PC−JOE7 コンドルのジョーはセキュリティする

by もも

大鷲の健は、不機嫌だった。
宇治金時の食べ過ぎで壊した腹は治っていたので、そのせいではない。
ジョーのPCを足がかりにして、SMBLASTワームがISOに蔓延した。
南部に呼び出されて延々叱責を受け、挙げ句に、今度こそきっちりとジョーにセキュリテ
ィ教育するように、きつく申し渡されてしまったのだった。
−畜生、あの、歩くセキュリティ・ホールめ。
セキュリティ・ホールとは、文字通りセキュリティの穴である。今回のケースの場合、ジョ
ーはまさしくISOのセキュリティの大穴なのだった。

「健」
ジュンが駆け寄って来た。
「ジョーの端末、Windowsアップデート流しておいたわ。堂々2時間半よ。いつからかけ
てなかったのかしら」
さらに、エッチな壁紙がダウンロードできなくなると、ジョーはごねたらしい。
ジュンに頼んで正解だと思った。G3の推進力(キック力)はチーム随一なのだ。
「他部署へ感染した分は情シスが対応してる。俺たちにできるのはここまでだ」
「そうね。後はお任せするしかないわね。でも、まったく忌々しいわ。ジョーのせいで、あ
たしたちチーム全員のセキュリティ感覚がトんでると思われてるのよ」
みしり…。G1号ガッチャマンの、青筋が増えた音だった。

一方、ジョーは、壁紙のダウンロードも、報告書作成もできないのをいいことに、庁舎を
徘徊(あそんで)していた。背中にはジュンの足形がくっついていた。
「お、天然」
廊下でばったり。軍よりISOに居る時間のほうが長いオダだった。
「こんにちは」
ISOから軍のサーバにもアタックは掛けられていたらしい。が、統合情報部の鉄壁のフ
ァイア・ウォールがウィルスの侵入を阻んだ。長官のところと違ってうちのセキュリティは
万全ですの、とリサから南部におほほメールが届いた。一人を除けばわたしのところの
セキュリティとて、と南部は悔し紛れにレスを返した。あれは君の教え子だったね。あら、
彼は長官の秘蔵っ子でしょうに、と即レス。
どうでもいいが、負けず嫌いのふたりだった。

南部が言うところのその" 一人 "→ジョー。今日も、彼は彼なりに頑張っていた。
「なんかここんとこ低温だなあ。ちょっと汗かいてから白玉汁粉でも食わねえ?」
「いいよ。健も一緒に行くんだね」
「へ?」
オダの笑顔とともに、後頭部に激痛が走った。
「ジョー…。田舎ぜんざいは、俺の話しを聞いてからにしないか」
腹痛も治ったことで、パワー全開の健の踵落としだった。痛かった。
「特別応接室が、イイんだっけ?」

…のひとことに釣られたのがバカだった。
「いいか。ジョー、ウィルスだのワームだのの感染経路は大きく分けて3つだ。メール経
由、ブラウザ経由、そしてポートの直接攻撃。メールは、お前、こないだやったばかりだ
ったな。心あたりのないメールを開くと危ないんだぞ」
3日と経っていない。んなこといったって、裸の美女が踊ります、ってサブジェクトにあ
ったんだぜ。あれを開くなってほうが無理だろうが。
よくあるのは、「パッチです」とか「緊急…」とかいうタイトルだ。美味しい話しには、耳
を貸さないように。もし来たら、黙って削除してしまおう。
「ブラウザのも、お前やったばかりだよな。怪しいサイトを見に行ったり、怪しいバナー
をクリックしたりするのは厳禁だぞ」
だって、あれだって賞金1億円とか、ぷりぷりの無修正○画とかだったんだぞ。クリック
するなってほうが無理だよな。いいから、クリックしないように!
とにかく、わざとらしいものに、手を出してはいけないのだ。
「で、最後に直接攻撃してくるもんだが、これが、今回長官が怒ってるやつだ。まず、W
indowsアップデートが全然掛かってなかったお前のPCが感染して、そこからIS
OのPCにウィルスが蔓延したんだ。長官のPCに至っちゃ、アドミン権限のユーザまで
作られて、長官の名前で○メールが送信された」
最高権限(アドミン=アドミニストレーター)のユーザを作るウィルス/ワームは実在す
る。こうなると敵に好きなように遠隔操作されてしまう。南部は、自身のメーラーのアド
レス帳の宛先全てに、腐女子が喜んでしまうような○画を送信されてしまったのだ。恥ずか
しいだけで済んだのは、寧ろ不幸中の幸いだった。ディスク破壊や情報盗難などが発生し
ていれば、保証問題に発展しかねない。無論、今回の○画送信事件で南部の社会的信用
はちょっと??になってしまった。
因みに、南部さんてけっこうオチャメ、と思ってくれている向きもあったとか?

「でもよ、健。長官だってマメに窓更新してれば、そんなことにゃならなかったんじゃねえの」
時々は鋭いコンドルのジョーだった。まさしくその通りだった。山のような会議にかまけて
1ヶ月ばかり、Windowsアップデートを怠っていたのは、南部も南部だったのだ。
養い親がこれでは、やはり、秘蔵っ子はこの程度であろう。
「長官のPCは、今後は情シスの管理下に入る。ちゃんと情シスが更新する」
「俺のもやってもらえねえの」
みしり、また青筋の増えた音である。長官ならともかく、ジョーの面倒を見ろなどと情シスに
言えるか〜っ!
「お前のしこしこ集めた○画だの妖しい壁紙だの、全部処分されてもいいんだな」
う。と思った。それらはジョーの宝だった。でも、楽はしたい。PCなんか嫌いだ。でも、
そうだな。うん!
「俺の貴重なコレクションがパーになるってか…。お前がここで脱いでくれるんなら、別に
それでもいいけどよ」

その日の夕方、特別応接室で、G2号コンドルのジョーの死体じゃなかった失神状態が発
見された。発見したのは、南部ともに応接室を訪れた訪問客だった。
その訪問客は、南部に促されて先に室内に足を踏み入れたが、黙って退室して、南部に目
配せした。

「よ、容易ならぬ」

部屋には先客がいた。そのTシャツの背中にはパンプスの足形、後頭部にはバカでかいタ
ンコブが3段重ねになっていた。

「このままこちらでお話ししますか。俺は構いませんが」
せめて笑うとか、表情のひとつも変えて欲しいものだ。しかし彼は無表情だった。
「いや。私の執務室にしよう」
南部の耳に、リサのおほほがとどろき渡った。

く、くやしいぞ…。

南部の青筋まで、知らないうちに増やしてしまっているジョーだった。


END



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