PITSTOP

by Ninja-Sam
Japanese text by azure


1.

 午後からのどしゃぶりは、ケンがスピードウェイに着くころには、濃い霧雨に変わって
いた。湿気を含んだ空気は思いのほか寒く、ケンはセーターを持ってくれば良かったな、
と思いながら、フライトジャケットの襟を立てた。

 駐車場には、ほとんど車は止まっていなかった。ほんの数台が、雨の中、舗装された場
所にとめてあるだけだった。ケンは、スピードウェイの入口にかかるずぶ濡れの垂幕をち
らっと見て、その日レースの予定が入っているのに驚いた。それなら、普通、観客はまだ
席に座って、そろそろ出口へ移動しようかと、やっと考え始めるくらいの時間だ。なぜこ
んなに早く駐車場がからっぽになっているんだろう。

 スピードウェイに入っていくと、スタンドは閑散としていた。ずぶ濡れであちこちに水
溜りのできたトラックを、ケンは水滴をはね上げながらピットが並んでいる方へと横切っ
ていった。ピットは、どれも明るい色のテントで覆われていた。ジョーのクルーのピット
は、その列を3分の2ほど行ったところにあった。ピットの外には何もなかった。大型の
ナットやホースの切れ端、その他の破片、後で契約したトラックに回収されるはずの積み
重ねられた廃棄タイヤなど、通常レース場にあるガラクタの類は何も見あたらなかった。

 ジョーの車やチームの機材が雨にぬれないように張られたテントの中から聞こえた大き
な声に、ケンは足を止めた。そのうちの一人は、ジョーのチーフ・クルーのスタン・コワ
ルスキーだった。もう一人もケンはよく知っていた。深みのある低い声、ジョーだ。
 あいつ、ケンはため息をついた。また、何か壊したのか?

 ケンは、テントの入口を上げて中に入っていった。冷たい霧雨から逃れられるのがあり
がたかった。ジョーは、ピットの向う側で、防水布に覆われた作業用のワゴンに寄りか
かっていた。ジョーは、腕組みをして厳しい目つきで眉をしかめていた。彼のシャツには
エンジンのグリスの筋がついており、片方のこめかみにも同じような筋が、彼の乱れた髪
の中まで続いていた。ケンが入ってきたとき、ちらっとそちらを見ただけで、それきり
ジョーはケンを無視した。
「おい、機嫌をなおせよ、ジョー」
 スタンが言っていた。スタンのいつもは気のいい声も、少し苛ついていた。
「レースを中止したのは正しい判断だ。わかってるだろ。ストック・カーで雨の中を走る
のは無理だ。今夜には天気は良くなって、明日は、いつものとおり他の奴らはおまえの後
ろを走ることになるさ。」

 そうか、ケンは思った。それでジョーが不機嫌なわけだ。レースは延期されたのだ。
ジョーは、任務のせいでこの前の2回のレースにも出場できていなかった。支払期限を過
ぎたいくつかの請求を精算し、レースをし続けるために、ジョーがこのレースをずっとあ
てにしていたことを、ケンは知っていた。


 ケンは、ジョーの顔に浮かぶ感情の動きを見てとった。 -- ケンには、ジョーが何を考
えているか、よくわかっていた。科学忍者隊のメンバーの誰も「明日」をあてにすること
はできなかった。明日は、メカ怪獣が再びどこかに攻撃をしかけてきて、戦いに行かなけ
ればならなくなるかもしれないのだ。
 怒ったままのジョーを見て、ケンは内心ため息をついた。
 ビールを持って来て良かったぜ。
 ケンは、ジョーの方へ歩いていき、そのすぐそばの工具棚の上に6ボトルのパックを置
いた。ジョーはそれでもケンを無視し、まだチーフ・クルーと言い争いを続けていた。

「よお、ケン」
 スタンが言うと、自分の無礼な態度を指摘されたように感じて、ジョーはさらに顔をし
かめた。
「やあ、スタン、調子はどうだい?」
「ジョーの様子を見れば、わかるだろ。」
 スタンは、にやにや笑った。彼は、背の低い老人で、ケンは彼がカーキーとTシャツ以
外のものを着ているのを見たことがなかった。スタンは、これまでにジョーが組んだ3人
のうちの誰よりも、車とレースに詳しいと、ジョーはよく言っていた。スタンが自分から
話したことはないが、ケンは彼が前の仕事を失ったときに、一度この仕事から足を洗った
ことを知っていた。スタンの前の仕事は、多くのスポンサーのついた5台の車を持つ有名
なチームのチーフ・クルーだった。スタンは、オーナーが自分の息子をドライバーとして
チームに加えようとしたとき、その息子が、向こう見ずで未熟で、ドライバーとしての訓
練ができていないといって、これに激しく反対した。オーナーは彼をクビにし、息子をド
ライバーにした。その息子は、その後3度目のレースで事故死した。

「明日の午後に延期されたんだ」
 スタンは続けた。彼はバックボードを蹴って床に置くと、車のフロント・エンドの脇に
かがみこんだ。
「あんたの相棒は、ここでレースのことで不平を言うしかすることがないのさ。だった
ら、やめちまえばいいのにって思わないか?」
 ケンは、笑いをこらえるのに苦労した。
「俺に聞かないでくれよ。俺はあいつをずっと以前から知ってるけど、いまだによく理解
できないんだから。」
 ジョーは眉を少し上げたが、話に加わろうとはせず、ますます背中のワゴンにもたれか
かった。
 スタンは車の下へもぐりこんだ。
「ケン、そこの男はくよくよ考えることしかできないらしいから、ボンネットを開けてく
れないか?」
 ケンは、まだ顔をしかめたままのジョーをちらりと見た。ケンは肩をすくめると、車の
ところへ行ってストッパーを外し、ボンネットを開けた。
「それで、」
 スタンの声が車の下から聞こえた。
「郵便の仕事の方はどうだい?」
 ジョーは馬鹿にしたように鼻で笑った。ケンは彼をじろりとにらみつけると、スタンの
方を向いた。
「悪くないよ。」
「8分の5インチを取ってくれないか?ケン」
 ケンは振り向き、問いかけるようにジョーを見た。ジョーもじっとケンを見かえした。
ケンは、自分の手のひらを上にして、手を差し出した。しばらくしてから、ジョーはしぶ
しぶ工具棚の方へ行き、金属でできたひきだしをあけると、ケンにそのレンチを放り投げ
た。ケンはそれを受け止めて車の方へ向き直り、エンジン越しに、下にいるスタンに手渡
した。

