Gosh !

by さゆり

 「フリーズッ!」
 3人目を床に沈めた時、そう声が飛んだ。声と同時に耳に飛び込んできたのは、比較的
小さいが重量のある金属が擦れあう音−ハンマーが押し下げられ、リボルバーのシリンダー
が回転した音。つまりその銃はいつでも発射可能な状態にあるという事だ−だった。そっ
と斜め後ろからの気配を読む。
 うん?銃口は自分に向けられてはいない。では・・・??
「!?」
 健は油断なく柔軟な姿勢のまま振り返った。そして目にした光景に舌打ちをすると、最
初に殴り倒した相手から奪い取った警棒を投げ捨てた。
(Shit !)
 リボルバーの銃口がジョーの顳かみにぐいと押し当てられていたからだ。
 官給品にしては大袈裟過ぎる口径のリボルバーの弾丸があの位置で発射されれば、たぶ
んそれがジョーだと識別するのも難しくなるだろう。だが、痛みはあるまい。一瞬でカタ
がつくぜ、ジョー。
「へへ、こいつの頭を吹っ飛ばされたくなかったら、大人しくする事だな。」
 そうする必要もないのに、そいつが銃口で、捻り込むようにジョーのダークブロンドを
ガツガツ小突いた。その痛みにジョーがくぐもった呻き声を上げた。カッと見開いたブルー
グレイの瞳が怒りにギラギラと燃えている。何か叫んだようだが、粘着テープにべったり
と口を覆われているので、再びくぐもった喉声が響いただけだった。そして、後ろ手に手
錠を掛けられている事を忘れて、飛び出そうとする身体を、
「動くんじゃないっ!」
 と、そいつが封じた。
 そうだ、ジョー、動くんじゃないぞ・・・と目で合図して健は静かに言った。
「わかったよ。」
 ホールドアップだと両手を上げると、いきなり腹を蹴られた。顔を殴られた方が遥かに
ましだな、と吐き気を堪える傍らでちらっと考える。意識を失ってしまえば痛みは感じず
に済むが、腹をやられるとただただ苦しい。ちぇっ、手加減したのがまずかったのか、1
人は伸びたままだが後の2人はもう結構回復しちまったじゃないか・・・。それに残りの
人数も加わって、袋叩きとはこの事か、といった具合に殴られ蹴られ、健はもんどりうっ
て床にひっくり返された。

「へっ、ガキが!ざまあねえぜ。」
 救出は失敗だ。すまないな、ジョー・・・と天地が逆転した視界の中でジョーを見上げ
ると、ジョーは盛んに身悶えし、暴れていた。ふふ、ジョーらしいぜ・・・と、健は薄ら
と微笑んだ。
 あれは2日前−
(ジョー、俺達は調査のためにこの国に潜入してるんだぞ。人の目を引くような行動は慎
めよ。)
 健はそう幾度となくジョーを窘めたが、官憲の目に余る横暴ぶりを目の当たりにしたジ
ョーはすっかり頭に来てしまっており、
(うるせえなっ!健、俺はおまえのような冷血漢じゃねえんだよ!)
 そう怒鳴って拳を叩いた。ふふ、ジョーらしいぜ・・・と、あの時も俺は思わず笑った
っけ。だから、きっと小競り合いになり、逮捕されたに違い無い。
 理不尽な目に会っても曖昧に微笑んで、制服の胸ポケットに紙幣でも入れてやって、そ
れで済ませてしまえ、と言った事はジョーも確かに理解していた筈だが、ジョーがそれを
善しとする筈が無かった。合流地点に現れない相棒の行方はすぐに知れたし、彼らにとっ
ては警察だろうと軍隊だろうと忍び込むのに大した造作は無かったのだが・・・・まぁ、
失敗する事もあるさ・・・・だが、チャンスは必ず来る。だから、暴れるんじゃないぞ、
ジョー・・・と、健は胸の中で呟いた。
 と、思う間も無く、
「こいつ、大人しくしやがれっ!」
 怒声と重い銃床がジョーを再び叩きのめしにかかった。
 ・・・!
 一瞬、銃口がジョーにしては珍しく大いに乱れたダークブロンド−殴られ蹴られで引っ
張られたのだから当然と言えば当然なのだが−から外れたのを見るや否や、健はひらりと
身を翻した。が、無情にも距離に絶対的な差があり、片膝をついた段階で、リボルバーは
また顳かみに戻ってしまった。
(Shit !)
「見かけに拠らずタフなガキだな!こいつあ驚いた。」
 キラリと油断の無い光を放ったスカイブルーの瞳を見、1人の男が感心したように言っ
た。その向こうから籠った声で、ジョーが盛んに何か怒鳴っている。
(俺にかまうな!この悪党どもを叩きのめしちまえっ、健!)
 きっとそんなところだろう。
 出来れば、そうしたいよ・・・俺も。だが−

