Good-Bye!

by さゆり
Art by ゆうと・らん


気配が・・・
俺を一瞬だけ、その場に凍りつかせた。

一瞬、永劫の一瞬。
俺はその短い時間の中でこれまであの男と生きた時間を反芻する。
照る日には影を作り、震える夜には温もりをくれたあいつの大きな掌。
時には厳しく、時には冷たく、そして時には優しく
俺を包んでくれた大きなあの手を、もう一度、握りしめたいと
その時、俺はどんなに思った事か・・・!

「行け!」
聞こえるはずの無いあいつの声が俺の背を押す。

だから・・・

いや、振り返らず行かねばならないという事は、とっくの昔に
教わった事だぜ。

(あばよ!)

長かった一瞬が解け、俺はやはり振り返らぬまま、駆け出していた。

Art by ゆうと・らん


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