 ジョーは、また腕組みをして、不機嫌そうな態度に戻った。何もできることはなかっ
た。ジョーにもわかっては、いた -- レースは延期になった。それは既成事実で、どう
やっても変えることはできないのだ。しかし、ジョーは、こういう不愉快で落ち着かない
気分が大嫌いだった。何か気を紛らわすものが欲しかった。どうして、こういうときにこ
そ呼び出しがかからないんだ。そうすれば、ギャラクターに当り散らして鬱憤を晴らして
やるのに、とジョーは考えた。しかし...それは、あまりに単純すぎる。バードスクラ
ンブルは明日、レースがスタートする直前に鳴ることだってありうるのだ。

 ケンがスタンを手伝っている間、ジョーは、うろうろと落ち着きなく歩き回っていた。
ひきだしを開けては、しきりと工具が正しい場所にあるかどうか確認したり、不必要なほ
ど乱暴にひきだしを閉めたりしながら。ケンとスタンは故意にそれを無視した。
 それから、ジョーはケンが持ってきたビールに目を留め、そのうちのひとつを開けると
一気にあおった。ふう、こいつはいいや。少なくともしばらくすれば酔いがまわって気分
も良くなるさ。ジョーは、ワゴンに背をもたせかけて、ケンがスタンに別の工具を手渡す
ために、さらに手を伸ばすのを見た。
 ジョーの目は、ケンが腕を伸ばしたためにTシャツのすそが上がってジーンズのベルト
との間の隙間にあらわになった肌に釘付けになった。

 ケンの肌。完全な、傷ひとつない、いや古い傷跡はあったが、それさえまるで白いモク
レンのような肌に施された銀細工のように見えた。
 そして、見た目だけでなく、感触も...

 情熱がジョーの体に激しい波となって広がった。ジョーは、我慢できずにうなり声をあ
げ、すぐそばのひきだしに注意を集中しようとした。ひきだしを開けては中身を確認し、
いくつかの工具を決められた場所に押し込んだ。しかし、そうしてうつむいたときに、ケ
ンの肌がのぞく隙間がさらに広がるのが、後ろにチラッと見えてしまったので、まったく
効果はなかった。
 ジョーは、目をそらし、残りのビールを一気にあおった。今の自分の不機嫌な気分、
レースが延期になってどれだけ腹を立てていたか、に集中しようとした。そして、何か気
を紛らわせるものを求めて周りを見回した。

 しかし、遅すぎた。ジョーは、自分が望むと望まざるとにかかわらず、ある映像を思い
出してしまった。昨日の朝、シャワーの中で、ケンは、ジョーに冷たいタイルに押さえつ
けられ、背をのけぞらせて、容赦のないストロークに、あえいでいた。ジョーは、口でケ
ンの首筋を容赦なく責め、肩に軽く咬みついた。上目遣いに見上げると、欲求にかすんだ
ケンのコバルト・ブルーの瞳が見つめていた。二人の上に水が降り注ぎ、ケンの力ないう
めきをかき消した。ジョーは、ケンをこうして抱いた。完全に自分の支配下において。
それは、ケンにはこれまで経験したことのないことだとジョーは知っていた。
 ジョーは、やがて、自分のジーンズが心地悪くきつくなってきたのを自覚して、その記
憶から我にかえった。くそっ。
 ケンは、何かスタンが言ったことに笑った。ジョーの目は、自然と声のした方へ向い
た。しまった。ジョーの視線は、すぐにどうしようもなくケンの*ssに釘付けになった。
淡い色のデニムの下で筋肉を伸ばし、ケンは車の方へ上体を曲げて前かがみになってい
た。絶好のポジションじゃねぇか...
 ちくしょう!もう一本ビールが必要だぜ。それは、外へ出て行って飲むべきだろう。

「ちょっとこれを見てくれ、ケン、そこから見えるか?」
「わからない。やってみるよ。」
 ケンは、車のエンジンルームの中をできるだけ覗き込もうと、爪先立ちになり、足を開
いて倒れないようにバランスをとった。ジョーは、その光景に内心うなり声を上げた。ケ
ンのジーンズの縫い目から目を離すことができなかった。それは、ケンの*ssから下へお
りていき、2本の足の間へと続いていた。ジョーは、指でその縫い目をたどって、そこに
あるものを握り、それが自分の手の中で固く大きくなるのを感じたくてたまらなかった。
ベルトを外してジッパーを下ろし、手を中にすべりこませて...

 ジョーは、苦労して、そのイメージを振り払い、次のビールに手を伸ばした。しかし、
あわてていたので、空きびんを工具棚から叩き落してしまった。ジョーは、どうにかそれ
が床に落ちる前につかみとったが、そのときに拳が工具棚の金属面にぶつかった。

 その音は、テントで覆われたピットに響きわたった。そのとき、ケンが肩越しにジョー
の方を振り返るのを見て、ジョーは視線をそらせた。ケンの視線はジョーの体の上から下
へと移動し、ジョーのジーンズの前の大きくなりつつあるふくらみに、明らかに目をとめ
た。それから、ケンはすべてお見通しだとでも言いたげに笑い、車の方へ向きなおった。

 ジョーは、信じられない思いで目をみはった。あのやろう!
 それは、戦いだった。

2.

「おい、ジョー。」
 スタンは大声で呼びかけた。
「エア・レンチを持って来てくれ。」
 ジョーは、口の端に意地の悪い笑いをひらめかせた。ジョーは、体を伸ばしてエア・レ
ンチの電源をいれ、その銃に似た工具の銃身にあたる部分をつかんで、車の方へ歩いて
いった。
「何かトラブルかい、じいさん」
「おまえ、知ってたな」
 スタンは、笑いながら言った。
「関節炎のおれには無理だからな。くそっ、ジョー、おまえ、どうやってこんなにきつく
締め付けたんだ? おまえがレンチを使ってるところなんか見たことないぞ」
「キツイ方がイイだろ」
 ジョーは、こっそりつぶやいた。再び体の中が熱くなってきた。ジョーは、エア・レン
チのノズルをケンの*ssから腿の間へ滑らせた。シャワーの中でのケンのイメージを、
ジョーは頭の中から消すことができなかった。ケンがどういう風に感じていたか、熱い肉
体のビロードのような触感、血を熱くさせる興奮した声、について考えるのをやめること
ができなかった。くそっ。こんな工具より、…でケンに触りたいぜ。ジーンズを剥ぎ取っ
て、引き寄せ、車に押さえつけて…。実際そうしていただろう、もし彼ら二人の他に人が
いなければ。
 ケンが金属の感触に体を硬くして、肩越しに視線を投げたとき、ジョーはニヤっと笑っ
た。ジョーは、エア・レンチを銃のように天井に向けて作動させてみせた。ケンは、視線
を戻し、また車の方を向いた。

