TARGET 2

by トールハンマー


                  *

 ・・・・そこは海だった。
 どこまでも青く、透明な海面が水平線まで広がるBCの海。
 太陽が照りつけ、寄せては返す波が砂金のような砂浜を掬ってはキラキラと輝い
た。
 眩しくて手を翳して遮ると、指の先でカモメが白い翼を翻す、そして、
 銃声・・・・、
 「パパー!!、ママー!!、」
 走り寄った波打ち際、折り重なり絶命した父と母。
 薄ら笑いと逆光に描き出される輪郭。ゆっくりと持ち上げられる銃口に向かって、
 俺は、誰を撃った?

 噴き上がる砂に弾け飛ぶ身体、赤い薔薇が散り、目の前で景色が四散す
る・・・・、

 ここは....?、
 波間に戯れる声....、
 楽しげに笑っては大きな声ではしゃぎ、そして、誰かの名を呼んでいる。
 「ジョー!、」
 声が呼んでいるのは俺の名だ。
 ここは....、さっきの海とはちがう、
 ケンと泳いだ光る海原、降り注ぐ日差しのシャワー、真夏の白い午後。
 聳える切岸から見下ろしているのは、群がる雲と赤い屋根の博士の研究室、
 砂を蹴り、スニーカーを脱ぎ捨てて、駆け出すケンを追うのはいつも俺、
 濡れて身体に貼り付いたTシャツを剥がして、ケンが笑う。
 睫に塗れた光の中の青い瞳、海と空を足してもまだ青い・・・・・。
 
 ケン・・・、腕を伸ばすが姿はない。
 ケン、ケンは.....どこだ?、
 声のする方に走る。
 だが、誰もいない.....、
 波の音・・・・、俺を呼ぶ声はもう聞こえない。
 足元の砂が酷く熱い、日に曝されて背中が焼けるようだ。
 ケン!、
 走る行く手を覆うようなカモメの群、思わず足が竦む。
 赤い屋根の博士の研究室がない。
 ここは、どこだ?、あの海じゃないのか・・・・・、
 光る海原、降り注ぐ日差しのシャワー、真夏の白い午後....、
 白い....羽翼をバタつかせるカモメの群、
 白いケンの・・・肌、欲情のままに貪った抗う肢体、
 俺を見る困惑と絶望と悲しみの青、
 力を失して伸ばした腕が、突き上げる思いに先を急ぐ俺を無言で責める。
 ケン・・・・、
 ケン、どこにいるんだ。ケン・・・・!、
 俺を一人にしないでくれ.....、

