MOONLIGHT HONEY / 1×2

Let's swim in the moonlight with nothing on .....

by さゆり

「うっ−」
 ジョーの口唇が小さくそう発音した。
「う、じゃないだろ?あ、って言ってみろよ、ジョー。」
 健はそう言いながら組み敷いた身体をなおさら激しく愛する。眉根を寄せて、
「・・イから、あんまり動くな。」
 固く閉ざした睫毛を上げぬまま、言い返したジョーの声が少し掠れていた。顔を見るな、
と言わんばかりに、外方を向いたその横顔が窓から差し込む月明かりに青白く浮かぶ。
たまらないな、と健は思う。傲慢で、勝手で、人見知りで、ほら、それが頑固そうなこの
顎にも険しい目つきにも出てるぜ。
 だけど、何だってこいつはこんなに綺麗なんだろう?
 まるでギリシアの彫像みたいだ。
 だから、もっと意地悪な口調で言ってやる。
「動かないと、いつまで経ってもイけないじゃないか?」
「なら、もう退けよ!」
 斜めに、薄く睨んだ瞳は深い青、月を抱いた空の色をしたそれが、しっとりと艶かしく
濡れているのは、否定的な言葉そのままなのか?だが、もしそうだとしても、俺は今、こ
いつを放してやる気にはなれない、と健は思う。
「狡いぜ、健。」
「何が狡い?」
「おまえばかり悦くて・・・」
「おや、おまえは悦くないってのか?」
「悦くねえぜ、ちっとも。」
「じゃあ・・・悦くしてやるさ。」
 う、と何か言いかけたジョーが思わず叫び声を上げるほど、右の肩に引っ張り上げた引
き締まった脹ら脛が跳ね上がるほど、健は強引に先を急いだ。逃れるように反射的に引い
た身体を、薄青い月明かりに染まった白いシーツに押さえ込むと、また掠れた声が、いや
だ、放せ、いやだ、と繰り返す。駄目だ、放しゃしないさ、と、片脚と片腕を掴んだ指に
力を込め、身を捩る事さえ許さずに、痩せた背が撓むほど、青い月明かりにさえ黒く輝く
ダークブロンドが激しく踊るほど、健はジョーを愛し続けた。
 あ、という声が特徴的な口唇から漏れる。
「・・・なぁ、悦いだろう?」
 もちろん、ジョーは答えない。
「一度でいいから、悦いって言ってくれよ。なぁ、ジョー。」
 くっ、と口唇を噛んで、ジョーは頭を振った。
「ジョー、おまえは最高だ。」
 頑固に眉を寄せたまま、健の白い肩に爪を立てて、震える声でジョーが言う。
「健、おまえは・・・最低だぜ・・・」
 健はその言葉に微笑んだ。強情っぱりめ!だが、俺には分かる。おまえはすごく感じて
いるよな。俺と同じくらいに・・・そう、もうイきそうなくらいに・・・。
「来いよ、ジョー。一緒にイこうぜ・・・」
 どうにもならぬ熱さに息を弾ませ、止められぬ欲求に身を任せる。
 中と外で達した時に、愛している、と言ったのは誰だ?
 悦い、と目を閉じて恍惚としたのはどっちだ?
 だがもうそれもどうでも良い・・・。

 重なっていた息が少しづつ速度を違える。健はどこかにあるはずのピローを片手で探し
た。時化の後の乱れたシーツに、まるで倒れ込むようにして片頬を埋めているジョーを、
きちんと寝かせてやりたくて、片腕を伸ばしてまさぐり続けたが、ピローはなかなか見つ
からない。
「ピローなら、俺の足元だぜ。」
 身じろぎもせずに、ジョーが言った。窓から覗く蒼月を映すその真直ぐな瞳を見ると、
いつも理由もなく切なくなる。だから、優しく抱きしめて、その口唇にそっとくちづける
と、ジョーは照れたように微笑んだ。
「まったく寝相の悪い男だな、おまえは。」
 ピローの形を整えながら揶揄った健の腕を掴んで、ジョーが繰り返す。
「狡いぜ、健。」
「何が狡い?」
 キスして欲しい、抱きしめて欲しい、愛して欲しい、
 もっと、もっと、もっと・・・。
 何もかも、お互いに相手の欲しいものは全部分かっている。
 だから二人は、薄青く染まったシーツの海で泳ぎ続ける。
 そう、何も纏わずに・・・。