「ああ、それだ」
 スタンは、彼の上、ほんの数フィートで何が起こっているかには気づかず、車の下から
答えた。
「どうやって締めたんだ、まったく」
「全部、手で締めただけだぜ、スタン」
 ジョーは、背後からケンに寄り添った。ジョーの熱い吐息をケンが感じるほど、ぴった
りと。
「ケンに聞いてみろよ、ケンが保障してくれるさ。」
 ジョーの舌が動き、ケンの耳のすぐ後ろを舐めた。ケンは、くぐもった声を出し、体を
震わせた。ジョーは、ニヤニヤ笑いが止まらなかった。
「これを下のスタンに渡してくれないか? ケン」
 ケンは体の位置を変え、尻を後ろにいるジョーの体に押しつけた。そして、ゆっくり
と、ジョーの股間を確実に刺激する円を描くように動かした。
「ああ、いいとも、ジョー」
 ケンは言って、ジョーの急に力の抜けた指から、エア・レンチを受け取った。

3.

 その感覚があまりにもよかったので、その快い接触を延長したいと、ジョーは、ケンの
腰をつかんで固定したかった。ゾクゾクする快楽の刺激を背骨で感じ続けられるように。
 しかし、くそっ、それはできなかった。

 ジョーは、不本意ながらケンを離し、ケンが体をかがめてスタンにエア・レンチを渡す
のを眺めていた。ジョーはケンのジーンズのベルトの上に再び露出した肌に目を留めた。
そして、その素肌の真ん中に、自分が持っていた冷たく濡れたビールびんの底をあてた。
 ケンは声を上げ、勢いよく立ち上がって振り向き、手を伸ばしてジョーの手首をつかも
うとした。しかし、その動きを予測していたジョーは、すばやく身をかわし、ニヤニヤ
笑っていた。
(Fuck you)
 ケンは、無言で中指を立てたが、その視線は怒りではない熱い情感をたたえていた。
(今やるか、それともスタンが帰るまで待つか?)
 ジョーも無言のまま合図を返した。

「おい、どうかしたか?」
 スタンが尋ねた。
「なんでもない」
 ケンは、なんとか完全に平静な声を装って言った。ジョーのニヤニヤ笑いを受け止めな
がら、ケンは手を伸ばし、ジョーのジーンズの中で硬くなっているふくらみに、ゆっくり
と指を這わせた。ケンは、ジョーが目を閉じまいと必死になっているのを見、ジョーの
コックが自分の指の動きによって痙攣し脈打つのを感じた。
 バカ、まったく、おまえは簡単なんだから...

 そして、ジョーがどうしようもなく取り乱しているのを見て、ケンはジョーのボールを
つかんで強く握った。
「くそっ!」
 ジョーは、突然、目を見開いた。ジョーはケンを捕まえようとしたが、ケンは、長年の
訓練の成果をみせて、横へ飛びのいてそれをかわした。
(この借りはかえすぜ)
 ジョーは、ケンをにらみつけて身振りで言った。
(やれるもんなら、な)
 ケンも無言で合図をかえした。ニヤニヤ笑うのは、今度はケンの番だった。

「おい、上で何をやってるんだ?」
 スタンが笑いながら尋ねた。
「ジョー、おまえ、またチームの機材をヘンなことに使ってんじゃないだろうな?」
 ケンは、スタンの問いに、鼻息を詰まらせ、おもしろがって目を丸くした。ジョーの顔
は、さらに険悪になり、腕を組んだが、この問いには答えなかった。
「ケン」
 スタンは続けて言った。
「ちょっと手伝ってくれ。こいつを支えていてくれないか?」

 まずい。この状況でジョーに背中を見せることはしたくないが...しかし、今ここで
弱みを見せることは、ケンにはできなかった。ケンは、その瞬間ジョーのブルーグレイの
瞳の輝きと「おまえの*ssはもらった」とでも言いたげな表情をあえて無視した。ジョー
の顔の緊張は解け、はるかに熱いものに変わった。
 ケンは、平静さをかき集めて車の方へ行き、スタンを手伝うために、エンジン・コン
パートメントへ手を伸ばした。

 熱い感覚がケンの血管を走りぬけた。ジョーが後ろから近づいてきて、膝で荒っぽくケ
ンの脚を押し開いたのだ。ジョーの手がケンの腰を固定し、その瞬間、ケンはジョーが前
置きもなしに彼のジーンズを剥ぎ取り、すぐその場でケンに乗りかかるのではないかと
思った。その考えがケンの神経のすべてに火をつけ、ケンの頬を紅潮させ、ケンは、あえ
ぎ声を漏らさないよう必死で耐えた。ジョーのもう一方の手で彼の腿を滑り降り、彼の
コックとボールを撫ではじめる前からすでに、ケンはスチール・パイプのように硬くなっ
ていた。自分の体が、どれだけ激しくそれに応えたがっているか、どれだけ猛烈にそれを
望んでいるか、を表に出さないようにするには、これまで受けた訓練で培ったあらゆる努
力を必要とした。
 ジョー、してくれ、just do it、今すぐ...

 ジョーは、感じやすく脆弱な場所をすべて知っている無慈悲な指でケンを責めた。ケン
の体がおののき、何とか自制心を保とうと努力して身を硬くするのがわかった。ジョーは
ケンの*ssが弾力を持って自分の手を押し返すまで待って…それからいたずらっぽく笑っ
た。ジョーはケンの腰から手を離し、ビールびんを手にして、その冷たい中身をケンの
ジーンズの後ろから、甘く誘惑的な割れ目の間へ滴らせた。
 ケンは悪態を飲み込み、ビクッと急に動いた。スタンが何があったのかと尋ねたとき、
ケンが明らかに歯を食いしばって答えるのを聞いて、ジョーは大声で笑い出さないように
するだけでやっとだった。大丈夫、ちょっとオイルで滑っただけだ、とケンは言った。

 俺はオイルでおまえの滑りを良くしたいぜ、ジョーは思った。ジョーの指は、起って痙
攣しているケンの一部を後ろから握りたくてうずうずしていた。それは、ゆっくりと時間
をかけた拷問だった。ジョーは、痛みを感じるほど、耐えがたい状態になってきていた。
 ジョーは、熱くきついケンの鞘に自分自身のものを埋めたくて、イライラし、小さくう
なった。おそらく、ここを出てどこか他所へ行った方がいいだろうが――
 どこか、くそっ、できるだけ近いところで...