「ジョー、じっとしていろよ。今、助けてやるからな。」
「助けてやるだと?こいつはいいや、このガキはスーパーマンの親戚か?」
 どっと起こった嘲笑に包まれても、健は平然としていた。
 まあね。当たらずと言えど遠からず、かな?だから、まだ少年のような面差しの髪の長
いガキは、落ち着いた声で続けた。
「人権は例え犯罪者でも保護されるのが法律だろう?ましてジョーは容疑者でしかないは
ずだ。」
 正論をいくら唱えたところで通用しないのは健にも分かり切っていた。通用するくらい
なら、ジョーが連行され、ましてやあんなになるまで暴行を受けるはずがない。たかが、
ちょっとした諍いくらいで・・・どうなってんだ、この国の警察は?やはりすでに奴らの
手に落ちているのだろうか??
「なあ、そいつを釈放してくれよ。もう充分だろう?」
 裏があるのか、ないのか?・・・この場を切り抜けなければならないのは当然だが、同
時にそれを探る事が出来れば多少はジョーの立場ってものも・・・健はゆっくりと立ち上
がると、銃口を突きつけている男に静かにそう願い出た。興奮させては危険だ。ここは完
全に奴らのテリトリー内だし、奴らは群れになっている。だが、テリトリー内であるとい
う油断を逆手に取って、隙を突けばチャンスはやって来るはずだ。
 ふん、と男が笑った。
「解放しろだと?保釈金はあるのか?」
 保釈金ね、意味が分かって言ってるのか?いや、おまえらにしか通用しない保釈金て事
なんだろうな。制服とそれに保障された身分を利用して、他所者や弱い者から金を巻き上
げるって訳か。職権乱用って言うんだぜ、そういうのは・・・だが、健はそんな事は噫に
も出さずに、少し笑って見せると親し気に言った。
「無茶を言うなよ。俺達が金を持ってるように見えるかい?」
 笑うと健はとても可愛い。
「見えねえな。だが、代わりのもので支払ってもいいんだぜ。」
「え?代わりの・・・ものって?」
 瞬いて、そう問い返す。怪訝そうな、そして不安げな表情を見せるのがコツだ。
「へへへ、なかなか色っぽいガキだな。」
 下卑た笑いを浮かべて、男がリボルバーを別の男に渡した。
(しめた!)
 チャンス!と北叟笑んで軽く腰を沈めた。健の跳躍力ならば充分・・・・だがその時、
ガチャッとドアが開いて、若い男が鼻を押さえながら入って来た。この留置所の入り口に
いた男で、さっきここへ入る為に不意打ちを食らわせて気絶させて来た奴だ、と健はその
ハンサムな顔を憶えていた。
「アル!どうしたんだ、その面は?」
「そろガキにいきなり蹴り上げられはんだ!見へくれよ、鼻が、俺の鼻が−」
 鼻の骨が折れたのか、何だか妙な発音でハンサムな男が泣きながら訴える。まずい時に、
と健が顔をしかめた。件の男の顔色が変わった。
「てめえ、よくもアルをっ!」
(Shit !)
 また失敗のようだ。ちぇ、上手く行きそうだったのにな・・・
「このガキ!俺の可愛いアルに痛い思いをさせやがって!」
 男の目配せで、健はあっと言う間に後ろから羽交い締めにされてしまった。
「よし、こいつの鼻もへし折ってやるか?」
 残忍な笑いを浮かべて、太った男が顎を掴んだ。
「鼻なんかへし折ったって面白くもねえだろ!」
 さらに下卑た笑いを浮かべてそいつは健の真ん前に立つと、薄い色の目でじっと健のス
カイブルーの瞳を見下ろしながら低い声で言った。
「脱げよ。アルのお返しに可愛がってやるぜ。」
 でかいそいつに殆ど遮られた視界の端にジョーが見えた。押し当てられた銃口を無視し
て暴れ、前髪を掴んで引き戻されている。他の男達が口々に罵り、殴ったり蹴ったりする
がますます暴れるばかりだ。
「じっとしているんだ、ジョー!そのリボルバーのトリガーが軽い事は知ってるだろう?
暴発するぞっ!」
 2人がかりで拘束していても振り切るんじゃないかと思うくらい、ジョーの暴れっぷり
は見事だった。しかし、健がそう怒鳴ると、ジョーは我に返ったのかピタリと動きを止め
た。さすがは銃に詳しいジョーだな、と妙にそんな事が可笑しい。
「その通りだ!逆らったらあいつの頭は無くなるんだぜ。さあ、脱げよ!」
 後ろから押さえていた部下を退かせると、顎をしゃくってそう促す。健は表情を変えぬ
まま、まるで自宅でシャワーを浴びる如き気軽さで、シャツを、靴を、次々とグレー色の
リノリウムの床に脱ぎ捨てていった。そして、傲然と男の薄い瞳を見つめ返すと、誘うよ
うにゆっくりと口許に笑みを浮かべた。
 素っ気無い照明の陰影に浮かぶ健の半裸は、思わず一同が溜め息を漏らすほど美しかった。


