが、ジョーがその肩をつかんだ。
「なんだ?」
「ちょっと待て健、ここがどこだと思う?」
「え?」
「俺とおまえで行くのか?怪しまれるんじゃねえのか。」
ジョーのその言葉に、ようやく健もここがどういうところなのか察した。
「普通は男と女で行くものさ、そりゃあ、男同士で行く奴もいるだろうが・・・もっとも
任務ならおまえは行くよな。」
健とジョーは顔を見合わせた。任務のためなら、ゲイと思われることも厭わない健ではあ
ったが・・・
「そうだ、それならジュンを呼べばいいじゃないか、男同士で行かなくたって、ジュンが
いるんだ。ジュンとなら怪しまれんだろう。」
「ジュンと?マジか、おまえ」
「ああ、任務じゃないか」ツラッとした健の顔に
(わかってるんだか、わかってねえんだか・・・いや、これはわかってねえな)
 健は、二人が部屋のナンバーをしっかり確かめると、ブレスレットでジュンを呼び、
「ジュン、あのカップルは203号室に入ったから、俺たちはそのとなりか向かいの部屋に入
るんだ。3人は車の中で待機していてくれ」
「えっ、あたしが健と?このホテルに?」
思いもかけない提案にジュンは驚きを隠せなかったが、
「いいわ、健がそういうなら、任務ですものね。」
と、どこかうれしそうだった。
「ジュンとホテルだなんて、健もやるのう」
「お姉ちゃん、役得じゃない」
「バカね、二人とも、なに言ってるのよ」
ジュンは照れたが、健は大真面目で
「何をふざけた事を言ってるんだ、これは任務だぞ、あの男がギャラクターである証拠を
掴むんだ・・!」
竜たちはそれ以上冷やかせなくなった。が、ジョーは
(やれやれ、相変わらずだぜ、ジュンと二人で、ホテルなんて入っていいのかね。どうな
っても俺は知らんぜ)
これから先の事を危ぶんだ。
例のカップルの隣の部屋を取った健だったが、自分たちの部屋に行く前に、そっと203号
室の鍵を壊してジュンに開けさせた。わずかにドアを開けて中をうかがうと、幸いな事に、
二人ともバスルームにいるらしく姿はなかった。健はさっと、盗聴器をベッドの下に投げ
入れた。
「これでジョー達にはよく聞こえるはずだ。俺たちはとなりで見張ろう」
そうしてとうとう健とジュンはホテルの部屋に入ったが、二人はぐるりと部屋を見回した。
「ジュン、盗聴器がないかどうかよく調べるんだ。」
「盗聴器?あ、ああ、そうね」
二人は壁にかけられた絵の裏や、ベッドの下などを点検していたが、急に照明の色がピン
クに変わって、驚いた健とジュンのお互いの顔を赤く染めた。
「なんだ、この色は・・!」
また、ジュンはベッドの上に座り込んで、枕元のスイッチを調べていたが、突然ベッドが
回りだし、「キャッ」と声をあげた。
健が壁に寄りかかると、何かのスイッチにさわり、今度はムーディーな音楽が流れ始め、
驚いて体を離した。
「なんだっていうんだ、この部屋は、変な仕掛けばかりあって・・・」
「だって健、ここは・・・その・・・」
「うん?」「ラブホテルだから・・・・」
ジュンに言われて、改めて健は自分の入った所がどういうところだったのかを意識した。
ダブルベッドを見、壁の照明を見て、ジュンの顔を見ると、健はどうしたものかと困惑し
た。
(ベッドはダブルか・・・当然だ・・だがまずいな・・・)
「仕方ないわ、任務なんだから、そうでしょ?ベッドが回ろうが、明かりがピンクになろ
うが青くなろうが、あたしは構わないわ」
――ジュンの奴、やけに落ち着き払って――
しかし健はリーダーとしての態度は崩すまいと自分を律した。
一方ジュンは――これは神様が与えてくれた千歳一遇のチャンスよ――と、絶対このチャ
ンスを無駄にはしない気構えだった。
「とにかく、今夜はここに泊まるんでしょう?あのカップルもきっと今更動いたりしない
わよ。」
「どうしてわかる?」
「だって・・・あの二人、会った時にとても嬉しそうだったもの。ギャラクターにだって
恋人がいてもおかしくないでしょう?だからホテルに来てから、わざわざ別の所に行った
りしないわ。」
「む・・・まあな、一応盗聴器を仕掛けておいたから、ジョー達が何かあったら知らせて
くるだろう。俺たちは動きがあったら、すぐ追いかけるんだ。」
「ラジャー」とは言ったものの、
(ラブホテルに来てから、何の動きがあるっていうのよ。健ったら、任務になるとそのこ
としか頭にないんだから。)
ジュンはクスッと笑った。