 しかし、そのためには、ケンにそう頼まなければならない。そうすれば、ケンに知られ
てしまうだろう。ジョーがどんなにケンの服を剥ぎ取って、その美しく硬いものを喉の奥
まで入れたいと思っているかを。ケンの漏らす雫を味わった記憶が、突然強烈によみがえ
り、ジョーは生唾を飲み込んだ。

 くそっ、スタンの奴さっさと帰っちまえよ。もう、これ以上、我慢できねえ...

4.

 ビールで濡れたケンの背中の一部がきらりと光った。くそっ。まるで明るい光に魅惑さ
れる蛾のように、ジョーは心の中でうめき、どうにもできない衝動に身を任せた。ジョー
はケンの腰をつかんで車に押し付けると、前かがみになり、飢えたように露出した肌に口
を這わせた。ビールと新鮮な汗を味わい、ケンの熱い香りを吸い込んだ。ケンがジョーの
下で、びくっと身をふるわせた。ジョーは、ケンのジーンズをできる限り下へ引っ張り、
これから起こることへの予感で彼をじらしながら、唇と舌で責めた。ケンの*ssはぐっと
締まっていた。ジョーの舌が接近するのにどうしようもなく反応して、筋肉が動くのを、
ジョーは見た。ジョーのコックは、それに反応して、痛いほど脈打った。

「あと、もう少しだ。」
 スタンが言った。

 冗談じゃねえ。
 ジョーは、やめたくはなかったが、まったく、どんなに続けたかったか...しかし、
今すぐ、これをやめなければならないということはわかっていた。そうしなければ、スタ
ンが車の下から出てきて、ジョーのコックがケンの熱くキツイ*ssに根元まで埋まってい
るのを見つけてしまうだろう。くそっ、ヤツの驚いた顔が目に浮かぶぜ...
 ジョーは大声で笑い出しそうになった。ジョーは超人的な努力で、ケンから離れ、立ち
上がった。そして、その証拠を隠すために、ジャケットをつかんだ。

「さあ、終わった。」
 スタンが言った。
「助かったよ、ケン。」

 ケンは、ゆっくりと立ち上がり、夢遊病者のようにジョーの方を向いた。ケンの顔が見
えたとたん、ジョーにはその理由がわかった。ケンの頬は興奮で紅潮し、視線はわずかに
焦点が合っていないようで、瞳孔が拡大し、青い瞳はほとんど黒く見えた。暗い色の豊か
な髪が乱れて、肩にかかり...ああ...キレイだ...。頭の中を探し回ったが、そ
の言葉しかジョーには思い浮かばなかった。ケンに手を伸ばして捕まえたいという圧倒的
な衝動に耐えるために、ジョーは痛いほど拳を握りしめた。そして、ケンはゆっくりと下
を向き、ジョーはケンのジーンズの前に広がる濡れた場所に目を留めた。

 ああ、味わい損ねちまった。ジョーは、半歩前に出て、手をケンの髪に差し入れ、多く
て暗い色のシルクのような髪に指をからませ、痛いほど強くケンの頭を引きよせた。
 ジョーは、自分のものだと言わんばかりに、乱暴にキスをすると、強い力で、別のもの
でのコミュニケーションを続けようとした。ジョーは、それを望み、必要としていた。
 今すぐに。

 バック・ボードの車輪がピットのコンクリートの床をこする音が聞こえた。そのほんの
一瞬前に、ケンはさっとジョーの腕から逃れていた。ジョーは、一瞬何が起こったのかわ
からず、口唇に突然の喪失感を感じながら、そこに立ちつくした。何かが、ジョーの胸に
あたった...
 それは彼のジャケットだった。ジョーはあたりを見渡し、驚いて眉を上げ、ケンがピッ
トを横切って、道具棚の方へ歩いていくのを見た。ケンの下半身は半分むこうを向き、力
強い指でビールの栓を空けた。唯一、ジョーが見た、さっきまでの熱い関係のなごりは、
ケンがビールを長く長く一息で飲む間の筋肉のわずかなふるえだけだった。

 スタンは、ウーッとうめきながら体を伸ばして立ち上がった。
「俺は帰るよ。帰る前に鍵をかけるのを忘れるなよ。」

5.

 スタンが自分の道具を片付け、ピットの入口を覆うキャンバス布を持ち上げて外へ出て
行くまでの時間は、ジョーには際限なく長く思えた。そして、その次の瞬間、ジョーは、
あごの横に鉄の塊のようなものが風を切って激しくぶつかるのを感じた。
 気がついたとき、ジョーは、汚いコンクリートの床に伸びていた。

「気でも狂ったのか!ジョー」
 ケンは顔を蒼白にして激怒していた。彼は、まだ何が起こったのか把握できていない様
子のジョーを引き起こして立たせ、その手からジャケットをもぎ取った。
「いったい何を考えてるんだ、おまえは!」
「俺が何を考えているかって?」
 ケンの胸をグイッと押して、ジョーは、言い返した。
「始めたのは、そっちだろ!」
 ケンは、またジョーに殴りかかったが、ジョーは今度はその拳をうまくよけた。
「なんだと?まったく、どうやったらそんな誤解ができるんだ?!」
 ケンは、ジョーに詰め寄った。ケンはジョーの腕を捕らえて引っ張り、力強い片腕を胸
に回して羽交い絞めにした。そして、もう一方の手でジョーのシャツを引きちぎりそうな
勢いで、頭の上まで引き上げた。彼の指はその肌を感じたくてウズウズしていた。
「どうやって俺が始めたって言うんだ? 念動力でも使ったってのか?」

 ジョーの全身はビクッと動いた。ケンが口でジョーの首すじや肩を責め、人の首さえ容
易に折ることのできる手が激しい力でジョーのちょうど肋骨の下をしっかり捉えていた。
「やっぱり、おまえが始めたんじゃねえか。」
 ジョーは目を閉じたまま、手探りでケンのベルトをいじりながらうめくように言った。
「もうちょっとで、見つかるところだったじゃないか!」
 ケンの声からは、急速に怒りが消え、完全に別の種類の熱っぽさがとってかわった。
ジョーの手がジッパーに届き、それを引き下ろすのを感じて、ケンは息を漏らした。あの
渇望が、ケンの中に広がった。あの朝、目覚めたときと同じ−−あの気の狂うような、心
の奥底からの火のついたような渇望、ああ、それはこうすることでしか癒すことはできな
い...ジョーはケンの頭をグイと引き、自分の口でケンの口をふさいだ。力強い指が、
ケンの熱く大きく、そうされるのを待ち望んでいたものを包み込んだとき、彼は深いうめ
きを飲み込んだ。