                     *

「俺のことはいいから、ジョーを、ジョーのことを早く診てやってくれ。」
「解ってます、彼はとっくにドクターたちが治療に当たっています!、だから、お願
いですから、あなたも大人しく手当を受けて下さい。」
「煩い、こんな掠り傷、舐めときゃ治るんだ...、それより、」
 懇願するナースに尚も抵抗しようとするケンは、肩から胸にかけて鮮血で真っ赤
に染まっていた。それでも処置室(ここ)に連れて来られたことが不満らしく、ナー
スたちの手を払ってドアに向かおうとする。
「やめて下さい、言うこときいて下さい、お願い!。」
 3人掛かりで行く手を阻まれながらも、諦めないケンは既に貧血で倒れそうにな
る身体を、それでも無理矢理ドアに向ける。
 と、そのドアが勢い良く開き、白衣を引っ掛けながら入口を潜るようにして医師が
入って来た。ナースたちは一斉に縋るような眼差しを彼に向けた。
「痛っ!!、」
 いきなり腕を掴まれ、血で染まったTシャツを乱暴に剥ぎ取られて、ケンは走る激
痛に顔を顰かめた。上段から見下ろした長身のその医師はなぜか白衣を纏って
いながら腕っぷしも強かった。
「痛いじゃないか、もっとそっとやれよ。」
「煩い!、痛いのなら大人しく手当を受けろ、バカ者!。第一、おまえさんがここで
いくら喚いていても、何も出来やしないんだ。俺の部下たちを信用して、お祈りでも
していろ。」
「部下?、あんたがここの外科部長か、なら、なんであんたが執刀しないんだ。」
「俺の部下は俺より優秀だ。ヤブの俺にはこれくらいの患者がちょうどいいんだ。」
「ヤブ医者なら俺に触るな!!、」
 バシッと大きな掌が頭を叩いた。
「支離滅裂だ!、冷静沈着、頭脳明晰の情報室長が聞いて呆れる。」
「なっ!...、」
「“状況は的確に判断し、冷静かつ沈着な行動をもって最善の状態を保持するこ
と”そうだろうが!、坊や!!。」
「.....、」
 叱られて、やっとしおらしくなったケンは、俄かに痛みが込み上げたのか、頬を震
わせて歯を食いしばった。
「痛いはずだな、弾を抜いてやるからさっさとベッドに行け。」
 腕を押えつけたまま傷口を見た医師は、ナースたちを顧みて手術の用意を急が
せた。
「手術室が塞がっているんで、ここで我慢しろよ。」
「あんなところはご免だ。」
 言ってから唇を噛んだ。今、ジョーはあそこで.....、
 そう思うと居ても立ってもいられない、だが、医師が言うように自分は何をしてや
ることも出来ない。せめて手術室の前で見守っていたいと思うがそれも叶わない。
 腹立たしさに拳を握りしめる。悔しくて情けなくて涙が出た。
「おい、坊や。」
 不意に、優しい声がした。が、初対面の医師に坊や呼ばわりされてケンはムッと
しながら俯いていた顔を上げた。
「大丈夫だ。俺はここの支局ではまだ来て日も浅いが、ISOの医局にはもう20年
以上いる。医者を見る目は確かだ。」
「すみません。新任なさったドクター・ハワードですね。」
 どうりで見ない顔だと思ったのはそのためだった。そういえば前の部長はもっと
優男だったと記憶してる。少なくともいくら怪我をしているからといっても、こうも
あっさり自分を捩じ上げることの出来る腕力は持ち合わせていなかったはずだ。
 やっと冷静さが戻ったケンは、先日南部博士から聞いた新任の外科部長の名前
を思い出し「失礼を許して下さい。」と詫びた。
「いいってことよ。まっ、心配なのは解るからな。ところでおまえさんは麻酔は必要
か。」「あたりまえです!。ここは野戦病院ですか!!。」
「あっははは、そうだったな。なぁ、坊や、俺は弾をぶち込まれた瀕死の兵を何人
も見てきた、医者がこんなことを言うのはいかんのかもしれんが、助かる奴とダメ
な奴は一目見て解った。ああいう場所では碌な手当も出来んが、どんなに深手を
負っていても助かる奴は解る。あんたの相棒もそうだ。」
 医師はケンに局部麻酔を施すと、シリンジをナースに渡した。
 ケンは白衣の胸に止めていた視線を上げて医師の顔を訝しげに見つめた。
「ドクターは前線にいらしたんですか?、」
「若い間は何でもしなくちゃならんさ、出世のためにもな。」
 そう言って笑った彼の顔は、出世のためなどと言っていながら野心の欠片も見
当たらず、温厚で穏やかな表情を湛えていた。
 そうか、人の生死を見極めてきた人間はこんなふうな顔をするのか・・・、
 ケンは思った。それは寛容で偉才な医師に敬意をはらうものであったのと同時
に、しかし、決して羨望とはなりえない否定的な思いが含まれていた。
「俺は名医に掛かれて幸運です。」
「ふん、げんきんな奴め。」
 照れたのか?、医師は鼻を鳴らしながらも、ぎこちなく視線を逸らした。そして再
び向き直るとメスを手に執刀にかかった。
 痛っ!!、切っ先が触れた途端、痛みが貫いた。
 やっぱりヤブなんじゃないか!!。だが、ケンは言葉にはしなかった。

