Non Stop… 

                by 雷伝文月


 外はもう日が沈み、街灯が道を照らしていた。冷たい北風が吹く中、
健は特に目的も無くただ、道を歩いていた。風のあまりの冷たさに思わず顔を伏せて歩い
ていた。
「(あーあ…もう冬かぁ・・・)」
 息も白くなるほど寒かった。時々雪がちらつき、子供達がはしゃいでいたりもした。雪
を見ると憂鬱な気持ちになる人、嬉しい気分になる人等様々なようだった。健は特別嬉し
い気分ではなく、どちらかといえば
憂鬱な気持ちの方が強かった。
「(はぁ…これからもっと寒くなるのか…)」
 健は突然道の途中で足を止めた。そしてふと思った。
「(そういえば…今あいつは何をしているのだろう…。そうだ、会いに行こうかな。こん
な所ほっつき歩いているよりも暇もつぶせるだろうし…)」
 健はもと来た道を引き返し、『あいつ』に会いに行く為に雪が降る道を息を白くしなが
ら15分ほど歩いた。

 健は寒い中歩き続けて目的の場所に着いた。健の『あいつ』に会いたいという気持ちが
何故か妙に強く、寒い中歩く事は全くといってもいい位憂鬱には感じさせなかった。
「(いるかな…)」
 少し不安だった。それでもドアをノックした。
「ジョー、いる?」
 声もついでにかけてみた。その時、
「誰だ?」
と、ドアの向こうから声がした。
「(あ…いた…)ジョー、俺だけど…」
「ああ、健か。今開けるからちょっと待てよ。」
 鍵を開ける音がした後、ドアがガチャリと開いた。
「どうしたんだ、健。」
「ん?何となくね。」
 コートについた雪を払い落としながら言った。
「…入ってもいい?」
「ああ…いいけど…。ところで雪降ってたのか?」
「うん。今はやんでるけどもね。」
「そうか…。あ、コートかけといてやるから。」
「あ…ごめん。ありがとう。」
 ジョーは健からコートを受け取り、ハンガーにかけた。そう、『あいつ』というのは無
論、ジョーの事である。健はソファに腰をかけて部屋の周辺を目だけで見た。
「部屋は相変わらずきれいにしてるんだな。」
「(部屋『は』という言い方は気になるが…)ああ。汚くしてるのって嫌な成分だから。
汚くしていられる奴らの神経が知れねえよ…」
 そう言いながらジョーは健の隣に座った。
「…」
 ジョーの発言に対して健は言い返せなかった。少しではあるが自分に当てはまる所があ
ったからだ。そして、
「…すいませんね…汚くしてても気にならない奴でさ…」
と、小さな声で独り言のように呟いた。
「何?」
「あ、いや…何でもない!」
「?変な奴だな…」
 もうどうとでも思ってくれ。今度は心の中で呟いた。
「ところで…なんでわざわざここまで来たんだ?」
「だからさっきも言ったけど何となく。ジョーは今何をしてるかな、って思ってさ。ひょ
っとしたらあんな事やこんな事をしてるかなあ、ってさ。」
「ばっ…馬鹿な事考えてんじゃねえよ!!」
「冗談だよ。本気にするなって。」
 悪戯っぽく笑う健。そんな健をジョーは憎めなかった。
「でも半分は本当だよ。何をしてたのかなぁとは思ってた。」
「何してたって…する事も特別無いからシャワー浴びてただけだぜ?」
「ジョーらしいや…」
「悪かったな。」
「いい意味で言ったんだよ。」
「それは有難いな…」
 ジョーは軽く頭をかいた。そして、テーブルに置いてあった煙草の箱に手を伸ばした。
一本だけ抜き取ってそれに火をつけると何ともいえない独特の匂いと、煙が部屋に漂った。
「…ジョー、ごめん。何か飲み物もらってもいいか?のどが渇いちゃってさ。」
「ああ。適当に飲んでいいよ。」
 健は席を立ち、棚からグラスを取り出し、スポーツ飲料水を手に取ったグラスに注いだ。
そしてまたジョーの隣に座り、グラスに入った飲料水をゴクリと飲んだ。
「ありがと、ジョー。」
 健はジョーの頬に軽くキスをした。
「なっ…!何を…!」
 ジョーははっとして健がキスをしてきた場所を手で触りながら焦った。
「感謝の気持ち。」
「んなもんいらねえよ…何を突然…」
 気を紛らわそうとジョーは二本目に火をつけた。その後僅かな時間ではあるが部屋が沈
黙という空気に包まれた。険悪な雰囲気などではなく、ただ単に話題が無く何もしようが
ないという雰囲気だった。

 健がゆっくりと立ち上がって口を開いた。
「そろそろ帰ろうかなぁって思ってたけど…」
「けど?」
「また雪降ってきたみたいだし…帰るのが面倒になっちゃったよ。それにジョーも一人じ
ゃ寂しいんじゃないのか?」
 ジョーの顔を見て笑いながら言った。
「てめえ!くだらねえ事ばっか言ってたら裸で外に放り出すぞ!!」
「だから冗談だって。すぐ本気にするなよ。でも帰るのが面倒になったっていうのは本気
で。」
「ソファで寝るのか?」
「まさか…」
 口元だけで健は笑った。そして言葉を続けた。
「今夜はかなり冷えると思うよ?だからジョーと一緒に寝る。」
「狭いだろ、それだったら…」
「だからいいんだよ。温め合えるんだからさ。」
「お前、本気で言ってるのか?」
「勿論。というわけでシャワー借りるよ。」
 完全に健のペースにはまっちまったかな…。ジョーは心の中で思った。それに断る理由
がなかった。結局ジョーは健を自分の部屋に泊めることにした。ジョーは先にベッドで横
になった。

 シャワーを浴びてから健はジョーがいるベッドの中に入った。ジョーと健の身体が僅か
に触れ合う。横を向いていたジョーに健が話しかけた。
「ジョー…今日何の日か覚えてる?」
「ん…?何かあったっけ…?」
「クリスマスだよ。忘れてたのか?」
「ああ…!そうか。そう言われてみれば今日だったな。」
 ジョーは小さくうなずきながら健の方に身体を向けた。そして健の唇と自分の唇をそっ
と重ね合った。肌と肌が触れ合い、それが何ともいえない位温かかった。そして二人は感
情のままに抱き合った。二人はその時一回ずつこう囁き合った。
「Merry Xmas…ジョー…」
「健…Merry Xmas…」
と…。            


END