 男が乱暴に左腕を掴んで引き寄せても、健はやはり顔色ひとつ変えなかった。が、
「お、このブレスレットは−」
 と言い出したので、健はうん?と眉を寄せた。こいつら、やはり・・・?
「こりゃ、あいつのと同じもんじゃねえか。そうか、おまえら、そういう仲かい?」
 丸く見開かれたスカイブルーが今度は芝居では無く、怪訝そうに2、3度、瞬いた。 
 何だ、違うのか?じゃ、こいつらはただの下衆野郎って訳か・・・と半ば安堵し、半ば
落胆した−奴らの一味ならば天下御免で、そう、例え命を奪ったとしてもそれは「任務」
の範疇だったが、そうでない輩だと例えこうした破落戸と言えども、それを「任務」とし
て片付ける訳には行かないのだ−。
(Shit !)
 さて、どうするか?・・・面倒な、と小首を傾げた健の困惑に似たその表情をどう取っ
たのか、にやりと笑って男が乱暴に傍らの長椅子に押し倒した。無意識に抗って首を振る
と、視界の端にもがいているジョーが見えた。
「ジョー、暴れるんじゃない!大丈夫だ、じっとしていろ。」
「そうだ、大人しくヤラせれば・・・」
 貪欲な指に弄られると嫌悪感にぞくりと身体が震えた。畜生、気持ちが悪い。いい加減
にしやがれ!と、思わず膝蹴りを鳩尾に入れそうになったが、揉み合う物音とジョーへの
罵声に健は攻撃を思いとどまった。両手を別の男が頭上へと引き、乱暴な行為から逃がす
まいとする。だが、両手を封じられたくらいで倒せない人数でもない。ただ迂闊にはそう
する事が出来ない輩だと判明したし、それにあのリボルバーのトリガーは本当に軽い。銃
をジョーに突きつけている奴を下手に驚かせて、トリガーに掛かった指に力が入ったら−
と思うとじっとしているしかなかった。だから、健は特に抗うでもなく、諦めにも見える
表情を浮かべて、
「大人しくするから、手を放してくれよ。」
 と、願い出た。いいだろう、放してやれ、と頷いたそいつの太い首に解放された腕を緩
く回して、最前の言葉を引き取った。
「・・・ヤラせれば、ジョーを解放してくれるかい?」
「へえ、健気だな。恋人を助ける為なら自分はどうなっても構わないって訳か。だが、本
当は怖いんだろ?こんなに震えて−」
 −気味が悪いんだよ、この野郎!と、心の中でだけ舌打ちをする。
「別に健気でも無いし怖くも無いが、少なくとも俺のケツよりは、あいつのアタマの方が
大事だろ?」
 違い無えや、物分かりがいいな・・・・と男は唇を歪めるとその端をいやらしく舐め、
それから性急な手つきでオフホワイトのジーンズを引き抜き・・・