「すごく濡れてるじゃねえか。」
 ジョーは、ささやき、自分の手がケンの雫で濡れて滑らかになるまで、手を上下に動か
した。
「おまえを味わいたいぜ。」
「俺が先だ。」
 ケンは、あえぎと、体の中から湧き上がる激しい悦びの波に呑まれそうになる息をなん
とか制御した。ケンはジョーをつかんで、体の位置を入れ替え、ジョーの背中を激しく車
に押し付けたので、あやうく車のボディがへこむところだった。ジョーは抗議しようとし
たが、言葉は出てこなかった。ケンは、ジョーをそこに固定し、ベルトを外し、ジッパー
を下ろして、ジョーのジーンズを足元まで引きずり下ろした。ケンがジョーのコックを
握って、一連の滑らかな動作でそれをくわえたとき、ジョーの頭は後へのけぞり、体は細
かく震えはじめた。

 ああ、すごくイイぜ...
 ジョーは、それがどんなにイイか、自分の熱い場所に感じるケンの熱く湿った口の感覚
がどんなにすばらしいか、ケンに伝えたいと思ったが、あまりに激しい悦びにうめき声と
すすり泣くような声をあげることしかできなかった。ケンは頭を上げ、口をジョーのコッ
クの先端まで、ずっと吸引しながら動かした。ケンは舌でその先端を嘗めまわし、敏感な
スリットを探して、身をふるわせるうめきとふるえを起こさせ、じらしながら、先端の神
経が集まっている場所を責めた。ジョーの指がケンの髪に絡み、腰を動かして、ケンの口
を自分の望む場所へ戻そうとした。ジョーは、ケンのあいた手が自分の両足の間へ滑り込
むのを感じた。その手は、彼のボールを撫ぜ、そのすぐ後の非常に感じやすい場所を探し
た。ジョーは目の前に火花が散ったような気がして、あえぎ声をあげた。ケンの指は容赦
なくジョーを刺激し、彼の全身を火の海に変えた。ケンが、再びそれをくわえ、喉の奥ま
でいれたとき、ジョーはもう限界だと思った。
 ああ、たのむ、あと一回、一回だけでいいんだ...

 そのとき、ケンの手が彼のコックの根元をつかんで引き出すのを、ジョーは感じた。
ジョーの切迫したクライマックスはそこで中断された。ケンの熱い口が彼を離し、ケンが
まっすぐ立ち上がって、ジョーに激しいキスをした。ジョーは不満そうに目を開いた。
ジョーは気も狂わんばかりにケンを近くに引き寄せ、続きをさせようとした。
 ああ、このままいかせてくれ...
「ケン、たのむ...」
「何を、だ?」
 青い空の色に燃えるケンの瞳が、ジョーの目に焼きついた。

 ジョーは、ケンを万力のような強い力でつかみ、顔から車に押し付けた。ジョーはケン
のジーンズを引き下ろし、その美しい*ssをしばらく凝視した。それから、ケンのすぐ後
に立つと、エレクトして脈打っている自分のものをケンの両足の間へ滑り込ませた。その
摩擦は、耐え切れないほどすばらしく、すぐに彼は元どおりになった。ジョーは、まだ持
ちこたえる必要があった。ジョーはそれがケンにも同じように影響を及ぼしているのを
知っていた−−ケンの黒い頭はうなだれ、ジョーはケンの体が悦びに震えるのを感じた。
「そうだ」
 ジョーは言った。ジョーの熱い息がケンの耳のそばにかかり、ジョーは手を前に回し、
ケンのエレクトした熱いものをつかんで、からかうように、気を狂わせるように、ぎゅっ
と握った。ケンの体による摩擦を自分のコックにとても気持ちよく感じながら。
「おまえが望んだんだ、そうだろ? おまえが、こうして欲しかったんだろ。」

 ジョーは車の上に置きっぱなしになっていた半分ほど空になったビールに目をとめた。
ジョーは、それをつかむと一口飲み、ケンが抗議のうめきを上げるのを無視して、ケンか
ら後へ離れた。ジョーは運転席のドアを開け、両手でフロントシートをつかませて、ケン
をちょうどよい角度まで前かがみにさせた。そして、冷たいビールをその甘美な*ssへ注
ぎ込んだ。
 ケンは叫びを上げ、抵抗しようと身をよじった。しかし、ジョーは彼を離さず、注ぎ続
けた。それから、ジョーはビールをわきに置き、舌でその流れた後をたどり始めた。

「ああ、ジョー、たのむ、ああ、そう、止めないでくれ、ああ、ジョー、ジョー...」
 ケンはあえぎ、身をよじりながら、意味のない言葉を口走っていた。ジョーの巧妙な舌
が作り出す刺激が、無数の電撃のように背骨を駆け上がった。彼は大きく足を開き、連続
的にうめいた。ジョーの口が無意識にそれを止めようとするのに逆らって、自分から*ss
を差し出した。イイ、すごくイイ、すごく...ジョーの舌が彼の中に入り込んでいた。
 ケンのコックは耐え難くなり、漏れ出した雫は一筋の流れになりつつあった。ケンは、
それが自分のボールの上に滴り落ちるのを感じ、ジョーがそれを味わっているのを知っ
た。その思いが静脈の中で彼の血潮をさらに熱く暗いものにした。

 それ以上耐えられなくなり、ケンは自分のものをつかもうと身動きした−−おそろしく
高まる圧力を楽にしてしまおうとして。しかし、ジョーがすぐに彼に覆いかぶさって、彼
をまっすぐ引き起こし、彼の手をピシャリと打って引き離した。
「そいつは俺のもんだ。」
 ジョーは、ケンの耳たぶを噛みながら言った。
「おまえには、さわらせねえ。」
 ケンはジョーに抗議しようとしたが、そのとき、ジョーが二本の濡れた指を彼の中に入
れたので、息ができなくなりそうだった。ケンは、喉の詰まるような声をたて、腰を引い
てできるだけ遠ざかろうと抵抗した。ジョーは、空いた方の手で、ケンを胸にきつく抱き
よせた。そして、ケンの頭は力なく後へもたれ、ジョーの肩の上に落ち、ジョーは深く激
しいキスをした。
「言えよ。」
 ジョーは要求した。
「言えよ、どうして欲しい?」

 ケンは欲望におぼれた瞳でジョーを凝視したが、その言葉を口にすることはためらった。
「言えよ!」
 ジョーはしつこく言い、ケンの体の奥深くにある感じやすい場所を探し、そこを容赦な
く責めた。雷光が彼の体に衝撃を与え、ケンは、大声をあげた。そして、視界はグレイア
ウトし、苦しい息の下であえぎ続けた。
 ジョーは、ケンの耳の下の肌に口唇と舌を這わせた。
「言えよ。」
 ジョーはささやいた。その声は、ケンの首の後ろに深く響き、ケンはそれを耳で聞くと
いうより、体に感じていた。
「Fuck me.」
 ケンはうめくように言った。ジョーの指が敏感な場所を撫でるのに合わせて、彼のコッ
クが痙攣するのを感じながら。
「いれて、くれよ...」

 まさにその瞬間、二人の腕のブレスレットが鳴り出した。

6.

