夏の宴

by 小夜子

 夏の夜は開放的だ。特に今夜はカーニバルなんだ無理もない。
 そう、無理もない。・・・って、さっきから何回考えたかな。
「おい、いいかげんやめろよ、健」
 思わずため息がもれる。さっきから噴水の水を手ですくっては夜空にむかってはねあげ
てやがる。無邪気な顔はまるで子供だ。ここの公園は七色にライトアップされているから
な、「キラキラ光ってきれいだ」はわかるけどよ。
「おまえもこいよ、ジョー、ほら」
「ばっ・・・よせ」
 俺にまで水をかけるな。通行人にまでかかってるぞ。アベックがさっきから笑って・・
「ジョー、兄貴もー、見ててよー」
 滴をはらいつつ声の方をみやると、竜に肩車された甚平が街灯の柱に飛び移ろうとして
いるのが目にはいった。
「おい甚平、何やってんだ」
 そのまま器用にスルスルと中ほどまで登ると、柱にしがみついたかっこうのまま声も高
らかにあたりに叫んだ。
「燕の甚平、せみやりまーす!!ミーン、ミーン、ミーン・・」
 せみ・・・あまりのことに俺はあいた口がふさがらなくなった。
「んじゃ、おらも」
 登れない竜は甚平の足元に柱をかかえる格好で座り込んだ。そして、目をつぶると首を
ふりふり気持ちよさそうにうなりだす。
「ジー、ジー、ジー・・」
 バカゼミ2匹・・・向こうじゃまだ健が水をはねあげているし。

 そうだ、確か去年のカーニバルもこんなだったんだよな。それで俺は来年はこいつらと
は来ないって思ったんだった。今頃思い出したぜ。
 まったく・・・ん?
 ひの、ふの、・・・もう1人、ジュンは?ジュンはどこいきやがった?
「買ってきたわよ、ジョー」
 はずんだ声に振り向くと、なにやらいっぱいつまった紙袋を両手に抱きかかえたジュン
が立っていた。
「あ、ずるーい、健ったらそんな楽しそうなことー」
 言うが早いかパッと目を輝かせると、俺に紙袋を押し付けて健のもとへ走っていく。
「エイッ、きれいねー健。ほら、見てー」
「そらっ、ジュン」
 紙袋の中身は、ワイン、バーボン、缶ビール、ポテチ、チョコ・・・
 おいおい、まだ飲む気かよ?
「竜!せみはこう!!ミーン、ミーン、」
「こうかぁ?ジー、ジー、」
「やーだ、健!エイッ、エイッ、」
「まだ、まだ」
 これから店に帰って二次会か?まだ宵の口なんだよな。頭痛がしてきた。
 4人の歓声を聞きながら俺は密かに決心する。
 来年は、絶対に。絶対にだ。


THE  END



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