春の噂話

by 小夜子

   だからこの季節が1番好きなのよね。
風は暖かくて甘い香りがするし、日差しもやわらかい。このオープン・カフェのこの席か
ら見る七分咲きの桜は最高。店番の甚平には悪いけど、午後のこのひとときと、このカフ
ェ・オ・レは私の宝物の1つだわ。こうして満たされた気分でいる時はまわりの人たちの
話し声も耳を気持ち良く過ぎていくの。
 新しいパンやさんの評判だったり・・・
(そう、あそこそんなにおいしいの・・・今度いってみなくちゃ。)
 恋の話だったり・・・
(いいなぁ、私もしてみたい、そんな話・・・)
 そうそう、Sea.Doragonも・・・
(ん?)

「そう、あのヨットハーバーの管理の・・・太ったひと」
「いないことが多いけど、気のいいお兄ちゃんって感じの人でしょ?」
「すごいよねぇー、10分でハンバーガー16個!!新記録だって。さっき教えてくれた
バイトの友達、すっごい興奮してたもん」
「その前の14個もすごいと思ってたけど、それ抜く人なんていたんだぁ」
「ねぇ・・あの大きなお腹って、全部胃なんじゃないの?」
 16個?ハンバーガーを?あぁ、でもそうね、竜ならひょっとして・・

「あぁ、この先のゲーセンでよく見かけるチビな。あいつが?」
「あのすばしっこさでよ、ゲーマー・チャンプ負かしたってさ」
「ゲーマー・・?あぁ、隣町の自称ゲーマー・チャンプってやな野郎か」
「奴、足にきちゃってよ、フラフラになったとこ、最後はチビのカウンターがスコーン!
!」
「ほえ〜、やるなー、確か小学生だろ?でもよぅ・・・」
 この先のゲーセンって甚平がよく行く・・すばしっこいって、まさかねぇ・・

「へぇ、健とジョーがねぇ」
 えっ?健とジョー?
「あぁ、あらぁ間違いなく惚れてる目だったって、それも2人そろって」
 えぇ?
「でも”CRUSH”のカウンターでだろ?酔ってたんじゃないのか?」
「違うね。大体あの2人が女連れってことじたい珍しいだろ?マリアなんか、片方だけで
も許せないのに2人にエスコートされて来るなんてどこの女よって荒れて大変だったんだ
ぜ」
 CRUSH・・確か先週、健とジョーと飲みに行ったと思ったけど・・
「で?どんな女だったんだ?」
「も、すっげーいい女!スタイルはいいし、目が大きくて、緑がかった髪の」
 ちょっ、ちょっと・・
「ショートカットがバッチリ!!」
 !☆★?**?!


  だからこの季節は混乱するのよ。胸がざわついて、足取りまでフラフラになるわ。早く
店にもどって確かめなくちゃ。きっとみんな来てる。
竜が惚れてる目で・・・16個のジョーが・・ショートカットは甚平で・・
健のカウンターがスコーン・・

 あぁ、もうすぐ桜が満開ね。今日は4月1日だものね・・・


THE  END



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