 二人は凍りついた。

 まさか...そんな...冗談だろう。

 ジョーは、がっくりとうなだれ、彼の額に浮いた汗は、ケンの首の後ろを流れ落ちる汗
と混じりあった。ケンの髪からは、いつもシャワールームの棚に置いてあるシャンプーの
香りがした。そこでいつも彼らが愛し合ったことを思い出し、ジョーはケンの胸にきつく
腕をまわした。呼吸を整えようと、ケンの肋骨が動くのを、ジョーは感じた。

 それから、ケンが、ゆっくりと仕方なく、左腕を顔のそばへ持ち上げるのを、ジョーは
見た。ジョーの腕が勢よく動き、ケンの手首をつかんだ。
「応答したら、おまえの首をへし折るぞ、ケン!」
 しかし、ケンはもうふざけてはいなかった。ケンは身をよじってジョーから逃れると、
ガッチャマンとしてのレーザーのように鋭い視線でジョーを見た。そして、呆然とした
ジョーがとっさに動けずにいるうちに、ケンはジョーの胸に手をあてて押し返し、ジョー
から離れた。

 ジョーは、信じられないといった顔でケンを凝視した。
「おまえは、俺をからかったのか?」
「俺たちは科学忍者隊だ、ジョー。」
 ケンは、厳しい口調で言った。そのガッチャマンとしての声色は、この状況には、
少々、不釣合いだった。彼がTシャツしか身につけておらず、ジーンズと下着を足元まで
下ろしていることを思えば。しかし、ジョーは、非常に腹を立てていたので、それを笑う
どころではなかった。
「俺たちには、果たすべき任務がある。俺たちは、行けと言われれば、いつでも、どこへ
でも、行かなければならないんだ。」
 ジョーは、目をむいた。
「いやだ!くそっ!ケン、そいつは、おまえの頭の中に刷り込まれてでもいるっての
か?」
「おい、おまえの気持ちは、わかる。でも、それは後で話そう。俺たちは、今すぐ行かな
ければ。」
 ジョーは、首を振った。
「いやだ。」
 ケンは、口を引き結んで言った。
「俺は、一緒に来いと言ってるんだ、G−2号」
「おまえは、好きなようにするがいいさ、ケン。でも、俺はどこへも行かねえぞ、こんな
...」

 ケンは視線を落とし、ジョーはそのスカイ・ブルーの瞳の奥深くに、さっきまでの渇望
の名残を見たと思った。ジョーは腹を立て、ケンを無視し、半ばそっぽを向いて、自分の
手で自分のものを握った。ああ、ちくしょう、ちょっとはマシだぜ。楽になるのは、もう
時間の問題だった。
 ジョーは、ケンが見ていればいい、と思った。
 ざまを見ろ、おまえが逃したものを見ればいいさ。
「しないでくれ...頼む...」
 熱っぽさをむき出しにしたケンの声に、ジョーは驚いて顔を上げた。そして、ケンの激
しく切望する視線と目があった。
「それは、俺のためにとっておいてくれ、ジョー。この埋め合わせはするから...約束
する...」
 もう、我慢の限界だった。ジョーは、大声をあげて、ケンに飛びかかった。

 昔、最初の戦いの頃、彼ら二人はまったく互角だった。そして、カミソリの刃のように
鋭い冷静さと、先を読むほとんど超自然的ともいえる能力を持ったケンは、ジョーを負か
すことも珍しくはなかった。しかし、今やジョーはサイボーグであり、すべてにおいて優
位に立っていた。ジョーの鋼のような腕がケンを捉え、足を浮かせ、ケンは抗議の叫びを
あげた。自由を取り戻そうと全力で抵抗し、ケンは変身するために手首を下ろそうとした
が、ジョーは片方の手でその口をふさぎ、もう一方の手でケンのブレスレットを外した。
「ジョー、離せ!」
 ケンは、顔を真っ赤にして、今や本気で怒っていた。
「ブレスレットを返せ!これは命令だ!」

 ジョーは、それを無視した。ジョーは、荒っぽく足音を立てて車の後ろへ回ると、トラ
ンクを開けて、ケンと自分自身のブレスレット−−2つともまだ鳴り続けていた−−を放
り込み、手荒く閉めた。そして、ケンを空いたままの運転席のドアのところまで引き戻す
と、バックシートに荒っぽく投げ出したので、ケンは車の側面に頭をぶつけ、シートから
落ちそうになった。
 目がくらみ、ケンは起き上がろうともがいた。
「ジョー、おまえが今までやった馬鹿なマネの中でも、こいつは最...」
 ケンは急に黙った。ジョーが腹ばいでバックシートに乗り込んできた。
 ひどく怒った顔で、エア・レンチを振りかざして。
 ケンは目を見開いた。
「ジョー...いったい何を...しようと...ジョー、やめろ...ジョー」

 ケンは、シートの上で後ずさろうとしたが、ジョーはその足の上に乗り、効果的にケン
の動きを封じた。そして、ジョーは身を乗りだした。ケンは最悪の事態を覚悟したが、
ジョーは彼のシャツを頭の上まで引き上げて脱がせただけだった。それから、ケンの両手
首をつかむと、両腕を上げさせた。ケンが意表をつかれ、まばたきすることもできないう
ちに、ジョーはエア・レンチのコードをケンの手首に巻きつけ、車の二つの窓の間に回し
て、きつく引っ張って固定した。

 こんなことが、あるはずがない...ケンはトランクの中で、まだブレスレットが鳴り
続けているのを、かすかに聞いた。ケンは、拘束をゆるめようと、ありったけの努力をし
たが、無駄だった。
「ジョー、離せ!いったい何を考えてるんだ!これを外したら、俺はおまえを殺すぞ。殺
してバラバラにしてやる。おまえを追って、もう一度、殺してやる!ジョー!非常事態な
んだぞ、応答しなければならないんだ。俺たちは...」
 ジョーは、ちょっと手を止めて、ケンをにらみつけた。
「しゃべれないように、口もふさがれたいか?」
 ジョーの言い方からして、脅迫してでも最後までやりとおすつもりであるのは、疑う余
地がなかった。ケンは、口を開きかけ、考え直して、また口を閉じた。
「いい子だ。」
 ジョーはつぶやくと、ケンのジーンズと下着を完全に足から引き抜いた。
「今は、俺のやり方でやるんだ。代わりに、おまえは、後で俺を好きにすればいいさ。」