「う・・・」
 眉を寄せ、固く目を閉じたまま蹂躙される被害者が漏らす小さな呻き声と辛そうな表情
が彼らには堪らないらしい。興奮に下品な囃し声と嘲りが徐々に大きくなって行くその中
で、健は身を捩り、
「下手く・・・そ!」
 と、唐突に男を罵った。
「何だと?」
「下手だから下手糞と言ったんだ。あんた、ちっとも悦くない−」
 どっと嘲笑が沸き起こった。
「下手糞だとよ!」「坊や、萎えちまってるじゃねえか。」
 嘲笑われ、囃されて、男はカッとムキになった。
「このガキめ、何で勃たねえんだ?勃てよ、ほら−」
 男が動きと愛撫に熱を込めると、身体が微かに震えた。
「ほら、達かせろよ!」「泣かしてやれ!」
 と、下卑た声援を受けて男は荒っぽく、激しく、腰を動かし続け、荒くなった呼吸が小
さな喘ぎへと変わったが、だが健の身体は変化しなかった。
「う、俺は・・・あいつじゃなきゃ、感じないのさ。」
「嘘をつけ!」
「ふんッ、嘘だと思うならあいつを、ジョーを連れて来いよ。」
「面白れえや。おい、そいつを連れて来い!」

「ぐううっ・・・」
 という狼のような唸り声が低く響いて、健が薄く目を開けると、目の前にジョーが引っ
張られて来ていた。 ジョーが見ている・・・・激しい怒りと哀しみを宿したその瞳は、
だがいつものように美しくて・・・ジョー、そんな目で見るなよ。こんな俺を嫌いになる
か?・・・でも、仕方が無いだろ?だから・・・
「ほら、おまえの恋人が来たぜ。」
「ジョー・・・」
 健は手を伸べてジョーの腰にすがりついた。
「!?」
 ブルーグレイの瞳が丸くなった。
「ああ、ジョー、愛してる・・・欲しいんだ、おまえが・・・」
 譫言のようにうっとりと囁いて、健は褪せたブルージーンズのジッパーを引き下げると
ジョーのそれに唇を寄せ・・・
「うひゃ、いいぞ、いいぞ!」「しゃぶらせてやれや!」
 男達は見物、とばかりに口々に下卑た言葉を発して、大いに興奮したようだったし、
「う、いきなりどうしたってんだ?くっ、こいつは堪んねえぜ・・・」
 それは背後から伸掛かっている男も同様なようだった。
「ああ、悦い・・・ジョー!」
 唇を離して、盛んにジョーの腿と腰の辺りを弄りながら健は白い喉を仰け反らせた・・・
おかしい、とジョーは気づいた。健はこんな声は立てない。健はこんな媚びるような顔は
見せない。健は・・・。そしてまたしきりと、
「ジョー、ジョー、ああ、達かせてくれ・・・!」
 と、ジョーを呼びながら聞いた事の無い言葉を口にする。
「!」
 ジョーは健の意思を明確に理解した。これは芝居だ・・・悔しいが、どんなに激しく愛
しあい、どんなに感じさせようとも、SEXの時、健は決してジョーの名を呼びやしない・・
普段はうるさいくらいに呼びやがるくせに−!
 すっかり興奮した男達は卑猥な笑い声を立てて夢中になっているようだった。と、熱い
吐息と乱れたチョコレート色の長い髪の陰から、黒い睫毛に半分隠された瞳が、きらりと
光ってジョーを見上げた。ブルーグレイの瞳が、得たりやとばかりにそれを覗き込むと、
その瞳がまるで健とは別の生き物のように、油断なくそっとリボルバーの位置を追うのが
見えた・・・ほら、ジョー、おまえにリボルバーを突きつけている男もこの馬鹿騒ぎにすっ
かり手許が留守になってるぜ・・・そして一瞬の後には切迫した動きに夢中になっていた
男と、それに夢中になっていた見物人どもは完全に出し抜かれていた。