                      *

「気がついた?、」
 目を開けて真っ先に飛び込んできたのは、ジュンの顔だった。
「ケンは?、ケンの奴は無事なのか!。」
「きゃー、ジョー!!。」
 無謀にもベッドから起こした身体を、悲鳴をあげたジュンに抱きかかえられるよう
にして支えられ、ジョーは痛みに全身を強張らせた。
「あなた、自分の今の状況解ってないの!!。まったく無茶するんだから、も
う!、」
 叱るようしてにベッドに寝かし付けて、ジュンは外れかけたドロップスの針を元に
もどした。
「ケンは....?、」
 荒い息をしながらジョーはジュンを見つめた。
 一刻も早く悪夢から醒めたくて尋ねる。が、声は途中で掠れて、怯えたように小
さくなった。
 あの海にケンはいなかった、ケンを見失ったままの風景が、もしも現実だった
ら...、 恐ろしくなって、ジョーは言葉を閉ざした。
「大丈夫よ、隣の病室で眠ってるわ、やっとね。」
「そう....か、」
 軽い目眩が襲う、その報告に身体中の力が一気に消失した。
 生きていた・・・・。唇がそう呟いたのを感じながら大きく息をつく。込み上げるも
のを隠すようにしてジョーは枕に頬を埋めた。
「うふふ、12回目ね。」
「何が、」
「あなたがケンを呼んだの、」
 ジュンは赤い唇を綻ろばせて笑う。ずっと譫言で呼んでいたらしい。
「怪我は?、」
「左肩を撃たれて運び込まれたわ、出血が酷かったけれど命に別状はなさそう
ね、あの調子だもの。」
 言って小さく肩を竦めて見せるジュンは、笑ってはいけないと我慢しているのか、
クスクスと漏れる吐息を懸命に押し殺した。
「ついさっきまでここにいたのよ。貧血で青い顔をしながらね。で、ドクターに見つ
かって『何度言ったら解るんだ!!、』って大声で叱られちゃって、しぶしぶベッド
に戻どったの。子供みたいにね、腕を引っ張られて....、」
 ジュンの報告に思わずククッと喉が鳴る。
「相変わらず心配性だな、俺がこのくらいでくたばったりするかよ。」
 目を閉じてジョーは笑った。
 薄い半透明に透けるカーテンから光が漏れた。
「ドクターを呼ぶわね、あなたも大人しくしていてね。」
 ベッドサイドから立ち上がったジュンの横顔に、朝の光が淡いチークを差す。
 昨日の雨が嘘のようにきれいに上がっていた。