 ジョーがケンの足を左右に押し開き、ひざをついてその間へ体を入れてくるのを、ケン
は無言で見つめていた。ジョーが、ケンの体を、燃えるように激しく露骨な視線で眺めま
わし、ケンは自分の血が両足の間に集中し、激しく脈打つのを感じていた。ケンは、まっ
たく唐突に、自分が縛られ、裸で、広げられて、まるでごちそうのようにジョーの前にい
ることに気がついた。完全にすっかり無力だった。ジョーは、ケンをどうとでも望むよう
にできた−−ジョーを止めるすべはない。ジョーは、ケンを殺すことすら一瞬のうちにで
きるだろう。ケンを殺すことも、あるいは...

 まだ、しかめっ面をしたままのジョーが、その手でケンの堅いコックを握り、ケンは唇
をかんでうめき声を飲み込んだ。ジョーがゆっくりと手を動かしている間、ケンは、そこ
から目を離すことができなかった。
「ばかなヤツだな、おまえは、ケン。このまま、おまえをここに残して、俺は帰っちまお
うかな。いい格好だ。朝になったら、クルーがおまえを見つけるだろうぜ。」
 まさか、そんな...ジョーがそんなことをするはずが...
 ケンは、動揺を顔に出してしまったに違いない。ジョーは、クックッと意地悪く笑いな
がら、首を横に振った。
「俺は、こうしてるおまえが好きだぜ。」
 ジョーの視線は、ケンのエレクトしたものに、ケンの引き締まった腹の筋肉の上で光る
雫に、注がれた。ジョーは、表情を変え、眉を少し上げて言った。
「おまえも、こうされるのが好きなんだろ。」
 ケンは、髪の毛の根元まで真っ赤になった。
「ばかやろう。」
 しかし、ジョーの目は、新しい玩具を見つけたように輝いていた。ジョーは、指をケン
のコックの激しく震えるラインから、うずくボールの下へ動かした。ジョーはケンの顔を
見て、意地の悪い笑いを浮かべた。
「好きなんだろ。感じてるじゃねえか。」

 ケンは、怒ってというより、恥ずかしさで、ジョーをにらみつけた。ケンは低いうめき
声を止めることができなかった。ジョーの指が襞ですぼまった入口を撫で、ゆっくり円を
描いて動きながら、そこをさまよっている間。ケンのコックは、ビクッと動き、どうしよ
うもない期待に脈打っていた。真珠色の雫を連続的に滴らせながら。ジョーは、それを指
ですくいとり、ケンの激しい視線を見つめ返しながら、わざとゆっくりと口元へ持って行
き、きれいに舐めた。
 ケンは、すすり泣くような声を上げ、自分を縛っているコードを無益に引っ張った。

 ジョーは、ケンの上にかがみこみ、ケンに口づけて、彼自身を味わわせた。
「楽しもうぜ。」
 ジョーの声はケンの耳もとに低く響き、ジョーが耳たぶを舌で舐めたのでケンは震えた。
「さて、あのくそ忌々しいブレスレットが鳴り出したとき、どこまでいってたんだったか
な。」
「ジョー、」
 ケンはささやいた。自分の体の中から湧き起こる熱情と戦いながら。
「俺たちは...俺たちは行かないと...」
 ジョーがケンの首を噛み、強く吸ったので、ケンは背をのけぞらせ、叫び声を上げた。
ケンは、彼を拘束しているコードを引っ張っり、その途端、自由を奪われているという感
覚に衝撃的な快楽を感じてうろたえた。ジョーは正しかった。いまいましいヤツ。今まで
に経験したことのない、この状況はケンを興奮させた。無力で、逃げることもできず、完
全にジョーに翻弄され...ケンは、それを憎んでいたが、同時に求めてもいた。そし
て、縛られた手首が引っ張られるたびに、静脈の中に炎が走った。

 ジョーの熱い口が、舐め、噛み、ケンの胸から下へと移動した。
「どうして欲しいか、言ってみろよ。」
 ジョーは、ケンの乳首を口に含み、うなるように言った。歯がそこにあたるのを感じた
とき、ケンは、ジョーの名前を叫びそうになった。彼は、自分の体に荒れ狂う欲求を信じ
ることができなかった。頭がくらくらし、目がくらみ、心臓の鼓動が耳の中で響いてい
た。ケンは、それに抗う気力を失いつつあった。それも急速に。
「言えよ。」
 ジョーはささやいた。舌をケンの臍に這わせ、ケンの滑らかな肌に飛び散った雫を舐め
取りながら。しかし、触れられたがって、うずいて脈打っているその場所だけは、注意深
く避けた。

 ケンは、ジョーの下でもだえ、あえぎながら、必死に彼を繋ぎとめているコードを引っ
張った。自分自身の欲望に溺れ、ケンは腰を動かそうとした。自分の雫を漏らすコックを
ジョーの熱く湿った口へ近づけるために。ジョーは顔を上げて、言った。
「俺はおまえに、その言葉を言わせてみせるぜ、ケン、どうやってでもな。」
 その声は、ジョー自身も興奮していることを感じさせた。
「知ってるだろ。」
 ジョーは、ケンの脚を押し上げて広げ、その間に顔を埋めた。ジョーがケンのボールを
口に含み、吸ったので、ケンは苦悶のエクスタシーの叫びを上げた。ジョーは、ゆっくり
とじらしながら、それを舌で舐め回し、指は、そのすぐ下の敏感な場所を刺激した。ケン
の視界はグレイアウトし、彼の体は、火に焼かれ、甘い波に飲み込まれた。

 永遠とも思える時間が過ぎた後、ジョーは顔を上げて、ケンを見つめた。ジョーの指は
ほとんど夢うつつで、汗とケンの雫を混ぜながら、ケンの震える胸から腹へと降りていっ
た。ジョーは、自分のすでに十分濡れたものにそれを塗った。それから、ジョーは、手を
ケンのボールの後へ差し入れ、指を2本、少しだけケンの中に滑り込ませた。
 火花が体の中に散り、ケンはあえぎ、まぶたをきつく閉じた。
「頼んでみろよ。」
 ジョーは命令した。今や、ジョーの声も少し震えていた。
 ケンは、ジョーの声が震えているのに気がついた...それは、ジョー自身も限界に近
づいているせいであることを、ケンは知っていた。その思いがケンの静脈の中の血をさら
に熱くした。ケンも理性をなくしそうに興奮していた。ジョーがケンの敏感な場所を撫
で、ケンは信じられない快楽に跳ね上がり、叫び声をあげた。その言葉は、彼の意思とは
関係なく、口から飛び出した。その声は、どうしようもなく、かすれた。
「ああ...ジョー、fuck me、いれて、くれ...」