「ね、健、あたし達も落ち着きましょうよ。たまにはホテルでのんびりするなんていうの
もいいじゃない?さっき見たら、バスルームも広広していい気持ちよ。あたし、先に入っ
てきていい?今日は暑くて、汗びっしょりだったもの。」
「え?あ、ああ、」
落ち着いてるジュンとは対照的に、健はだんだんと落ち着きを無くしていった。いつもは
冷静なリーダーの顔を崩さない健が、この状況にだんだんうろたえてきたことが、ジュン
は嬉しくなってきた。ゆったりとした浴槽に身を沈めながら、ジュンはこれからのことを
考えた。
「焦っちゃだめよ、焦ったら健はまたスッとリーダーの顔になってしまうわ。落ち着いて、
ゆっくりと・・・」
ジュンは自分にそう言い聞かせた。
ジュンはやがて、バスローブを着て髪を拭きながら上がってきた。
「ああー、いい気持ちだったわ。やっぱりお風呂も広いといいわねー。健も入ってくると
いいわ、さっぱりするわよ。」
そう言いながら髪を拭くジュンの耳元やうなじが、ほのかに赤く染まったのが見えると、
健はいささか胸がドキッとした。
 勧められてシャワーに入りながら、こんな事ならば、たとえゲイのカップルだと思われ
ようが、ジョーと来た方がよかったのではないかと考えていたが、シャワーから上がると、
ジュンがバスローブ姿でお酒と夜食の用意を整えていた。
「上がったのね、待ってたわ、飲みましょうよ。」
「ジュン・・!俺たちは任務中だぜ・・!」
「恋人同士が今からどこに行くって言うの。それになにか変な相談でもしてたら、ジョー
から連絡が来るわよ。」
そのジョーは、健が仕掛けた盗聴器でカップルの会話を聞こうとしたが、イヤホンを耳に
入れると、ムッ?という顔になって、じきにうんざりした顔でイヤホンをはずした。
「どうしたんだい、ジョー、何か変な話でもしてたのかい、やっぱり武器取引?」
甚平もイヤホンを手にとって、耳に入れようとしたが、慌ててジョーが取り上げた。
「おまえなんかが聞くもんじゃねえよ。おい竜、ばかばかしくてやってられねえ。車には
発信機を仕掛けておいた。俺たちも今夜は引き上げようぜ。」
「え、じゃ、じゃが健に黙ってそんなことしたら、あとでこっぴどく怒られるぞ。」
「こんなものを一晩中聞かされてたまるか・・!」
そう言ってジョーは竜にイヤホンを差し出したが、イヤホンを耳に差し込んだ竜は見る見
る顔を赤くした。
「だろう?」
「そうじゃな・・・」
ジョーは車のドアを閉め、走り出した。
「えーっ、なんだってんだよ、いいのかい、連絡もなしに・・!兄貴に怒られるぜ!」
「連絡したらジュンに怒られるかもしれんぞ。」
甚平はよくわからなかったが、とりあえずジョーの言う事を聞くことにした。
 一方ジュンと健は、ジュンが作ったウイスキーの水割りを飲みながら、バスローブ姿の
ままで向かい合っていた。
そうやって向かい合うと、ジュンの手が動くたびに、胸元の襟が動き、健の目の高さから
は谷間が見え、健は目のやり場に困っていた。
「ジュン、ちゃんと服を着てきたらどうだ?そのかっこう・・・俺だって一応男なんだぜ。
」
「だって、服は洗っちゃったんだもの。これでも毎晩洗濯してるのよ。あ、健のシャツも
洗って干しておいたわ。明日の朝までは乾くわよ。」
「ええっ!」
さっきバスルームに戻って、何か水音がしてたのはこのことだったのかと、健はどうしよ
うもなくなって体をソファに深く沈めた。覚悟を決めて、水割りを飲み始めた
が、ジュンがポツリと言い出した。
「ねえ健?」「ん?」
「健は今までに好きになった女の子っていなかったの?」
「え・・・」
「あるでしょう?好きになった子ぐらい」
そう言いながら、ジュンが身を乗り出してくると、ますます谷間が見えてきて、健は考え
るふりをしながら目をそらした。
「あたしはね・・・あるのよ」
ジュンはリラックスして饒舌になってきた。
「ライダー仲間だったわ。バイクに乗り始めたころに知り合って、一緒にツーリングにも
よく行って、楽しかったわ。彼にはいろいろな事を教えてもらったの。」
「教えてもらったって・・・・何をだ?バイクのテクニックか?空手か?」
ジュンは、健をチラッと見ながら、思わせぶりな口調で、
「だ・か・ら・いろいろ・・・よ。」
「ふ・・・ん・・」
健は自分のグラスの中を、マドラーでやや乱暴にかき混ぜると、グッとその中身をあおっ
た。
「それで今は?行かないのか?」
