YOU'RE TOO TEMPTING or FEELIN' GROOVY

by さゆり


「それで、ジョー・・・」
健の声はいつも耳にしている彼の声ではなかった。どこか虚ろで、
深い響きを伴ったトーンの声が、ジョーに訊ねた。
「何か言いたい事はあるのか?」
(何を言ってやがる!この下らない物をとっとと外してくれ!)
両手を縛られた上に、口には猿ぐつわまでされたジョーを間近に
見ながら、健が拘束を取り去って彼を自由にしないのはおかしい。
ジョーは訝しんで健を仰ぎ見たが、その部屋は薄暗く、バイザー
に隠された健の顔からはその表情を読み取ることが出来なかった。
薄闇に佇む白い影は無言のまま、じっとジョーの頭の先から爪先
までを睨め回した。
失敗した、という事はジョー自身が一番身に染みて分かっていた。
バードスタイルになる間もなく捕獲され、自由を奪われてしまっ
たのだから。健にそれを詰られても仕方がない。しかし、だから
と言って、何故、こいつを外してくれないんだ?
「敵は全部片付けたぜ。ここにはもう俺達以外、誰もいない。
・・・ジョー、これはおまえのせいだ。」
そう言うと、健はヘルメットを脱いだ。
(?!)
ゆっくりと身をかがめる健の肩に、チョコレート・ブラウンの長い
髪が流れ落ちる。じっとジョーを見つめる健の目は熱に浮かされた
ように濡れ、見た事のない光を宿してきらきらと輝いていた。
(こいつは健じゃねえ!)
確かにそれはジョーの知っている健ではなかった。そして、その
目の中に宿るものの意味を悟った時、ジョーは愕然とした。
「おまえのせいだぞ、ジョー。おまえはとても・・・」
熱い吐息のような言葉とともに、健は手にしたブーメランの鋭い
切っ先でジョーのTシャツをつーっと引き裂く。まるで自身の肌が
切られたように、ジョーの身体に戦慄が走った。
(やめろっ、健!)
口の中でそう叫んで身体を後ろに引いたが、肩を掴まれた。健の
唇がそっとジョーの耳に触れる。微かな吐息とともにー。反射的
に顔を横に振ろうとしたが、その頬を青いグローブに包まれた指が
押さえた。健の唇は乾いていた。そして耳の中へ差し入れられた
その舌は熱かった。
(よせっ!やめろっ!)
ジョーは激しい苦痛に襲われたように眉根を寄せ、身悶えするしか
なかった。いや、苦痛なのか?これはー?苦痛とも愉悦とも言える
その感覚に、ジョーは自身の意思に反して思わず呻いた。
健の唇が耳の下から、首筋へと動く。それに連れて熱く、尖った
舌先がそこをゆっくりとなぞって行く。ちょうど導火線を小さな
炎が走って行くような、ぞくぞくするそのキスにジョーは身体を
硬くして、再び呻き声を上げた。いつの間にか頬を離れた青い指が
ジョーのラシッド・ブロンドを掻き揚げる。
首筋から喉へ、導火線の炎は走る。健の柔らかい髪がジョーの頬を
くすぐった。目を閉じて、頭を後ろに仰け反らせたジョーの顎に
キスすると、健は突然、唇を離した。
目を開けると、そこには艶やかなスカイ・ブルーの瞳があった。
「俺が悪いんじゃない。ジョー、おまえのせいだ。」
そう言うと、健はジョーを抱きしめた。白いマントに包まれたその
身体を、ジョーもまた抱きしめたいと思ったが、両手が自由になら
ない。柔らかいチョコレ−ト色の髪に顔を埋め、頬擦りをする。
(健、こいつを外してくれ!俺は・・・)
青い指がはだけたジョーの胸を探った。グローブ越しの愛撫はもど
かしい。しかし、発達した筋肉をなぞる特殊繊維の感触は意外な
興奮をもたらした。ジョーは喘ぎながら、ブルーグレイの目で健に
懇願する。
「何が言いたいんだ?」
健はそう訊ね、そしてちょっと微笑むと、指を遊ばせていた胸へ
そっとキスした。温かく、柔らかな唇が大きく上下する胸の真ん中
にあった。それから少し上へ、少し下へ。熱い舌が何かを探すよう
に動く。どこにあるのか知っていても、知らん顔で彷徨う舌のその
もどかしさにジョーは身を捩った。やがて望み通りに、健の唇が
小さな突起に触れた。滑らかな舌先が小さなキャンディーを口の
中で味わうように、それを転がすと、突起は硬くなり、徐々に舌を
押し返す。柔らかい唇がそれを包み、そっと噛むと、電気に触れた
ようにジョーの身体が硬直した。布に押し殺された声がくぐもった
叫びを上げた。
チョコレート色の髪を掴んで、その唇にくちづけたい、と思っても
拘束がそれを許さない。身体を貫く熱さにジョーは目を固く閉じて
耐えるしかなかった。出来得る唯一の事は精一杯うつむいて、健の
髪に顔を埋めることだけだ。呼吸が荒くなり、息がつまった。
唇と舌は滑らかに動き続けた。離れ、また触れ、優しく、そして
さらに強くー。ジョーは首を横に激しく振って、目の前に閃くもの
を追い払おうとした。ラシッドブロンドが音を立てて揺れた。
新鮮な空気を口から吸いたい!叫び声をあげたい!
ジョーの目尻から涙が溢れた。
「ジョー・・・」
健が囁いた。そしてそっとジョーの目尻にくちづけると、熱い舌で
目蓋をなぞった。呻いて仰け反るジョーの上唇にそっと触れると、
口を割っている布を歯で下に引き下げようとする。ジョーは舌で
それを何とか押し出そうとした。間近に健の長い睫毛と、キリリと
寄せられた眉が見えた。一心に布を引くその表情は美しかった。
そして、ついに布は顎の下に落ちた。
ジョーは大きく口を開いて息を吸った。押さえ付けられていた舌を
伸ばす。と、その舌先に健の舌が触れた。麻痺した器官を励ます
ように、激しく動く熱いそれにジョーの舌もぎこちなく応える。
「健ー」
言いかけたジョーの唇を健の唇が塞いだ。今までキスを交わした
どんな女性の唇よりも、それは滑らかで柔らかかった。差し入れ
られた舌先はさっきよりもさらに熱い。貪るようにそれを吸うと、
ジョーの体内を再び熱いものが駆け巡った。
「健、縄を解いてくれ!俺はおまえを抱きたい!」
スカイブルーの瞳が笑った。
「駄目だ。」
「なぜ?」
ブルーグレイの瞳が不平を言う。
「ジョー、おまえが悪いんだ・・・」
そう呟くと、健はうつむいてジョーのジーンズに包まれた腿にキス
をした。もっとも敏感な部分に頬を押し付けられ、ジョーは思わず
身を捩って叫んだ。
「健!縄を外してくれっ。」
「駄目だ。でもアンフェアじゃないぜ。俺も手は使わないさ。」
健は言葉の通りに、ジッパーの金具を銜えると、ゆっくりとそれを
引き下げていった・・・。         


-THE END-



Top  Library List