 ジョーの大きく、激しいコックの先端が括約筋を過ぎて押し入ってきたとき、ケンは、
そのエクスタシーにほとんど涙を流しそうになった。背をのけぞらせて、脚を大きく広
げ、そして、ああ、その声、それは必死に泣き叫んでいる自分自身の声だった...
「ジョー、ああ、ああ、ジョー...」
 最後までそれを沈めたとき、ジョーがのどの奥からあげた勝利のうめき声に、ケンは限
界を超えた。ケンは、自分のボールが引き絞られ、火球が股間から湧き起こり始めたのを
感じた。そのとき、ケンは、フラストレーションに苦悶し、大声をあげた。ジョーが彼の
ものをつかんで、強く握り、まさにその限界ぎりぎりでケンを制止していた。
 ジョーは、かがみこんで、ケンの滑らかな震える体に覆いかぶさった。
「まだ、だ。」
 ジョーはささやいた。

 ジョーは片腕で体を支え、ケンの体を自分の横へ引き寄せた。それから、ケンのものを
根元できつくつかんだまま、腰を移動させた。無力に貫かれたまま、ケンは非常に激しい
悦びに、息をすることもできなかった。ジョーは、もう一度、出してから、間をおき、後
から激しく突き立てた。ケンは、今までジョーの顔にこんな暗い悦びを見たことがなかっ
た。
「イイぜ。」
 ジョーは、熱くつぶやいた。
「おまえ、すごくイイ...」
 ジョーは、もう一度、出して、間をおき、激しく押し戻した。それから、彼は、リズム
に乗るように、少しずつスピードを上げ、さらに激しくそして速く、深く入れた。ケンの
理性は滑り落ち始めた。悦びは、あまりに耐えがたく、ケンは自分が死んでしまうのでは
ないかと思った。それはまるで彼の全身が乾いた薪になり、ジョーの口や手が触れた場所
全てから一気に燃え上がるかのようだった。完全に埋められ、完全に所有されて、ジョー
の熱く激しいコックが無慈悲にケンの中でピストンするストロークごとに震えながら。
「ジョー、」
 ケンは、自分が懇願し始めるのを聞いた。
「ジョー...くれよ、ジョー...」

「今、くれてやるぜ。」
 ジョーは、ケンの首を噛みながら、うなるように言った。ジョーは、ケンのコックの根
元から手を離し、彼の上に乗りあがった。
「全部、おまえにやる...」
「ああ...」
 ケンはうめいた。ジョーが両腕をケンの脚の下に差し入れ、さらに高く持ち上げたのを
感じながら。それは、ジョーが知っている中でいちばん感じやすい位置だった。ジョーの
コックは、ほとんどまっすぐ下へケンを貫き、ストロークごとにケンの敏感な場所を打っ
た。白い火花がケンの視界の端に散った。ケンはもうそれ以上、耐えることができそうに
なかった。その圧力は、ほとんど苦痛になってきていた。ケンのボールはきつく激しく、
あふれ出しそうな渇望にわきかえっていた。
「ああ」
 ケンは、あえいだ。
「ああ!」
 腰を最後にすさまじい勢いで動かしたと同時に、ジョーの体は、痙攣し、彼は勝利の叫
びをあげた。ケンは自分の内部でそれが膨張し、爆発するのを感じた。ジョーがあえぎ、
うめき、頂点に達して震えたとき、ジョーの口が彼の口をふさいだのを感じた。そして、
今度はケンの番だった。炎がケンを捉えて、その体を引き裂いた。ジョーは、ケンにキス
し続けた。熱狂した叫びに溺れながら、ケンは達し、あとからあとから、あふれ出した。

「愛してるぜ。」
 彼は、ジョーがあえぎながら言うのを、濃いエクスタシーのかすみの中で、聞いた。
「おまえを、愛してる。」

 ああ、ジョーがその言葉を...ジョーがやっと言って...
 ケンの中にあふれた強い悦びの感情は、すでに興奮しきった彼の感覚を、さらに激しく
刺激した。ジョーの指先が物憂げにケンの乳首を撫で、ケンは、さらに、またあふれ出し
そうな感じに、自分自身、驚いてあえぎながら、ビクッと震えた。ジョーは、また彼の乳
首を愛撫し、ケンが震え、うめき、痙攣していくのを熱心に見つめていた。ジョーはケン
にキスをすると、腹から両足の間へ下り、ボールの向こう側へと愛撫を続けた。
「たのむ。」
 ケンはついに懇願した。
「たのむ...ジョー...止めてくれ...」

「あううう。」
 ジョーは、ニヤリと笑った。
「だって、楽しいじゃねえか...」
 ジョーは、汗に濡れ、白濁した液の飛び散ったケンの美しい体に目をやった。ケンは目
を閉じ、あえぎながら、そこに横たわっていた。彼の声には、少し畏怖の響きがあった。
「以前は、おまえ、こんなことはしなかったのに。」
 ケンは、目は閉じたまま、なんとか笑顔を作った。
「以前は、俺を縛り上げたことなんかなかったし、愛してるなんて言ったこともなかっ
た。」
「ちぇっ、言いたいことはそれだけかよ...」
 ジョーは鼻をならし−−それが、てれかくしであることは、ケンにはわかった。
 それから、彼はジョーがゆっくり、しぶしぶと後ずさるのを感じた。
「もう、ほどけって言いたいんだろ。」
 ケンは、目を開き、ジョーに笑いかけた。
「そう、かもな。」
 ジョーは、狼のような声を出し、ケンに熱烈にキスをした。
「自分の言ってることに気をつけろよ、ケン。今度は、手錠を持って来るぜ。」
 ケンは声を上げて笑った。ジョーは彼の傍らでしばらく静かにその余韻を楽しんだ。

 そのとき、何かがゆっくりとケンの意識を侵害し始めた。
「ジョー...」
「んん?」
「あの音は、何だ?」
 ジョーも耳を澄ませた。そして、二人は目を大きく見開いた。
「くそっ、ブレスレットだ!」

 2つのブレスレットは、あいかわらず鳴り続けていた。


THE END

PITSTOP ( Original English text )


WARNINGS: Rated NC-17 (graphic m/m sex, mild bondage)


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