「行かないわ、もう行けないの・・・」
ジュンの元ボーイフレンドは、悲しい事にギャラクターとつながっていて、健の命令によ
って命を失っていたが、それを口にするわけには行かなかった。
「どうして?行けばいいじゃないか」
「だって・・・もう死んでしまったんですもの・・・・バイク事故で・・・」
ジュンは、思い出すとさすがに胸がつまり、ちょっと涙ぐんだが、すぐに顔をあげて、こ
とさらに明るい声で
「ね、健の話を聞かせてちょうだいよ。」
「え・・・だけどおれはずっと南部博士のところにいて、あとは忍者隊に入ったしなあ。
女の子と知り合う機会なんて・・・」
だが、ジュンから目をそらして考えるフリをしているうちに健は思い出した。
「ああそうだ、いつか、夏に南部博士の親戚の子って言うのが遊びにきたな。」
「その子が好きだったの?」
「さあどうかなあ、俺が13か14のころで、同い年だったが、ジョーと二人で相手をして、
ピクニックに行ったり、バーベキューをしたり、結構楽しかったな。」
「健もちゃんと女の子を好きになるのね・・・・」
ジュンはそっとため息をついた。
が、少しの間、思い出に浸っていた健が我に帰ると、ジュンが肘掛に座って体を持たせか
けてきた。
「お、おい、ジュン、酔ったんじゃないのか・・!」
「う・・ん、そうね・・・」
「しっかりしろよ、酒は俺より強いはずだろう。」
「健と二人でいられるるなんて嬉しいわ・・それもこんなところで・・・」
甘い声でつぶやくジュンに、健は内心困惑していた。。
忍者隊のメンバーとしてのけじめを・・・と、言おうとしたが、バスローブ同士ではけじ
めも何も言えたものではなかった。だんだん胸ははだけ、すそが開いて足がチラ
チラ見えてくると、健は目をそらしたが、ジュンは
「健って真面目なのよね、でも照れなくてもいいのよ〜」
と、健の首に腕を回して体を預けてきたので、健はソファの背もたれに押し付けられてし
まった。
「お、おい、ジュン・・・!」
 とうとう健もジュンを抱きしめてキスをしたが、ジュンはさらに強く健のキスを求め、
さすがの健も自分の動悸が速まるのを感じた。任務の時にジュンをかばって抱きしめた時
もあったが、お互いにそんなことを考える余裕はなかった。今、初めてジュンの熱い唇を
感じ、胸のふくらみと鼓動を自分の胸に感じると、とうとう健も手首のブレスレットをは
ずし、テーブルにあるジュンのブレスレットに並べた。
「け・・ん・・・」
キスを受けながら、ジュンは壁のスイッチに手を伸ばして照明を落とした。するとややほ
の暗いピンクの明かりが部屋を包み、床に落ちた白いバスローブがその光を受けて、ピン
クに染まっていた。
 一夜明けて健とジュンがJに戻ってくると、あとの3人が揃って帰りを待ち構えていた。
「お帰り〜!」
「よう、二人そろって朝帰りか。」
「役得じゃったなあ、健」
「いやぁねえ、みんな、何を言ってるのよ。」
ジュンは照れくさそうに笑ったが、その顔を見れば一目瞭然だった。
健の方は一瞬ひるんだが、あえて厳しい声で
「なんだおまえたち、俺に無断で勝手に引き上げたりして・・!奴が動き出さなかった
からいいようなものの、何かあったらどうする気だ・・!」
「車に発信機は仕掛けておいた。車を使わなけりゃ、追いかけるのはおまえらの役だろ
う。で、どうだったんだ、おまえらの方は」
「俺たちって・・・あれは任務だ・・・!任務中に何もあるわけがないだろう・・!!
何を言い出すんだ・・!」
ジョーはニヤリと笑ってとぼけた口調で、
「だから、その任務がどうだったと聞いてるんだぜ。他に何があるって言うんだ?何か
あったのか?」
「えっ・・・・」
「墓穴を掘ったな、健。」
健は絶句し、見る見るうちに真っ赤になるのが自分でもわかった。
(全く正直な奴だぜ。女にかけてはまだまだ俺の敵じゃねえな。)
ジョーはフフンッと鼻を鳴らした。
一方ジュンは上機嫌で、鼻歌を歌いながら掃除をはじめていたが、その様子を見ながら
ジョーは、一人心の中でつぶやいた。
(この勝負、ジュンの勝ち、だな。さすがに科学忍者隊のリーダーもかなわなかったか
・・ジュンもなかなかやるもんだ。)
ジョーは健とジュンの顔を見比べながら、一人ククッと笑った。

 The End



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