                      *

「やれやれ、ジュンとドクターの目を盗んで来るのは大変だ。」
 後ろ手にノブを握ったままドアに凭れてケンが言った。
「ケン!、無事だったんだな、」
 身を起こしかけたジョーは、慌てて駆け寄ったケンが制するのも構わずに、その
身体に腕を回した。
「ああ、おまえのおかげさ。」
 少し驚きながらもケンは抱き寄せられた胸で、ジョーの鼓動を確かめると改めて
大きく安堵の息をついた。
「おまえ、肩...、」
 ジョーが白い包帯を巻きつけたケンの肩に触れた。
「たいしたことはない。おまえが撃ったライダーが、助けてくれと騒いでくれたんで、
路地に野次馬が溢れたんだ。あの辺りには駐車違反を取り締まるポリスも沢山い
たからな、狙撃者はさっさと引き上げてくれたよ。」
「そうか、」
 ゆっくりと腕から離れたケンを、ジョーはやる瀬ない眼差しで追った。
「どうした?、」
「いや....、」
 それが自分でも可笑しくて、つい笑ってしまう。
 ケンは訳が解らず小首を傾げる。額にかかった前髪を指で掬ってチラッと此方を
見る。 その仕種は幼い日に出会った頃のままだ。大事なものを失わずに済んだ
ことを、神に感謝する。
 が、喜んでばかりはいられない。ケンを狙ったのはいったい何者なのだろう?。
「さぁ、残念ながら正体は解らない。」
「それじゃ....、」
 沈痛な面持ちで溜め息をついたジョーに、然程気にする様子もなく、ケンは軽く
相槌をうちながら、ベッドサイドにあった椅子に腰を下ろした。
「当分はカゴの鳥だ、しかし手掛かりはある。俺たちの身体から出た弾はBB−
11だ。最近、あれを使った無差別殺人が多発しているのを知ってるか?。」
「無差別殺人?、」
「ああ、現在7課が調査中だそうだ。」
 BB−11は射撃訓練用、もしくはシューティングゲーム用の偽造弾で殺傷力は
ないのだが恐ろしく命中率が高い。それを利用して実弾に改造する手合いがいる
のは、ここ最近の事件が立証している。
「プロじゃないってことか....、」
「そうだと願いたいね、ただのゲームマニアならもう俺を狙いはしないだろう、しつ
こく付け回されるのはご免だ。」
「ああ、」
 どおりで追尾してくる意識にムラがあった訳だ。プロなら殺気を悟られたりはしな
い、もっともプロにもマニアックな輩はいる。殺しをゲーム感覚で楽しむタイプで、
ターゲットにわざと接触し追い詰め弄んでから殺す。そしてそういう奴に限って腕
がいい。ジョーが警戒したのは経験上からだった。
「しかし、用心するにこしたことはないな。」
「解ってるさ....、」
 ふぅ、と短い吐息をつくと、そのままケンは肩を落としてベッドの端に頭を乗せた。
「おい、辛いんならベッドに行けよ。」
「大丈夫だ....、なぁ、ジョー....、」
「ああ?、」
 シーツに伏せた顔を覗き見ると、微睡むように瞳が閉じられる。
「いや、いい....、」
「何だ、おかしな奴だな、言いたいことがあるならはっきり言えよ。だから、おまえ
は女にも、甘く見られるんだぞ。」
「ククッ....、はっきり言って怒らせるのが関の山だ。俺は。」
 あっ・・・、妙に納得してジョーは口を噤んだ。
 その傍らでケンの唇は微笑を残したまま、声にはならぬ小さな呟きを漏らした。
 なぁ、ジョー、俺はドクターのように何人もの人間の死を見送りたくはない。それ
でもこの仕事を続ける限り仲間の死に目にも会うだろう、この先もきっと....、し
かし、おまえが死ぬのだけは見たくない。
「ケン?、」
 聞き取れずにジョーは小首を傾げる。ケンが小さく笑った。
「ああ、直ぐにジュンがドクターを連れて帰って来るな、ベッドに戻るよ。」
「待てよ、」
 立ち上がりかけたケンの首に無理も構わず腕を回して、ジョーは接吻けた。
 ケンの唇は少しひんやりとして、熱をもったジョーのそれには心地よかった。
「強引だな、いつも。」
 心なしか身体を固くしていたが、ケンは素直にジョーを受け入れた。
「怒らねぇんだな、」
 以外だったのか、反対に気恥しくなってジョーは苦笑した。そして、
「俺も、少しは成長したつもりだ。」
 澄まして言ったケンには思わず吹き出した。
「何だよ、失礼な奴だな。おい、ジョー!。」
 声を出して笑ったジョーは痛みに涙を溜めている。怒ったケンの顔が紅潮して、
尚更ジョーは可笑しくてたまらない。
「帰る!。」
 拗ねた子供のように言い捨ててケンはベッドサイドに背を向けた。足早になるの
はドアを開けた途端、ドクターと鉢合わせ、などという事態を避けるためもあった。
 だが、ノブに手を掛けたその背中に呼びかけられて足を止めた。
「ケン....、俺は、後悔はしたくねぇ、今も、そしてこれから先もな。」
 振り返らずとも、ジョーがどんな表情(かお)をしているのかケンには想像出来
た。そして、その言葉にどんな思いが込められているのかも。
 ジョー.....、
 呟いて、ケンはゆっくりとドアを開けると病室を出た。