「ジョー、右だっ!」
 と、叫びざま、健は信じられない筋力と素速さで身体を引くと、背後から腰を抱え込ん
でいた男の肩にジョーのジーンズに隠されていた羽根手裏剣を突き立てた。ぎゃっと叫ん
で肩を押さえようと身体を起こした男の顔を思い切り蹴ると、素早く反転する。健の合図
と同時に、ジョーの脚が右側でリボルバーを握っていた男の顔面を蹴り上げ、さらに反対
側で肩を掴んでいた男の鼻っぱしらに後頭部を叩き付ける。後ろの数人は肩で薙倒した。

「フリーズッ!」
 蹴られて宙に舞ったリボルバーを健はキャッチするや否や、器用にくるりと回転させて
男達の動きを封じた。片膝をついたまま、健は無言でリボルバーを振り、彼らに鉄格子の
中に入るよう促した。
「やれやれ・・・」
 鉄格子に鍵をかけて、健が溜め息をついた。そして床から拾い上げた服を手早く纏いな
がら、
「ちぇ、すっかり伸びちまってら・・・」
 と、長椅子の横に伸びた大柄な男を覗き込んだ。すっかり気を失った男の鼻がひしゃげ
て、盛んに血が流れている。
「ほら、立てよ。」
 健はそいつを引きずって来ると、そいつの腰にぶら下がっていた手錠で、頑丈この上も
無し、と思しき鉄格子にガシャリと繋いだ。
「おっと、こいつを残して行ったら大変だ。」
 笑って、肩に深々と刺さった羽根手裏剣を無造作に引っこ抜いた。その痛みに大仰な悲
鳴を上げて−手裏剣の刃には返しが付いているから、きっと酷い痛みを味わったのには違
い無いのだが−男が目を開く。目の前には揶揄うような色を浮かべたスカイブルーの瞳が
あった。そして、
「あ〜あ、あんたの鼻も可愛いアルとおんなじになっちまったなあ。」
 と、言いながらくすくすっと笑った。男の薄い色の瞳が恐怖に引き攣る。
(Gosh ! ) 
 何だ、このガキは・・・こいつは悪魔か?天国はすぐそこだったのに、いつの間に地獄
に堕とされたんだ?
「ま、これに懲りて、あんたらもあんまり悪い事はしない方がいいぜ。」
 地獄の天使がそう言ってまたくすっと笑った。
「んんーっ!」
 背後からくぐもった声が健を呼んだ。長椅子にどかりと腰を下ろしたジョーの前に立っ
て、健が小首を傾げる。
「どうしたんだ、ジョー?えっ、すまなかった?ならば今後、勝手な行動は慎む事だな。
えらい目に会ったぞ。え?ああ、こいつらはただのチンピラだ。奴らとは関係無さそうだ
ぜ。それにしてもとんでもないお巡りもいたもんだな。」
 うーうーとジョーが何か言った。
「何だよ?助かったぜ、ありがとう、健、か?ま、お互い様だ。気にするなよ、ジョー。」
 うーっと、ジョーがまた呻いた。ガシャガシャと背中で手錠を鳴らし、特徴的なその目
で盛んに自分の口元を示している。
「あ、そうか!これを取ってもらいたかったのか・・・何だ、早く言えばいいのに−」
 と、健の指が痛さに顔を顰めるジョーの口から、乱暴に粘着テープを引き剥がした。
「健っ!」
 やっとそう怒鳴る事が叶ったジョーの後ろに回って、手錠を外しながら、うん?と健が
答えた。戒めから両手が解き放たれるが早いが、ジョーは健の身体を抱きしめた。
「馬鹿野郎、無茶しやがって!」
 腕の中で健が笑いながら言った。
「だっておまえの頭が吹っ飛ばされちまったら・・・」
「ん−?」
「こう出来なくなっちゃうじゃないか?」
 目を閉じて、健の唇がジョーの唇に重なる。
 柔らかく、温かい、そのキスに戸惑いながら、ブルーグレイの瞳が静かに笑った。


- The End -



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