THE END


MOONLIGHT HONEY / 2×1

Let's swim in the moonlight with nothing on .....

by さゆり

「うっ−」
 健の円い口唇が小さくそう発音した。
「う、じゃねえだろ?あ、って言ってみな、健。」
 ジョーはそう言いながら組み敷いた身体をなおさら激しく愛する。眉根を寄せて、
「・・イから、あんまり動くなよ。」
 固く閉ざした睫毛を上げぬまま、言い返した健の声が少し掠れていた。顔を見るな、と
言わんばかりに、外方を向いたその横顔が窓から差し込む月明かりに青白く浮かぶ。たま
らねぇや、とジョーは思う。傲慢で、勝手で、やたらと強くて、ほら、それが頑固そうな
鼻筋にもツンと尖った口唇にも出てるぜ。
 だけど、何だってこいつはこんなに綺麗なんだろう?
 まるで天使様みたいだ。
 だから、もっと意地悪な口調で言ってやる。
「動かないと、いつまで経ってもイけねえじゃねえか?」
「なら、もう退けよ!」
 斜めに、薄く睨んだ瞳は冷たい青、月を抱いた空の色をしたそれが、しっとりと艶かし
く濡れているのは、否定的な言葉そのままなのか?だが、もしそうだとしても、俺は今、
こいつを放してやる気にはなれない、とジョーは思う。
「狡いぞ、ジョー。」
「何が狡い?」
「おまえばかり悦くて・・・」
「へぇ、おまえは悦くないってのか?」
「悦くないね、ちっとも。」
「じゃ・・・悦くしてやるぜ。」
 や、と何か言いかけた健が思わず叫び声を上げるほど、右の肩に引っ張り上げた引き締
まった脹ら脛が跳ね上がるほど、ジョーは強引に先を急いだ。逃れるように、反射的に引
いた身体を、薄青い月明かりに染まった白いシーツに押さえ込むと、また掠れた声が、い
やだ、放せ、いやだ、と繰り返す。駄目だ、放しゃしねえよ、と、片脚と片腕を掴んだ指
に力を込め、身を捩る事さえ許さずに、しなやかな背が撓むほど、青い月明かりに黒く見
える長い髪が激しく踊るほど、ジョーは健を愛し続けた。
 あ、という声が円い口唇から漏れる。
「・・・なぁ、悦いだろう?」
 もちろん、健は答えない。
「一度でいいから、悦いって言ってくれよ。なぁ、健。」
 くっ、と口唇を噛んで、健は頭を振った。
「健、おまえは最高だぜ。」
 頑固に眉を寄せたまま、ジョーの痩せた肩に爪を立てて、震える声で健が言う。
「ジョー、おまえは・・・最低だ・・・」
 ジョーはその言葉に微笑んだ。強情っぱりめ!だが、俺には分かる。おまえ、すごく感
じてるんだな。俺と同じくらいに・・・そう、もうイきそうなくらいに・・・。
「来いよ、健。一緒にイこうぜ・・・。」
 どうにもならぬ熱さに息を弾ませ、止められぬ欲求に身を任せる。
 中と外で達した時に、愛している、と言ったのはどっちだ?
 悦い、と目を閉じて恍惚としたのは誰だ?
 だがもうそれもどうでも良い・・・。
 重なっていた息が少しづつ速度を違える。ジョーはどこかにあるはずのピローを片手で
探した。時化の後の乱れたシーツに、まるで倒れ込むようにして片頬を埋めている健を、
きちんと寝かせてやりたくて、片腕を伸ばしてまさぐり続けたが、ピローはなかなか見つ
からない。
「ピローなら、俺の足元だぜ。」
 身じろぎもせずに、健が言った。窓から覗く蒼月を映すその澄んだ瞳を見ると、いつも
理由もなく切なくなる。だから、優しく抱きしめて、柔らかいその口唇にそっとくちづけ
ると、健はゆっくり微笑んだ。
「まったく寝相の悪い男だな、おまえは。」
 ピローの形を整えながら揶揄ったジョーの首に緩く腕を回して、健が繰り返す。
「狡いぞ、ジョー。」
「何が狡い?」
 キスして欲しい、抱きしめて欲しい、愛して欲しい、
 もっと、もっと、もっと・・・。
 何もかも、お互いに相手の欲しいものは全部分かっている。
 だから二人は、薄青く染まったシーツの海で泳ぎ続ける。
 そう、何も纏わずに・・・。



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