                      *

エピローグ。

 1週間後・・・・・、
 まだ完治には程遠かったが、デスクワークだけだからと、ケンはドクター・ハワー
ドに無理矢理退院を許諾させ、情報室に戻って来た。
「無茶をしちゃだめだよ、兄貴。博士が心配してたぜ。」
 見舞い代わりに事件の依頼書を両手に抱えてやって来たジンペイが言う。
「そう思うんだったら、それを持って帰ってくれよ。」
「そうはいかないよ。はい、お仕事。」
 狭いデスクの上にファイルの山を乗せると、それだけで既に仕事をする場所がな
い。
「どうしてディスクにしないんだ。」
「文明の利器も扱うのは人間なんだ、上層部には未だシーラカンスのような人種
が多いのさ、公式文書はペーパーでないといけないって規定、兄貴、知って
る?。」
「あーあ、もう。」
 頭を抱えて嘆息するケンに、ジンペイが無情にも楽しそうに笑った。
「さぼっちゃダメだぜ、」
「煩い!、」
 しかし、ウィンクを残して室(へや)を出て行くジンペイは鼻唄交じりの前方不注意
で、入って来た時に開けたままにしてあったドアの角に思いきり顔をぶつけた。
「痛ってぇ〜!、」
 様ぁ見ろ・・・・、書類の影に隠れてケンが北叟笑む。
「畜生!、」と足で蹴られたドアがバタンッと派手な音を立てて閉まった。
 その拍子に書類の山がバサバサとケンの頭の上に崩れた。デスクの下に落ち
たファイルはクリップが外れて、中のペーパーが床にばら蒔かれてしまった。
「何なんだよ、俺に何か恨みでもあるのか。」
 ケンは崩れたファイルの上に頭を乗せて、デスクに果てた。その耳元で電話が
鳴った。『室長、都市警察のマルコム警部がおみえです。そちらにお通し致します
が宜しいでしょうか?』
 インフォメーションからだった。
 ここ最近、都市警察と支局情報部との間で熾烈な戦いが生じている。頻繁に交
わされる情報交換の場でも、常にISOの下請け的存在になっている不公平な取
引に、都市警察は意義を申し立てる。捜査の管轄に対しても再三煩いほど指摘を
受けていた。マルコム警部が直々にこうして足を運んで来るのも、そういう理由
だった。
「オーケー、5分待たせてくれ。」
 こんなことならまだもう1日ぐらい辛抱して、病院にいればよかったと思うケンだっ
た。 だが、無理を押して出て来たのは自分なので文句は言えない。ケンは散ら
かったデスク周りを片付けにかかった。ファイルを拾い書類をページ順に並べてク
リップする。とりあえずまた積み上げると、手元に1通の封書があったのに気づく。
 何だ?、ダイレクトメールかとも思ったが、その割には色気のない事務用の封筒
だった。ペーパーナイフを探して2つ折りにされた中身を取り出したケンは、再度、
今日の不幸を呪った。
 ジョーの車の駐車違反のペナルティの請求書だった。
「ジンペイの奴、取りに行けと言っておいたのに.....。」
 しかし、ケンは人任せにした責任を棚に上てジンペイを責めるのは気が引けた、
かと言って怪我をした自分が取りに行ける状態ではなかったのだが.....。
 都市警察は特に交通規則に関しては厳しく、手に負えない道路上の交通障害を
緩和するためにも、違反項目に対して多額のペナルティを課している。
 しょうがない、今日はマルコム警部の要求を全面的に呑んでやる。
“作戦は考え得る限りの最善の手段で臨むこと・・・・”ケンは肩を庇いながら上着
に袖を通すと封筒を胸の内ポケットにしまった。 
 マルコム警部の要求には大体見当がついた、それを素直に承諾した上で、交通
課の方に口を利いてもらうことにした。 
「ようこそ、マルコム警部。」
 ケンは上着を正して髪を整え、鏡の前で警部を迎えるための笑顔を作ってみた。
 完璧だった・・・・・。




                      END



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